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ネコリの里帰り 3

新幹線は快調に進み、道中で見えた富士山にテンションが上がりつつ、2人は楽しげに会話していた。


そんな中で事件が起きたのは名古屋駅に停車した時である。


車内販売のお弁当を買って食べようとした時である。


「ここはワシが先に座っておったんじゃ!」


突然、車内に怒鳴り声が響いた、


そちらの方を見ると、席に座っている老人が困り顔の若い男性に向かって怒声を浴びせていた。


「それは分かりますが、そこは私が指定して取った席なんです」


「そんな事知らんわ!

ワシは自由に選んでいい席じゃからここに決めたんじゃ!!」


「いや、ここは指定席の車両だから、お爺さんは自由席の方に……」


「知らんわ!

年寄りは敬わんか!!」


どうやら指定席の車両に自由席のチケットを持った老人が迷い込み勝手に席を占領しているようであった。


「うわぁ…‥老害ってやつだよ。

ああはなりたくないね」


セシムが恐る恐るそちらの方を見てはブルリと身体を震わせた。


その様子を見たネコリはスッと立ち上がる。


「あれ?ネコリどうし……」


セシムの言葉を聞いている様子もなく、スタスタと揉め事の方へと向かうネコリ。


突然近づいて来た女性に若者は困惑し、老人は怒声をぶつけようとする……が


「な、なんじゃ、おま……」


口をパクパクとさせるが言葉が出てこない老人。


心なしか少し震えているようにも見える。


「頭に血が上っているから冷静な判断が出来ないのだろう。

……まだ冷却が必要か?」


「う、く、う……もういいわい!」


老人はスッと立ち上がるとスタスタと自由席車両の方へと歩いて行った。


「あ、あの、ありがとうございました」


「勘違いしないで。

貴方のためにやったんじゃないから」


お礼を言って頭を下げる男性にピシャリと言い放って席に戻るネコリ。


顔を上げた男性の顔はやや青ざめていた。


咳に戻って来たネコリに対してセシムはやや不満げであった。


「ネコリ…‥少し寒いよ」


「あ、ごめん。

頭に血が上ったのは私の方もかな」


その瞬間に少し気温が下がっていた車内の温度が元に戻る。


「そんなにあのお爺ちゃんがムカついた?」


「うん……セシムが怖がってたから頭にきちゃって」


「そっか。

私のためだったら何にも言えないじゃん……でも、ありがとう」


こうして途中でトラブルがありながらも、2人は無事に福岡へと辿り着いて下車するのであった。

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