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女勇者として召喚されたけど、やる気がないので魔王の娘に聖剣と○○をあげました。  作者: なよ
第一章、女勇者レイナと魔王の娘エクレアの日常
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魔法とプログラム

「はーっ、凄いの。触るだけで色々な魔法が発動するような感じ。術式を一から詠唱するのではなく、術者に刻み込んだ魔法を発動させることに似ているけど、その発動する魔法を恐ろしく細かく制御できるようにしているみたい。これはどういう原理なのっ? 術式は必要ないの? どうやったらこんなものが出来るのっ?」


 ずいずいとミレーヌちゃんが詰め寄ってくる。


「く、詳しいことはわからないけど、あー、そうね。多分ミレーヌちゃんの言う術式と多分似ている物で動いていると思う。さっきも言ったけど、私たちの世界ではプログラムって言うのがあって、このスマホが理解できるプログラム言語で、こういう音楽アプリを作ってるの。ここをタップしたら再生が始まって、これを押したらスキップしてとか、そういう動作一つ一つをプログラムして組み合わせているはず」


「くぅ、そんなことをしたら恐ろしく膨大な術式になるんじゃない?」


「うーん、私はプログラムってよく見たことないけど、かなり長くはなると思うよ。一つのアプリやゲームを作るのに数年かかるとかあるみたいだし。あと、人海戦術って言うの? 百人とかで一つの物を作ったりもするみたい」


「そんなにも時間と人を使って術式を組むなんて聞いたことがないの。でも、そうなのね。そこまでするからこそ、このスマホは出来たのね。なんて恐ろしい。時間は私も存分に掛けて術式の研究はしてきた。でも、百人単位で術を開発しようなんて思ったこともなかった。せいぜいエクレアに教えながらやるくらい。というか、そんなにも人数がいたら術式がぐっちゃぐちゃになりそう。絶対おかしな術式を組む者がいて、まともに魔法が発動しなくなりそう」


「まあ、その辺りは取り纏め役が必要よね。あとは仕様書とか? この動作はこうしろーってのを書いた紙が多分あって、その通りにプログラムを組ませるのよ。そして出来なかったら出来るまで家に帰さない。寝ずに働き続けろーってやるのよ、多分」


「なるほど、奴隷に飲まず食わずで術式を組ませ続けるのね。合理的」


「いや、ごめん。ちょっと大げさに言っちゃったわ。さすがにそんなことしていないと思いたい。それに、頭が良くないとプログラムって出来ないと思うし。っていうか脱線しまくったけど、話を戻すわ」


 これ以上プログラムの話を突っ込まれても、説明なんて出来そうにない。


「つまりは、エクレアが雷撃を起こすときに、今のボリュームみたいに何か動作とか言葉を加えて自由にコントロール出来るように出来ないかなっていうことよ。手をひねったり、横に動かしたりして、強弱がコントロール出来ればいいんじゃない? っていうこと」


「強弱のコントロールを自在に……。今まである程度の威力の調整は、集中力を高めてマナを活性化させることでやっていたけど、それを術式の方で出来るようにするというのは考えたことがなかった。というか、そもそも威力をほぼゼロにまで落とすなんて、する必要がなかった」


 ミレーヌちゃんが眉間に皺を寄せる。


「魔法は敵を倒すために使う物ばかりじゃからのう。基本は最大出力じゃ。それが、まさかスマホの充電とやらに使う日が来るとは思わなんだ」


 エクレアも苦い顔をする。


「これからは魔法も日常生活に使う時代よ。もしかしたら私たちの世界の科学文明よりも凄いことが出来るかもしれないわ」


 魔法って絶対便利な物だと思うのよね。だって、言ってみれば超能力みたいなものだし。術式っていうので自由に操れるなら、きっと科学以上の物が出来るはずだわ。


「今までの方向性と全然違うからちょっと難しそうだけど、マナの反応量を調整する別の魔法を発動させて、それを媒介にして雷撃をコントロールする術式に働きかければ……。それとも、調整用のアイテムを作った方がいいのか……」


「アイテムは、持っていなかったら意味がないからのう。術式だけのほうが良いじゃろう」


 顎に手を当てながら部屋の中をうろつくミレーヌちゃんに、呆れたようにエクレアが言った。


「やっぱりその方が良さそう。となると、二つの術式に分けるか、複合術式にするか……」


「あんまりごちゃごちゃにすると、変なバグが混ざるって聞くわよ。分けた方がいいんじゃない?」


「バグ?」


「虫が入って誤動作するんだって」


 いや、本物の虫は入らないんだったかな。そのあたりのことは詳しくは知らないのでちょっと怪しいけど、出来るだけシンプルにした方がいいとは聞いたことがある。


「なるほど、良くわからないけどレイナの意見を採用する。エクレア、雷撃をコントロールする術式は貴女が作りなさい。私はそれを見ながらマナ反応量を調整する術式を隣で作るから」


「ううむ、難しそうじゃがやってみるとするかのう」


 そう言いながらも、エクレアは先ほどまでミレーヌちゃんが砂を垂らしていた魔方陣の前に立って砂の壺を持った。難しいといいつつも、すでに術式の作成に取りかかっているあたり、エクレアって意外と頭いいのかなと思ってしまう。


 真剣な表情で術式を作っているエクレアの横顔は、ちょっと格好いい。思わずドキッと胸が高鳴ってしまったのは秘密だ。


「私も傍で見ていていーい?」


「レイナに見られていると、なんだか緊張してしまうが、別に構わぬ。好きにするが良い」


「うふふ、頑張って♥」


 そんな私たちのやり取りをミレーヌちゃんがジト目で見ていたけど、何か諦めたようなため息を付いて、自分の足下に新たな魔方陣を書き始めていた。


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