響子と巫女の猫被り 2
「最近忘れられがちですが、これが私の正装だから良いんです。
……この後は協会の方に顔を出さなくてはいけませんし」
「ほう、何か困り事でもあったかえ?」
「いえいえ、直接のやり取りでないと伝わらないこともありますから。
今のところ、お二人の力を借りるような案件は出ていませんよ。
お二人に面倒を見てもらっているお陰で、彼女達もかなり頼れるようになりましたからね」
何だか専門的な話をされていらっしゃいますね。
お話から察するにユウちゃんとマオちゃんはとても優秀なようです……何のことかは分かりませんが。
「ああ、私達だけの話をしてしまってすいません。
響子さんも良ければこちらに座ってお話ししませんか?」
「うむ、これは気が利かずにすまぬ。
ユウの方は……台所にいるようじゃな」
「先程お裾分けした惣菜を持って行ってるのでしょうね。
それでは失礼します」
私は巫女さんの正面の席に腰掛けました。
改めて同じ目線で見ると、浮世離れした雰囲気で本当に市松人形に心が宿って動き出しているんじゃ無いかという気がしますね。
ただ、市松人形だと怖いとか不気味なんてイメージを持ちますが、巫女さんはそれとは正反対の雰囲気を感じます。
神秘的とか浄らかというか……この世の穢れを一切纏っていない気がしてきます。
「ふふ、そんなに見つめられては照れてしまいますわ」
「え、ああ、ごめんなさい!」
「やっぱりこの格好はおかしかったかしら?」
「そ、そんな事無いですよ。
とっても似合ってます!
寧ろそれ以外の服が想像できないくらいです!!」
「あら、それはそれで困ってしまうわ。
私、こう見えてお洒落が大好きなんですから」
「ええ!す、すいません……そんなつもりで言ったわけじゃ」
私が慌てて弁明すると、巫女さんはクスクスと上品に笑った。
「こちらこそごめんなさい。
響子さんがあまりにも可愛らしいからつい揶揄ってしまいました。
お詫び……になるか分かりませんが、私はまだこちらの方に滞在する予定ですので空いた日にお出かけしませんか?」
「え、それは……その……」
私は助けを求めるようにマオちゃんの方を見ますが、その視線を遮るように巫女さんが身体を傾けます。
「だ〜め。
お二人とは既に仲良しでしょうから、今度は私と仲良くなりましょう。
……どうしても嫌だというのであれば別ですが」
「嫌だなんて、そんな事は無いです!
全く、全然、これっぽっちも嫌なんて思ってないですよ!」
悲しそうな表情を見せたので慌てて否定すると、先程の顔は嘘だったのでは無いかと思うくらいの満面の笑みを浮かべていました。
「それなら決まりですね。
まずは連絡先を交換しましょう」
こうしてあれよあれよと言ううちに、巫女さんと連絡先を交換して2人で遊びに行く事になったのでした。




