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だけど私は諦めない⑨



「オォオオオオオオ――ッ!」


 再び咆吼をあげると、ライは床に転がったヒュドラの頭にその拳を叩きつけた。


 ヒュドラの頭が破裂し、脳髄と血が辺り一面に飛び散る。


 ライはヒュドラの頭を叩きつぶしただけでは収まらず、怒りをぶつけるように爪を壁から生えたヒュドラの胴体に叩きつけた。壁や床と一緒に、空間そのものがえぐり取られたようにヒュドラの胴体が弾け飛ぶ。


 そのあとも何度も何度も、ライは地中に伸びたヒュドラの胴体を追ってその爪を振り下ろす。洞窟の奥へ奥へとすべてを消し去りながら進んでいく。


「……なに、あれ?」


 胸に沸いた疑問を口にしたところで、私は自分がしゃべることができていることに気がついた。


 自分の身体を見下ろす。いつの間にか私の首の下にはきちんと身体があった。腕も足もある。


 けれど先程ヒュドラに食いちぎられ、生首になったのは夢ではない。それを証明するように、私の身体は再生したが、服までは元に戻っていなかった。剥きだしになった肌をなで上げる風の冷たさが、すべてが現実だったのだと訴えてくる。


「……フィリーア。フィリーア!」


『はい、システィナ。わたくしはここに。常にあなたと共におります』


 目の前にステータス画面が浮かび上がる。

 私は親の仇でも見るかのように、自分のステータスをにらみつけた。


「説明して! 説明しなさい! あなたライと私になにをしたの!?」


『システィナが身体を失っても生きていたことを聞いているのであれば、聖女スキルを手に入れて超越化したからと言うしかありません。わたくしというスキルがあるかぎり、あなたはたとえ心臓を抉られても、脳を吹き飛ばされても、再生することが可能なのです』


「そんなの……聞いてないわよ」


『それは申し訳ございません。聖女となるにあたってのデメリットばかりを尋ねられていたので、メリットの一部を説明し忘れていたのでしょう。それにこれは契約せずとも働く力ですし』


「なによそれ? ぜ、絶対に死なない身体なんて、そんなの」


『いいえ、例外はあります。たしかにあなたは肉体を失っても再生することが可能ですが、唯一、自分で自分の命を絶った場合のみ蘇ることができないのです。逆を言えば、自分で死のうとしないかぎり、あなたは永遠にこの世界を守ることが可能なのですよ』


 それはとても喜ばしいことだと言いたいようにフィリーアは語る。


 不死の肉体。たしかに多くの人が望む力かも知れない。けれど、唐突にそんなものを与えられ、首だけになっても死ねなかった身からすれば、とても恐ろしいことのように感じた。実際に不死の肉体を与えられた歴代聖女たちは、唯一の手段である自殺という手段で皆死んでいる。


 まるで悪霊が語りかけてきているかのよう。私はこの先自分に待ち受ける未来に、ただただ薄ら寒い恐怖しか感じなかった。今すぐこの声を消し去りたい、ステータスを閉じたいという欲求に駆られる。


 けれどまだ聞かなければならないことがある。私の身体よりも大事なことだ。


「まだ私の質問にすべて答えてもらってないわ。あなたは一体、ライになにをしたの?」


『なにも。あれは元々、ライ・オルガスの中に眠っていた怪物です』


 洞窟の奥から絶え間なく聞こえてくる咆吼と破壊音。それはヒュドラの移動よりもなお激しく洞窟内を痛めつけ、崩壊させようとしていた。


 言うまでもなく人間の業ではない。

 地形そのものを破壊する力は、まさに怪物の力というのが正しいだろう。


『何度でも言いましょう。ライ・オルガスはドラゴンなのです。あれが本性なのですよ』


「嘘よ。だってライは人間だった。私たちと同じように笑って怒って泣いて」


『けれど一人だけステータスが読めない』


「それがそんなに問題なの? ただステータスが読めないっていうだけなのよ?」


 そんなものはただの個性だろう。そうじゃないのか?


「私には分からない。あなたたち教会は、なぜステータスをそんなにも神聖視するの? ステータスを読めない人間をそんなにも否定するの?」


『なぜなら、ステータスがすべてだからです』


「それは自分がステータスに宿るスキルだからじゃないの? あなたはただ、自分を肯定したいだけじゃないの?」


『もしかしたらそれもあるのかも知れません。けれど、もっと重要な事実があります』


「それはなに?」


 私は問う。そこにはいかなる深遠な理由があるのだろうか?


