空港に取り残された男の話 1
「ねぇ、マオ。
ちょっと気になる映画見つけたから今から観ない?」
「中々急な話じゃな。
どれ、準備をして来るから…….」
「あ、違う違う。
映画館に行くんじゃなくて、家で昔の映画観ようって話」
2人で昼ご飯を食べ終わった時にユウがマオに話を持ちかける。
因みに彼女達の本日の献立は、パック売りされている袋の醤油ラーメンにたっぷりの野菜炒めを乗せた、なんちゃってタンメンである。
お手軽に作れて野菜が摂取できる上にコスパも良いという事で偶にこの料理を作る事があった。
それはさておくとして、ユウは気になった映画をマオと観たかったらしい。
「それでどんな内容の映画なのじゃ?」
「なんか空港に取り残された主人公が何処にも行き場が無くて、そのまま空港の中で暮らし始めるって話なんだって」
「ほほう……しかし、この話は……」
「どうかしたの?
あ、ひょっとしてもう観たことあるとか」
「いや、観るのは初めてじゃよ。
気にせんで良いから早速観てみるとしようかのう」
マオの言葉により映画のスタートボタンを押して再生を始める。
映画館では音のせいで食べれないポテトチップスに炭酸の飲み物も用意して鑑賞の準備は万端である。
画面の中ではアメリカに向かった主人公の祖国が、クーデターによって無くなった事によりパスポートが無効化されてしまった事。
祖国にも帰れず、空港から出ることも出来ずにそのままここに居続けなければいけないという状況から始まった。
そこからお金の無かった彼が、空港内のカートを指定の位置に戻すことで金銭を得られることを知って小銭を稼いで食費を稼いだり、本を購入して英語の勉強をしたりして過ごしていく。
更には空港内の揉め事を解決していく事で少しずつ空港内のスタッフ達からの支持を集め、職も手に入れて空港内の仲間へと迎え入れられていくというハートフルな物語が展開されていった。
最後の結末まで観たユウとマオ。
2人は満足そうに顔を見合わせた。
「噂になってたから気になって観てみたんだけど本当に良い話だったね」
「うむ、妾も噂には聞いておったのじゃが、とても良い作品であったのう」
「まぁ、空港から出ることも飛行機に乗る事も出来ずに滞在するなんて荒唐無稽なフィクションって感じだけどね。
現実ではあり得ないからこそ、物語としては面白いってことなのかな」
ユウがそう言うとマオはやっぱりと言わんばかりの顔で首を振った。
「え、どうしたの?」
「やはり知らんかったのじゃな。
この話自体はフィクションじゃが、実際にモデルのある現実に起こった話を元にしておるのじゃよ」




