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折口響子の上京記録 5の裏

「ねぇ……もしかしてとは思ってたんだけど……」


「響子は間違いなく妾達のリスナーのオッキーさんじゃな」


響子が帰った後、途中から気付いてはいたのだが、核心を持った2人は結論を突き合わせていた。


2人の中では折口響子=オッキーの構図は間違い無しという結論に至ったのである。


「まぁ、こんだけ話してて気付かれないって事だから身バレの心配はしなくていいのかな?」


「その辺りは問題ないのであろうな。

これだけ目の前で話していても妾達と配信のユウマオ達が結び付かんのじゃ。

正直途中で混乱しそうじゃったわ」


「それは分かるなぁ。

今どっちのマオの話してるのってなったもん」


響子は認識障害の影響か、2人のユウとマオをしっかり別人として認識していた。


名前は同じでもちゃんと使い分けていたのである。


逆に認識障害の無い2人からしてみたら会話に出てくるユウとマオがどちらの事を指しているのかが分からない。


とは言え、基本的に配信しているユウマオばかりで、生身のユウマオに対しては「ユウさんもそう思いますよね!」と言った意見の同調などばかりだったので何とか話についていけた訳である。


「それにしても……あのオッキーさんがあんな子だったなんてね」


「もっと裕福な年上の男性だとばかり思っておったわい」


2人にとってオッキーとはお互いに認識できるくらいに見知ったリスナーであった。


何故ならば彼女は2人のメンバーに登録しており、配信では常に投げ銭をしてくれる。


その関係上、ライブ配信の視聴が多く、2人からしたら暇を持て余した金持ちという印象だったのである。


「あれかな?お家が金持ちだったりするのかな?」


「パニックになった時に出る方言が北の訛りだった気がするのう。

案外、実家は大きな牧場を持ってたりするのかもしれんな」


実のところ、このマオの予想は大当たりであった。


響子の実家は大きな牧場をやっており、朝早くに起きて住み込みをしている多数の従業員の食事から始まり、掃除や洗濯を行い、夕食の支度を手伝い終わる。


実家の利益とその膨大な仕事量から両親は正当な報酬を払っていたのだが、毎日がその暮らしである彼女には使う場面が無かった。


住み込みの仲の良い娘から教えてもらった事で通信環境を整えたのだが、それでも彼女はお金を持て余していた。


更に田舎の朝から夜のサイクルは早い為、都会から比べるとかなり早めの夕食の後の時間も持て余していたのである。


こうして自身がハマったVであるユウとマオの配信を熱心に視聴し投げ銭をするヘビーリスナーが誕生したのであった。


そんな事情はもちろん知らない2人であるが……


「お金持ちの無知な田舎娘って怖くない?」


「身バレの危険は無さそうじゃから、慣れるまでは見守ってやるとしようかのう」


響子が狼の巣に放り込まれた羊のように思えてきた2人は、なるべくアシストしてあげる事を誓うのであった。

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