響子と巫女の猫被り 1
どうしましょうか。
私は目の前にある鍋いっぱいの肉じゃがを見ます。
ちょっとボーッとしながら料理をしていたのですが、実家にいた頃の感覚で作ってしまいました。
これ、絶対に1人じゃ食べ切れないですよね。
うーん……お二人なら迷惑とは言わないと思いますし、とりあえず鍋の半分くらいをお裾分けで持って行ってみましょうか。
そう決意した私は早速、小さめの鍋に移した肉じゃがを隣の家に持って行くことにしました。
インターホンを押して暫くすると扉が開いてユウちゃんが顔を出します。
「いらっしゃい!
今日はどうしたの?」
「実は実家にいた時の感覚で料理してしまって、肉じゃがを作り過ぎてしまったんですよね。
ご迷惑でなければお裾分け貰ってくれませんか?」
「ええ〜めっちゃ嬉しいんだけど。
あ、ここで話すのも何だから上がってよ」
そう言うユウちゃんに招かれて家に上がります。
既に見慣れてしまったリビングにはマオちゃんと……見知らぬ女性がいますね。
流れるような綺麗な黒くて長い髪が特徴の美人さんで、何故か巫女服を着ています。
お顔の印象はとても可愛らしい市松人形といったところでしょうか?
巫女服という和装のせいでそんな事を考えついてしまいました。
「ああ、紹介するね。
この人は僕の先輩の巫女さんだよ」
「よろしくお願い致します」
そう言って深々と頭を下げる巫女さん。
巫女だから巫女さんって呼ばれているのでしょうか?
「これはご丁寧に。
私はお二人の隣人の響子と言います」
「まぁ、貴女が!
お二人から噂は予々聞いております。
とても可愛くて優しい友人が出来たと」
向こうが苗字を省いたので、私も名前だけでの自己紹介をしました。
それにしても……噂と聞いた時にはドキリとしましたが、良い話で安心しましたね。
それにしても……なんと可愛らしい人でしょうか。
本来はマンションのリビングに巫女服の女性がいると不自然な感じがしそうですが、全くそんな気がしません。
彼女はどこにいてもその格好が自然であり、周りの景色の方が彼女に合わせるように努力するべし……そんな途方もなく馬鹿な考えが浮かんでくるほどに似合っています。
「あの……何かおかしな所があるでしょうか?」
困惑したような声を上げる巫女さんの声で意識が引き戻されました。
慌てて弁解しようとした時に、
「そりゃ、こんな場所で巫女服を着ている女性がいるのはおかしな事であろう」
巫女さんの隣に座っていたマオちゃんも会話に加わってきました。
巫女さんの見た目の詳しい表現は初めてしたかと思います。
めっちゃ可愛い市松人形を思い浮かべてくれたら良いです。




