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猛暑の日 1

「あつーーーい」


「ちょっと暑すぎやせんかのう?」


お昼時、予約していたレストランでご飯を食べた2人は、腹ごなしも兼ねて少し歩き、浅草の方へとやってきていた。


この季節に水上バスにでも乗れば涼しいのではないか……そんな考えだったわけだが、それが浅はかであった事を思い知らされる。


「この暑さでそんな物に乗ったら死んじゃうって」


「間違いないのう。

人も多そうじゃし、そこは避けた方が良さそうじゃな」


浅草では外国人の観光客が多く、雷門の前はそれらの人でごった返していた。


「人が多すぎて通り抜け出来ない……」


「写真撮りじゃから少し待てば空くであろうよ」


こうして2人はへばりながらも待っている……すると、そんな2人に声をかけてくる男がいた。


「お姉さんたち、人力車はどうですか!?」


人力車の客引きである。


よく辺りを見回してみれば辺りにはパッと見で5人以上もの人力達が通りを行く人達に声をかけていた。


「いや〜暑いし遠慮しとくよ」


「いやいや、風が感じられて涼しいですから!」


「残念じゃが今日は暇がなくてのう。

おっと、ようやっと通れるようになったので失礼するのじゃ」


2人は体よく断りながら歩を先へと進める。


人力も断れ慣れているのか、深追いはせずにすぐに別の観光客へと声をかけていった。


「これだけ観光客がいれば稼ぎ時なんだろうけどね」


「見るからに暑そうな人達が並んでいるだけでちょっとのう。

今日で無ければまだ良かったんじゃが……」


「最高気温37度とかだっけ?

こんな中を客引きしてるのは可哀想だとは思うけど……流石にね」


どうか熱中症には気を付けてと祈りながら先を進んでいく。


「それとアレなんじゃよな。

ああいうのに乗って街中を回るというのは魔王時代を思い出してちょっとのう」


「ああ、魔王様ならパレードとかあったとか?」


「うむ、建国祭などではやたらと高い櫓の上に乗せられてのう。

本当は嫌じゃったのじゃが、民達が王に直接感謝を示す機会だと言われてはのう」


「まあ、普通は王様に会う機会ってないもんね」


「その魔界でもこれほどの暑さは無かったからのう。

流石に乗れんよ」


「耐性を切ってるのは別にしても暑いよね。

ちょっとコンビニ寄って行こうよ。

飲み物買いたい」


「妾もアイスで身体を冷やしたい所じゃな。

暫し涼んでいこうではないか」


こうして2人は緑と赤の看板が目立つコンビニへと入っていったのであった。

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