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お年玉と女神の祝福

新年明けて1月の3日。


この日、2人は里中に呼ばれて事務所に来ていた。


「明けましておめでとーございます!!」


「新年おめでとうなのじゃ。

今年もどうかよろしく頼むのう」


2人は事務所に入るなり新年の挨拶をする。


「はい、2人とも明けましておめでとう。

今年もよろしくね」


「今年もよろしくお願いしますね」


事務所では里中と唯が出迎えてくれる。


新年の挨拶を済ませた2人は一先ず謝罪を改めて行うことにした。


「この間は新年最初の配信から放送事故になっちゃってごめんなさい」


「うむ、そのせいで計画が前倒しになって本当に済まなかったのじゃ」


2人は頭を下げて謝るが里中は気にしていないと言いたげに手をヒラヒラと振った。


「別に貴女達が悪いわけじゃないわよ。

もちろんルーナちゃんもね。

私達が神様のことを知らなさすぎただけなんだもの」


「文化の違いはあれど社会経験のあるお二人と違って、そのような人間の常識が通じる相手ではありませんでしたからね」


唯も2人は悪くないとフォローに回る。


「そう言ってくれると気が楽になったよ」


「うむ。

それに驚くべき速さでモデルを作ってくれておったリーブ先生にも感謝じゃな」


「本当にそれが一番助かったわ。

リーブ先生には頭が上がらないわね」


「その分は新衣装や新人のモデルをまた頼んでみたりして返しましょう。

それより社長、2人に例のものを」


「ああ、そうだったわね」


里中はそう言って机の中をごそごそ漁ると二つの小さな紙袋を2人其々に渡した。


「はい、これお年玉よ。

大きな金額ではないけど好きなことに使ってちょうだいな」


「お年玉?」


「とは何じゃ?」


2人は首を傾げながら中を見ると、その中に入っている見覚えのある紙に「わっ!」と同時に声をあげた。


「うふふ、新年には可愛がっている親戚の子供にお小遣いをあげる風習があるのよ。

私にとってはこの事務所に所属する全員が可愛い子供みたいなものだから皆に渡しているのよ」


「そうなんだ!」


「それならありがたく貰っておくかのう」


2人がポチ袋を懐に入れた時に置くの扉がガチャっと開いた。


そして、そこから現れた人物は開口一番に


「私には無いんですか?」


と里中に尋ねるのであった。


その人物は先程話題に上がった女神ルーナである。


扉にはしっかりと注連飾りが飾ってあった。


「ルーナちゃんは計画の前倒しのせいで予定より予算がかかってしまったから残念だけど・・・」


「そんな・・・殺生ですわ」


と、里中が言うとルーナは見る見る内に落ち込んでしまった。


その様子を見て里中は吹き出しながらポチ袋をルーナに渡した。


「冗談よ、ちゃんと用意してるわ。

今年は一緒に頑張っていきましょうね」


ルーナは瞳を輝かせてポチ袋を受け取ると


「ありがとうございます。

里中様に祝福があらんことを」


と両手を前で組んでた瞳を閉じて祈りを捧げた。


すると里中の頭上に光が舞い降りて彼の身体の中に吸い込まれていった。


その光景にユウとマオは絶句している。


「あら、今のは何かしら?」


「えーっと、この人これでも歴とした女神様なので神様の祝福が入ったんじゃないかな?

・・・良かったね、社長。

今年の運勢はきっと大吉だよ」


「そ、そうじゃな。

悪いものでは無いのでありがたく受け取っておくと良いぞ」


2人は時の権力者達が様々なものを捧げて欲した女神様の加護がお年玉一つで与えられてしまったことに頰を引攣らせる。


しかし、当の里中はまるで気にしない様子で


「あら、ありがとう。

でも来年からは要らないわよ。

これは私から可愛い娘達への無償の愛なんですから」


と、ルーナの頭を撫でながら答えた。


「やっぱ社長は只者じゃ無いね」


「そうじゃな。

今更ながらこの世界で最初にあったのが里中殿で良かったわ」


と2人しみじみ思うのであった。



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