折口響子の上京記録 2
「あわわわわ……どうすっぺ。
何処さ言ったらええだか?
為して駅の中に服屋さんが入ってんだ?
為して駅の中に本屋さんがあるっぺさ?
うち、気付かん内に駅から出てデパートさ入っちまっただか?」
訳も分からずに彷徨っていると、電車の乗り口へと向かう階段が見えたので、自分がいる場所が駅の中だと分かり安堵します。
安堵したのだが……
「なんでこんなに乗り場が多いんですか!?
電車って上りと下りで一本ずつじゃないの???」
今度は乗り口のあまりの多さにまた混乱してしまいました。
私の田舎では電車は上りと下りのみで、1時間半に一本くらいのペースでしか電車は来ない。
しかし、ここでは二桁を超える乗り場に細かく書かれたタイムスケジュールを伝える電光掲示板。
それらのせいで混乱して身動き取れなくなってしまったのでした。
「ダメだべ……ウチ、ここから出られなくて目的地にも辿り着けずに死んでいくんだ」
キャリーバックを前に座り込んでため息を吐く。
こんなに困っていたところで、道行く人は忙しそうに歩を進めています。
中には手を繋いでウキウキとしたカップル達が多く進んでいく道もあるのだが、あちらには何があるんだろうか?
そんな事をぼんやりと考えていた時です。
「あの……大丈夫?」
「気のせいなら良いんだけど何か困っておるのではないか?」
後ろから声をかけられて振り向く。
そこには自分を心配そうに見る、高校生くらいの黒髪ロングに黒目の日本人らしい女の子と、白い髪をツインテールにして赤い目をした外国人っほい小学生くらいの少女がいた。
「はわ〜なんて綺麗な人達だべ……都会は凄いっぺ」
2人ともまるでテレビで見る芸能人のように可愛くて、思わず見惚れてしまった。
「えーっと、ありがとう……で、良いのかな?」
「いや、ダメじゃろ。
お主も現実逃避しておらんで、何か困った事があるのではないか?
妾達で良ければ力になるぞ」
少女は年齢よりもしっかりしているのか、こちらの顔を覗き込みながら心配そうに声をかけてくれました。
それで私は正気を取り戻して事情を説明したのでした。
「そっかそっか、東京駅は乗り場が多いから初めてだと混乱するもんね。
何処の駅に行こうとしてたか分かる?」
「えっと、この駅なんですけど……」
そう言って私がこれから住む場所の最寄りの駅の名前を見せると2人は驚いた顔をした。
「なんと、ここならば妾達の家からも最寄じゃな。
妾達ももう帰るところであったから一緒に行くとするかの?」
「え?良いんですか?」
「もちろんだよ。
困った時はお互い様って言うしね。
名前はなんて言うの?」
「あ、名乗っていませんでしたね。
折口響子です」
「響子さんね。
僕の名前は田中ユウ、気軽にユウって呼んでくれたら良いよ」
「妾の名前は田中マオじゃ。
同じように気軽にマオと呼んでくれ」
「よ、よろしくお願いします」
こうして私は芸能人のように顔の良く、それでいて何処かで見た事のあるような2人に導かれて東京駅を後にするのでした。
なんで気付かないかと言うと認識阻害されてるからです。
また、響子さんは田舎暮らしながらネットは使いこなしていたので敬語で喋る時は普通に喋れます。
慌てると作者が適当に気分で書いた方言が出ます。