 もしかして、過去にも同じことがあったのだろうか? ライと同じようにステータスの読めない人間がいて怪物になってしまったのだとか。もしかしたら封印されているドラゴンはそういう存在で、だから同じことを繰り返さないためにフィリーアは徹底して人々のステータスを監視し、ライを殺そうとしているのか。


 ライの中にはすべてを破壊しかねない力が潜んでいる。それはもう認めるしかない。現実は現実として受け止めるしかないのだ。


 だけどその上で、私はライが怪物だなんて思わない。


 だってライは泣いていた。私の死に悲しんで、それで暴走してああなってしまった。それを他ならない私が否定し糾弾することなど許されるはずがないし、私はああなったライを見ても、小さな恐怖こそ抱きはしたが嫌いになんてならなかった。


 だから、ただ純粋に疑問なのだ。


 この世界を何百年も見守ってきたフィリーアが、ドラゴンと読めないステータスになぜそこまで敵愾心を抱いているのか。


『システィナ。わたくしはこの世界を守るために生まれたスキルです。ドラゴンを封じることを使命として、初代聖女フィリーア・ヴァレンタインによって生み出されました』


 それは最初に聞いた。私が知りたいのはその先だ。生み出されたあなたはなにを見てきて、なにを思っているのか?


 変化を恐れて拒み続けてきたその先の答えを、私は固唾を呑んで待つ。


 けれど……いつまで経ってもフィリーアはその先の答えを言わなかった。


 まるでこれで答えはすべてだと言うかのように。


「……待ってよ。ねえ。待って」


 とても信じられなくて、受け入れられなくて、私は本気で焦った。


「今ので説明は終わりじゃないでしょうね? あなたが私に一度死を経験させて、ライを暴走させてまで証明したかったことが、今の説明で終わりなわけないでしょうね?」


『いえ、終わりですが?』


 必死になって訴えかける私に、フィリーアは告げた。


 これ以上なにが必要なのだと。


「あり得ない。そ、それが理由のすべてなの?」


『はい』


 全肯定は軽やかに。


『初代聖女フィリーア・ヴァレンタインが望んだから。それが理由のすべてです』


 その信仰に僅かな揺らぎもなく、狂信者は言い切った。


『初代聖女フィリーア・ヴァレンタインはドラゴンの封印を解くなと言いました。ならばどれだけの犠牲を払おうとも封印は維持しなければなりません。そのためにわたくしは生み出されました。ならばわたくしはドラゴンをこの世から抹殺しなければなりません。ドラゴンが復活するという可能性が少しでもあるのなら、その可能性は完全に滅しなければならないのです』


 それは酷く矛盾した言葉だった。ライがドラゴンだと思っていて、本当の意味での覚醒を拒みたいのならば、今フィリーアがしたことはなんなのだろうか? ライを怪物にしたのは、他でもない、あなたではないか?


 けれどあらゆる言葉は通じないのだろう。フィリーアは自分こそが正しいのだと心の底から信じているのだ。いつぞやの老司祭がそうだったように、信仰に狂うとはそういうこと。思えば、フィリーアはことある事に初代聖女の名を口にしていた。あらゆる考えの最初に初代聖女の名前を出していた。

 

 恐怖と動揺の中、私は今になってようやく理解する。


 聖女スキルとは、この世で最も敬虔な初代主義者なのだ。自らをフィリーアと名乗るほどに、彼女は自分を生み出した初代聖女を信仰している。


 そして聖女スキルが私に宿った時点で、私には聖女になる以外の選択肢はなくなっていたのだ。


 考えを改めることのない聖女スキル。死なない肉体。契約しなければ暴れ回るドラゴンから生まれたモンスターたち。


 逃げ場など最初からどこにもなかった。聖女スキルが私のステータスに宿ったあの日、私がいずれ聖女になることは決定された未来だった。


 生まれながらのステータスでその人の将来が決定してしまうように。

 聖女スキルもまた、宿主の未来をたったひとつを除いてすべて奪い去る。


 世界を救うか。それとも大切な人ごとこの世界を見捨てるか――私に突きつけられていた選択肢とは、片方しか選びようのない二者択一だったのだ。


『さあ、システィナ。これであなたもライ・オルガスの危険性は分かったでしょう? 早くわたくしと契約し、彼を抹殺に行きましょう。今ならばまだあれを倒せますが、このままでは手遅れになりかねません。ライ・オルガスの中のドラゴンとしての気配どんどんと大きくなっています』


