響子と巫女の東京観光 2
「はい、これで大丈夫!
うん、よく似合っているよ」
そう言ってカミュさんが私に来させてくれたのは水色の浴衣でした。
白い生地に青い朝顔が散りばめられた浴衣。
帯は水色で涼しげな印象を与えてくれます。
髪型もセットしてくれて、後ろ髪をアップにして後ろでまとめた後は、マリーゴールドの花簪を挿してくれました。
「ありがとうございます。
それにしても……こんなもの貰って良いんでしょうか?」
「気にしないで構わないよ。
さて、私は巫女さんの方の様子を見てくるとするよ。
あまり手助けは必要なさそうだったが、それでも一人ではやりづらい部分があるからね」
カミュさんがそう言って、奥の部屋に向かった巫女さんの様子を見に行かれました。
カミュさんの話ではこの浴衣は売り物では無く、処分品で似合う人に譲りたかったそうです。
似合うと言われると恐縮してしまうのですが……鏡に映った自分を見てみると少し自信が出てもきます。
そうしてぼんやりと鏡を見ていると、私の後ろから人影が歩いてくるのが見えた。
「ごめんなさい、お待たせしちゃって。
やっぱり一人ではなかなか上手くいかないですね」
その言葉に振り向くと、私の目の前に女神様が現れたのかと錯覚してしまいました。
黒い生地に黄色い向日葵が散りばめられた浴衣。
向日葵と同じ黄色い帯を付け、頭は私と同じように上げて後ろで纏めているのですが、見たことの無い花の簪を付けています。
「その簪の花は……」
気になって言葉を述べた後でしまったと思いました。
浴衣の感想などもっと他に言うべき事があったでしょうに。
「ああ、これはエリゲロンの花ですよ。
無理を言ってカミュちゃんに作ってもらったんです」
しかし、巫女さんは全く気を悪くした様子も無く答えてくれました。
「本当に無理難題が過ぎるんだけどね。
聞くまでそんな花は知らなかったんだから」
「それでこのクオリティなんだから感心しますよ。
本当にありがとうございました」
「二人の元々着ていた服は預かっておくから存分に楽しんでくるといいよ」
「え、あの、これから何処に?」
「夏の最後に浴衣を着たんですから決まってるじゃ無いですか。
夏祭りですよ。
さぁ、行きましょう。
私は下駄に慣れていますが、響子さんは不慣れな様子ですね……それじゃ、私の手を」
そう言って巫女さんは私の前に右手を差し出してきました。
「え、あの、それでは失礼します」
私がその手を握ると、巫女さんは私に気を遣いながら先導してくれているのが分かる。
「ウチの営業時間は気にしなくて良いから満足するで楽しんできなよ」
ニコニコとそう語るカミュさんに見送られながら私達は店を後にするのでした。




