響子と市松人形
「あ……」
ふと検索のワードに市松人形と入れてしまい、出て来たのはとある神社に並べられた市松人形達でした。
多分ですが供養の為に神社に奉納されたのでしょう。
以前の私であればこんなものを見たら夢に出るくらいに怖がったのかもしれませんが……
「こうして見ると愛嬌があって可愛いですね」
一緒に遊んだ巫女さんの姿が脳裏に現れて何だか微笑ましく感じました。
「……よく考えたら市松人形って何なんでしょう?
髪が伸びるとか夜中に動きだすという怪談話が先行してしまって、本来の用途を知りませんね」
市松人形と聞くと怖いイメージが付いたのは、怪談話の方から先に耳に入ったからです。
そのせいで呪いの人形というイメージが付いてしまい、こうしてじっくりと眺める事なく怖いと思ってしまった訳です。
そしてこの人形は怖いもの、呪われたものという所で興味が切れてしまい、何も調べることがなかったのですが、こうして冷静に迎えられるようになると疑問が湧いてきました。
「今の時代は調べればすぐに出てくるのが良いですね……って、こんなに高いんですか!?」
市松人形と検索をかけて調べると、先ずはネット販売されている市松人形達が出て来たわけですが……どれもウン十万と高く、目玉が飛び出るとはこういう事を言うのでしょうか?
もっと調べると値段が安い量産品のような物も出てきます。
最初に見た物はどうやら工芸品の一点物だったようですね。
「考えてみればドールだって一点物はウン十万としますからね。
そう考えると市松人形とは和製のドールという事なのでしょうか?」
そうして調べて見るとやはり予想通りでした。
市松人形とは裸の人形と着物のセットで売られており、着せ替えて遊ぶ類の遊具だったようです。
また、当時の女の子は裁縫が必須技能であったため、市松人形に着せる服を作ることで裁縫の練習をするという、練習台のような役割も持っていたようです。
「なるほど……ちゃんと意味があったわけですね。
一松という名前は、歌舞伎役者から取った。
一松という名前の子供が多かった。
一松柄の着物を着ていた……いわゆる諸説あるという事でしょうか」
調べると知らない事が出て来て面白いですね。
男の子の人形もあって、こちらは髪の毛が筆で描かれているのだとか。
「ふふ、こうして見るとかわい……あら、これは?」
市松人形の事を調べて見ると面白そうな動画が出て来ました。
それは3Dで作られた市松人形がキレッキレの動きでダンスを踊っているものです。
「案外このくらい激しく動いてくれれば怖くないかもしれませんね」
こうしてこの日は何となく市松人形尽くしで終わった一日となったのでした。




