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空港に取り残された男の話 2

「え?この話って実際にあったの?」


「実際にあった……どころでは無いのう。

この映画の中ではどのくらいの月日が経過したのか分からぬが、モデルになった人物は空港に15年間取り残された筈じゃよ。

……うむ、やはり間違いないのう」


マオがパソコンで検索ワードを打ち込むと1人の人物の情報が出てきた。


「この人がそうなんだ……っていうか、空港で15年も過ごすとかあり得ないでしょ。

下手をすれば刑務所とかの方が待遇いいんじゃないの?」


「映画と同じようにアルバイトをして貯めたお金で食事をしていたらしいからのう。

トイレで身嗜みを整え、衣類の洗濯は職員がやってくれていたらしい。

それがいつ続くか分からぬのじゃから、確かに刑期を終えれば自由が約束されておる刑務所の方がマシかもしれぬのう」


「少なくとも食事やら仕事、運動に読書は許されてる訳だしね。

こんな生活を15年もやってたら空港の顔になってそうではあるけど」


「まぁ、それを言うのであれば妾達など次元の壁の中でどれだけの時を過ごしたか全く分からぬのじゃがな」


「そうかもしれないけど、あそこはマオと一緒にいたから特に辛いって感じた事無いんだけどね」


ユウとマオがこの世界に来る前、次元の壁の中を彷徨っていた頃はどれほどの時間をそこで過ごしたのか知りようが無かった。


あらゆる感覚と法則がねじ曲がった世界を彷徨っていたので、ある意味ではこの人物より酷い状況だったかもしれない。


それでも一人で無かった彼女達にとっては今や懐かしい良き思い出にはなっているようである。


「妾もじゃよ。

それにしてもこの人物の説明を見る限り、映画と違って空港に取り残されたのは半ば自業自得らしいのう。

映画と違ってベルギーからイギリスに移動しておるのじゃが、ベルギーを出国した時点で難民申請書と入国許可証を自分で手放してしまったようじゃな」


「あれ?それってどちらも入国には大事なものじゃ?」


「その通りじゃな。

イギリスでは入国を拒否され、ベルギーに戻ると身分証明が出来ずに入国を拒否。

それを何度か繰り返しているうちにフランスならと大丈夫かもと職員が飛行機を手配してフランスへ向かったとあるのう」


「映画観た後だから言えるけど、それって厄介払いしたかっただけじゃ……」


映画でも空港に留まる主人公を追い出そうと、空港の所長が画策しているシーンが何度もあった。


そのせいでユウにはそう思えてしまったのかもしれない。


「そこは当の本人でなければ分からぬ話じゃよ。

そして、ここからが彼の長い空港生活の始まりとなるのじゃな」

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