ネコリの里帰り 8
ラブなホテルに泊まった翌日のこと、2人は起きてからのそのそと準備を始める。
昨晩は何かあったのか、それとも無かったのか。
それは分からないが、2人は起きてから顔を見合わせて少し照れたような表情をしてからお風呂に入り始めた。
「最初はなんて所を紹介するんだって思ったけど……お風呂は広いし、ベッドも広いしで案外悪くなかったね」
「ここって普通のホテルとは違う?」
「そりゃ……普通のホテルならこんな風にバスルームの中からベッドが直接見えたりしないよ」
「……確かに不自然な気はする」
「最近は女の子同士で泊まるのも珍しくないみたいだから良いんだけどね。
また今度教えてあげるから」
「うん……いつもありがとう」
「ああああああ、もう、本当に可愛いんだから!」
そうやって2人で長々と身体を洗いあったり、湯船で密着しながら広いお風呂を堪能し、出てきた頃には昼前となっていた。
2人がホテルを出ると見覚えのある車が駐車場に停まっているのを発見する。
「おやおや、昨夜はお楽しみみたいでしたね」
仲良く手を繋いで出てくる2人を見た巫女は和かな笑顔を浮かべていた。
「流石にこの状況で言い逃れしようとは思いませんけど……誘導したのは巫女先輩ですよ?」
「あらあら、開き直られては揶揄い甲斐もありませんね」
「それでどうしたんですか?
ユウ先輩とマオ先輩はまだですよね」
「少し事情が変わりましてね。
あの2人には別に動いてもらうことになりました。
とりあえず乗ってください」
こうして2人を車に乗せた巫女は熊本のスキー場のホテルへと向かって走り始めた。
その道中で新幹線でいざこざとなった老人の話題は避けつつ、はぐれ退魔士の現状と彼らの計画の事を打ち明けた。
「そんな……それじゃ、姉様達が!!」
「巫女さん、急がなきゃ!!」
「落ち着いてください。
彼らはまだ集合すら出来ていない上に所詮は烏合の衆です。
こちらは既に切り札を出していますからね」
「切り札……先輩たちが合流してないのって……」
「ええ、別行動で網を張ってもらっています。
彼女たちに任せておけば先ず間違いありません。
それとは別に個人的に動かせる人脈に情報収集も頼んでいます。
ネコリさんもどうか私を信じてくれませんか?」
「……分かった。
前の時も貴方とあの2人に助けられたから今の私がいる。
貴方たちを信じるから姉様達を必ず守って欲しい」
「その依頼、私が所属する協会の名に掛けて必ず遂行しましょう。
……なんなら、くじよじの名前の方でもいいですよ」
巫女の軽い冗談で車内の重い空気が少し軽くなり、後部座席の2人はくすりと笑う。
「私にはそっちの名前の方が身近だからな。
ぜひそちらの名前で信用させてもらうよ」




