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ネコリの里帰り 1

「先輩達に頼があるんですけど……」


ある日のこと、2人の元を訪れたのは同じマンションに住むセシムとネコリの2人であった。


「急にどうしたの?」


「まぁ、立ち話も何じゃから上がるが良い」


「はーい、それじゃお邪魔しまーす」


「邪魔をする」


こうして居間に案内された2人。


ユウはスッと立ち上がって飲み物とお茶請けの準備を始めた。


「それで頼み事とは何なのじゃ?」


「もうそろそろ私達は向こうのほうに行こうと思うんです」


「向こうと言うと……熊本ということじゃな?」


「そうです、そうです」


ここまでじっと黙っているネコリはユウとマオが熊本での事件を解決して連れてきた雪女である。


それを後輩のセシムが引き取り、あっという間に仲良くなってしまったのであった。


ネコリがいた雪女の里では、冬の間にその特性を使って氷の宿泊施設を作る予定であった。


彼女はそこの管理人として戻る予定だったのだが、名実共にパートナーとなったセシムは同行する事が決まっていたのであった。


そして、その時期にはまだ少し早いが、ネコリの里帰りとセシムの挨拶も含めてもうそろそろ向こうに移動しようとなった。


そこで自分たちが留守の間の部屋の鍵を2人に預かって欲しい……それがセシム達の用件なのであった。


「預かっておくのは良いけど掃除とかはどうするの?

春ぐらいまでは戻って来ないんでしょ?」


「それは帰る前に清掃業者にお願いしようかと。

その時はお手数ですが鍵開けと確認をお願いできませんか?」


「まぁ、そのくらいは構わぬが……」


マオがそう言って未だに喋らないネコリの方を見た。


「ああ、この子アレなんですよ。

こっちの生活に慣れすぎて地元に帰るのに不安になってるんです」


セシムの言葉に明らかに動揺しながらも口を開かないネコリ。


だが、観念したかのようにポツリポツリと語り始めた。


「その……久しぶりに姉様達と会うのは嬉しいんだ。

でも、その一方で本当に良いのかなって気持ちもあるんだよ。

セシムの事とことか……」


「もう、それはちゃんと連絡して喜んでもらえたでしょ。

ネコリが産まれた故郷がどんな所か楽しみなんだからしっかり案内してよね」


「うう……すまない」


セシムの言葉でも気が上向かないのか、落ち込んだ声で答えるネコリ。


その様子を見ていたユウとマオは大きな溜息をついた。


「はぁ〜、まぁ仕方ないか」


「向こうに挨拶したい者もおるからのう。

仕方ないであろう」


「えっ、急に頷きあってどうしたんですか?」


「直ぐに帰るけど、行くだけは一緒に行ってあげるよ」


「その様子のネコリは心配じゃからのう」


こうしてセシムとネコリに加えて、ユウとマオの2人も熊本までついていく事になったのであった。

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