折口響子の上京記録 4
「そうそう、今日困ってる人がいたから助けてみたらさ!」
「何とビックリ!
我が家の隣に新しく入る住人だったんじゃよな」
「そんな漫画みたいな話あるの!?
って感じだけだ本当の話なんだよ、これ」
「折角知り合ったんじゃからこの後はその者を呼んで食事をするつもりじゃよ」
早速繋いだパソコンから動画配信のサイトへと繋ぎ、推しの配信を流し始めました。
今日は久しぶりに推し達のコラボ配信という事で何とかライブで観ることが出来て本当に良かったです。
それにしてもこの2人と知り合えた上に隣に住んで、食事にもお呼ばれされるなんて、ファンから見たらとてつもない幸運の持ち主がいるものですね。
その助けられたお隣さんが動画配信を見ているかどうかは分かりませんし、本物のユウちゃんとマオちゃんですから、見ていても気付かない可能性はありますが。
「そう言えば似たような状況でしたね。
偶然助けてもらった2人がお隣さんで……あら……これはそういう事ですね!」
私は一つの事柄を思いついて慌てて行動を起こします。
その変化はすぐに配信の画面に現れました。
「あ、オッキーさん、いつも赤い投げ銭ありがとね!
へぇ、オッキーさんも今日上京して同じように助けてくれた人達が偶々隣の部屋だったんだ」
「案外、妾達が助けた人がオッキーさんだったりしてのう」
「まっさか〜流石にそんなに世間は狭くないでしょ」
早速ネタになると思って赤い投げ銭をしたら直ぐに拾って話題にしてくれました。
うふふ、確かに隣のユウちゃんとマオちゃんが、ユウちゃんとマオちゃんだったら嬉しいですね。
そうして暫し配信を楽しみつつ荷物の整理をしていると配信が終わりを迎えます。
そこから30分ほどした頃でしょうか?
部屋のチャイムが鳴らされます。
私がガチャリと扉を開くと、そこには先程と違いラフな格好をしたユウちゃんとマオちゃんがいました。
「こんばんわ、お二人とも!」
私は嬉しくなって笑顔で挨拶したのですが、2人は何故か不安そうな顔をしています。
「うーん、こうやって出迎えてくれるのは嬉しいんだけどね。
先ずはカメラでチェックした方がいいよ。
ちょっとあがらせてもらっていいかな?」
「え、ええ、どうぞ」
私が了承して迎え入れるとユウちゃんだけが中に入ってきました。
そして再びチャイムが鳴らされます。
「ほら、ここにモニターがあるでしょ?
ここで確認してから開けるんだよ。
それと念の為にチェーンロックもかけた状態で扉を開けるといいかな。
ここって良い人ばかりじゃないからね」
ユウちゃんはそう言って一度扉のチェーンをかけてから扉を開きます。
すると少し開いた所で扉が止まりました。
「オートロックじゃから変な人間は来にくいがのう。
それでも女性の一人暮らしなんじゃから用心せねばダメじゃぞ」
「は、はい、気をつけます」
言われてみれば確かに防災意識が薄かったかもしれません。
とても頼りになる隣人と初日から知り合えたことに感謝しました。
「それじゃ準備も整ったからウチにおいでよ」
「うむうむ、歓迎するのじゃ」
こうして私は神様に感謝したくなるほど素晴らしい隣人に招待されたのでした。




