十五夜と月見バーガー 1
「配達を頼もう!」
リビングでスマホをいじっていたユウが突然立ち上がって宣言をする。
「うお、いきなりどうしたと言うのじゃ!?」
「何か欲しい物でもあったんですか?」
近くにいたマオと、同じく最早お馴染みというぐらいには遊びに来ている響子が尋ねる。
「色んなところでお月見やってるから僕達も食べておこうよ。
ほら、どれも美味しそうだよ」
そう言ってユウが見せたスマホの画面には、様々な月見のバーガーが写っていた。
十五夜が近づくシーズンになると、様々なファストフード店では卵を挟んだ月見バーガーが販売される。
そのページを見ているうちに我慢できなくなったようであった。
「そう言えばあまり意識した事なかったんですけど、月見バーガーが出るのは十五夜だからですよね?
そもそも十五夜って何なんですか?」
「それはアレだよ……マオ、答えてあげてよ」
「やれやれ、分からぬのであればユウを挟む必要は無かったであろうに。
十五夜とは一年で最も月が美しく見えると言う中秋の名月を楽しむ行事の事じゃな。
もっとも月が綺麗に見える日という事で、本来はしっかりと日にちが決められておる」
「それは例えば15夜だから9月の15日とかみたいにですか?」
「いや、その日は旧暦から導き出されるので毎年違う日じゃな。
今年の十五夜は……」
そう言ってマオがスマホを調べてハッと驚いた顔をした。
「何という偶然じゃ。
正に今日が2023年の十五夜では無いか。
まさか、ユウはそれを知って……」
「いや、全然。
やたらタイムラインに月見バーガーの画像が流れてくるから食べたくなっただけ」
ユウの言葉にがっくしと肩を落とすマオ。
「まぁまぁ、その画像を上げていた人達は今日が十五夜だと知っていたのでしょう。
所で頼むとしたら何処のお店にしますか?
やはり一番有名なあのお店でしょうか?」
響子はそう言いながら、頭の中で関東と関西で呼び名が違うあのお店の事を想像する。
しかし、ユウは首を振って否定すると、狙いをつけていたであろうお店の画像を出した。
「ほら、ここのお店の月見見てよ!
めっちゃ美味しそうじゃない?」
「ふむ……ここは美味しいが待ち時間が長い事で有名な店じゃな。
しかし配達ならば関係ないであろうし、もう少ししてから頼めば月見にちょうど良いかもしれんのう」
「そうですね……って、私もご一緒して良かったんですかね?」
「それはもちろん!
それじゃ他のメニューも見て何頼むか決めよう」
こうして3人はメニュー見ながら何を頼むのかで意見を出し合っていくのであった。




