月の裏側の話 2
侵入者の2人を遥かに凌ぐ大きさの巨大兵器達が起動する。
その全てが2人に向かっていった訳だが、当の2人は全く気にした様子もない。
「へっへっへっ、驚いて反応もできないみたいっスね」
「そ、そうか?
妙に落ち着いているように見えるが」
下っ端うさぎは勝ち誇っているが、上司うさぎから見ると侵入者は全く動揺せず、それを脅威と捉えていないように思えた。
「どうじゃ?
1人で問題ないかの」
「さっきのエネルギー球がぶつかったくらいで壊れる代物でしょ。
大丈夫大丈夫」
背の高い方の侵入者がそう言って格納庫の方へと駆け出す。
その姿は先程のエネルギー球よりも早く、2人のうさぎの目には視認することが出来ない。
侵入者が通った道筋は、巨大兵器の破壊される様子で確認する事が出来る程度であった。
「な、な、な……そんな馬鹿なっス!?」
「……何ということだ」
目の前の信じがたい光景に呆然とする2人のうさぎ。
「のう、お主達」
そんな2人に背の低い方の侵入者が声をかける。
『は、はい!!」
命の危機を察したのか、背筋を伸ばしてその声に応える。
「妾達はお主達に危害を与えるために来たわけではない。
月の女神に頼まれてきただけじゃよ」
「月の女神様にですか?」
「そうじゃ……あまり悪さをするでないとな。
秘蔵のおもちゃを組み立てて楽しむ分には文句は言わぬそうじゃ。
じゃが、それで地上の侵略を思い描くのであれば別じゃと。お主達がおもちゃと共に地球に降りたとて、決して勝てないと言う事を教えてほしいと頼まれたのじゃ」
「絶対に……勝てない……」
うさぎ達が向けた視線の先では、全ての巨大兵器を破壊し尽くしたにも関わらず、不満そうな顔をしている侵入者の顔が見えた。
「ちょっと、君たち!」
『は、はい!!』
「このロボット達の造形どうにかならなかったの?
うさぎモチーフで長耳が付いてるのは分かるけど全般的にデザインがダサすぎ。
これで少しはロボットの勉強して」
そう言って侵入者は謎の箱を二つとモニターを置いていった。
「こ、これは一体?」
「ロボットのデザインが学べるから絶対やるように!」
「用事も済んだことじゃし妾達は帰るぞ」
「また見にくるかるね」
その言葉を残して侵入者の姿は綺麗さっぱりと消えてしまう。
「とりあえず……開けてみるっスかね?」
「ああ、そうだな」
こうして2人のうさぎは侵入者が置いていった物を開封し始めたのであった。
〜余談 1〜
「って事があって、また地球の平和を守っちゃったかなってね」
・さすユウ
・遂に月まで支配下に
「あ、これがその時壊してきたロボットのデッサンなんだけど……ダサいでしょ?」
・これは……ないよりの無しかな
・ロボ魂が感じられませんなぁ
「そうそう。
月の女神様も作るのは良いけど侵略とダサいのが駄目って言ってたからね。
だからロボットのデザインが勉強できる教材置いてきたよ」
・なんだろ?
・何置いてきたの?
「プレ○テ5とアー○ードコア6」
・……そりゃ間違いないな
・これは完璧な教材ですわ
〜余談 2〜
「ああああ、勝てねっスよ!!」
「その敵、デザインは最高に格好良いんだかな」
「参考にはするっス。
武器も何とか再現するっス。
でもゲームで勝てねえんスよ!!」
「倒したと思ったら再起動するしな。
まぁ、気長に行くとするか。
どうせ奴等がまた来るまでは時間があるだろう……少なくとも一年間は」
月にはネットが届かないため、バージョンアップできずに敵が弱体化される事はありません。
下っ端が戦っているのは一番の難所ですね。




