ネコリの里帰り 2
「セシム、私の里って遠いんだよね?
どうやって行くの」
「私達は新幹線に乗って行くんだよ。
……あれ?セシムはここに来る時にどうやって来たの?」
「どうって……向こうで暮らしてたはずなのに、気が付いたらあの二人の所にいたんだけど」
「気付いたらって……まぁ、先輩達のことだから何でもアリだもんね」
2人は新幹線に乗り換える為に先ずは東京駅までやって来ていた。
ここで予め予約していたチケットを発行して新幹線へと乗り込んだのであった。
「東京付近の地図はもう分かるよね」
「流石に半年以上いるからね」
「それじゃ説明するけど、東京がここで熊本がここ。
こうして見たら距離が分かるんじゃないかな?」
「……え?
こんなに遠いの!?
これってどのくらいこの新幹線って言うのに乗らなくちゃいけないの?」
普段が東京周りしか移動せず、ここまで地元の熊本と東京がどれだけ離れているかも考えたことがなかったネコリの表情には疑問符がたくさん浮かんでいるようであった。
「うーんと、まぁ5時間くらいかな?
とは言っても今日は熊本手前の福岡で降りる予定なんだけど」
「結構長……くもないなのかな?」
「そりゃ普段乗ってる電車に比べれば格段に早いからね」
「あの2人はどうしたの?」
「先輩たちは急いで飛行機のチケット押さえたんだけど、どうしても明日の出発になっちゃうんだって」
「飛行機ってあの空飛ぶ乗り物だっけ?」
「そうそう、あっちの方が早くて安いんだけどね」
「それじゃどうして新幹線に……って、あっ!」
セシムがわざわざ高くて時間もかかる新幹線を選んだ理由……半年ほどの付き合いではあるものの、いつも同じ時間を過ごして来たネコリには一つの仮説が浮かんでしまった。
「もしかして……私のため?」
「……そういうの、気付かれて改めて問われると照れちゃうからやめようよ」
そう言って通路側に座っていたセシムはプイッとそっぽを向いてしまった。
ネコリは外界の刺激が全くない閉ざされた雪女の里に閉じ込められていた。
その為に新しい刺激というものに過剰なくらいに敏感であり、臆病だったのだ。
そんな彼女を飛行機に乗せて移動するなど、どれほどのストレスになるだろうか?
そう考えたセシムは敢えて新幹線での移動に決めたのであった。
そして、座席でもさりげなく窓際をネコリに譲り、通路側に自分が座る。
自身のパートナーに対しては驚くほどに気が利く良い女なのである。
そっぽを向いているセシムだが、手だけは手すりの上に置かれていた。
セシムの気持ちが分かり嬉しくなったネコリはその手を持ってギュッと握る。
「ん……」
セシムは顔は背けたままだったが、それに応えるように同じくらいの力でギュッと握り返すのであった。




