折口響子の上京記録 5
呼ばれたお二人の部屋は私の家と同じ間取りながら綺麗に飾られていて遥かにおしゃれに見えました。
正に憧れた都会の生活というものです。
「お二人は正に都会人って形で素敵ですね」
「あっはっはっ、響子さんも数ヶ月も住めば直ぐに慣れるよ」
「うむうむ、妾達なんてお主よりもよっぽど酷い田舎からやってきたからのう」
「そうなんですか!?」
お二人が注文して届けてもらったというお寿司を頂きながら話を聞きます。
最初は遠慮したのですが、2人から歓迎の気持ちだし遠慮される方が寂しいと言うことで遠慮なく頂くことにしました。
「元々僕たちはこの国出身じゃないからね。
今は日本の国籍もらってるけど」
「妾とマオは同郷じゃから同じ文明レベルじゃったのう。
それこそこちらの中世ヨーロッパにすら追いついていない程じゃったわい」
「そんなに何ですね……」
私の出身地が幾ら田舎だとは言え、そんな昔の時代よりは遥かに進んでいます。
少し遠いですがコンビニはありますし、ネットだっと繋がる。
スマホもあればウォッシュレット付きの水洗トイレだってあるんですから間違い無いでしょう。
「まぁまぁ、僕たちの話はこれくらいにしといて、響子さんはなんで上京しようと思ったの?」
「伝手もなく状況というのは中々に勇気のいる決断であったろうに」
「それはですね」
2人の問いに私は素直に話しました。
動画配信にハマっていること、推しの子が異世界から来てこの世界に馴染んだこと、その2人に後押しされて上京した事である。
最初は笑って聞いていた2人の笑顔が段々と真顔になっていくのが分かります。
やはり、キャラの設定に憧れてなんて馬鹿馬鹿しいにも程がありますよね。
「あの、ごめんなさい!
こんなよく分からない話をしちゃって」
「え、ああ、いや、違うんだよ。
僕たちもその2人の事はよく知っててファンだから……ね、マオ!」
「う、うむ、そうじゃよ。
妾はユウのファンであるからのう」
「それを言うなら僕はマオのファンだよ」
そう言ってお互いの推しを褒め称える2人に私は何だかホッコリとした気分になります。
まるで推しの2人のてぇてぇ配信を観ているような気分で……ここに私のパソコンがあれば間違いなく赤色の投げ銭をしている所だったでしょう。
「あの、それなら私も2人の好きなところを語りたいんですが……」
おずおずと手を伸ばして私も会話に参加します。
ユウちゃんの良いところを褒めるとマオちゃんが。
マオちゃんの良いところを褒めるとユウちゃんが。
お互いに反応してくれるのが嬉しくてついつい熱く語ってしまいました。
夜も更けてきたので自室に帰ることにしたのですが、上京初日からこんなに気の合う友人と出逢わせてくれた神様に感謝して就寝したのでした。