「ふざけないでよ! あんたがそうしたんでしょうが!」


 私は怒りながら、ライを追いかけて洞窟の奥を目指した。


 ライがどこを通って奥へ行ったのかは一目瞭然だった。破壊の跡を追いかけていく。


 途中、ライが着ていたはずの服が落ちていた。拾い上げると、まるで中から広がって引きちぎられたかのようになっていた。


 ここでまたひとつ、ライは人間としての形を失ったのだ。


「ライ……」


 私は破れた服を胸と腰に巻き付け、さらに走る。


 薬草畑のあった大空間まで辿り着いたところで、ようやく私はライに追いついた。


「そんな……あれがライなの?」


 ライの姿はもはや人の原型を留めていなかった。大きさこそ人間大ではあるが、全身に黒い鱗をまとい、両手足には鋭い爪が生えている。お尻からは長い尾が伸び、背中からは巨大な翼が生えている。


 そして顔は絵画などに描かれたドラゴンのそれに変わっていた。血のような瞳は縦に割れ、口からは炎の吐息を零している。


「オォオオオオオオ!!」


 獣の咆吼を上げ、ライは口から猛烈な勢いでブレスを吐き出した。


 この世在らざる漆黒の炎をもって、対峙するヒュドラを焼き殺そうとする。


 ヒュドラもまた、残った七つの首を揃えて返礼のブレスを吐き出した。

 多種多様な属性のブレスをもって、なんとかライのブレスを相殺する。


 さらに首が独立して動き、一口で丸呑みにしようと大口をあけて次から次へとライを襲った。


 ライは翼をはためかせ、空へと避けた。そこから再び炎を吐き、ヒュドラを怯ませると、一気に急降下してその爪で頭のひとつを切り裂く。


 その体躯は圧倒的にヒュドラの方が大きいが、戦闘能力はライが完全にヒュドラを圧倒していた。ヒュドラは怯えたような動きで、死にもの狂いで抵抗しているという有様だったが、ライはその必死さを嗤うように手加減し弄んでいるのが分かった。


 いつものライではない。あんなライを私は知らない。


『システィナ。契約を』


 怪物同士の戦いを前に立ちつくす私に、フィリーアが静かな声で契約を迫った。


『世界を守るのです。人々を救うのです。これはあなたにしか出来ないこと。初代聖女フィリーア・ヴァレンタインがわたくしの担い手として選んだ、あなたにしか出来ない偉業なのです』


「ライを……殺す」


『ええ。それがある意味では、ライ・オルガスにとっての救いになるでしょう。怪物となった彼が人を襲う前に、我らで優しく滅ぼして差し上げるのです』


 ライは怒りと悲しみを込めて、ひとつ、またひとつとヒュドラの頭を消し飛ばしていく。そのたびにライの身体は一回り大きくなっていき、怪物であるヒュドラのように巨大化していく。人間ではなくなっていく。


『システィナ・レンゴバルト。わたくしは短い間ですが、あなたを見ていました。だからあなたがライ・オルガスに向けている感情がなんなのかは理解しています。だからこそ、わたくしはこう言いましょう』


 ステータス画面と私の内側から、綺麗な黄金色の光があふれ出し、人の形となって私を後ろから優しく抱きしめた。


 そして彼女は私の耳元で甘く囁く。


『――愛しているのならば殺しなさい。それともあなたは、ライ・オルガスを愛していないのですか?』

 

 ああ、そんなわけがない。私はライを愛している。


 だから。


 だから私は頷こうとして――それを見つけた。


「……ああ、そっか」


 ライとヒュドラによって破壊され崩れ落ちていく大空洞の中で、その黄金の畑だけは変わらず静かに揺れていた。そこだけがまるでなにもなかったかのように、薬草畑は無事なままだった。


 それはなぜか? そんなのひとつしかないじゃないか。


 瀕死のヒュドラが自分が生き埋めになるのを承知で、辺り一面に稲妻のブレスを吐き出した。


 ドラゴンとなったライであれば、簡単に避けられる攻撃。だがライはその攻撃をあえて受け、薬草畑を破壊から守っていた。さらに入り口にいる私に気付き、一瞬で私の前まで移動すると、天井から降り注ぐ瓦礫が当たらないようすべてを炎で吹き飛ばした。


「ライ?」


 名前を呼ぶ。人の姿ではなくなったライは、それでも私の声に反応して振り向いた。


 縦に割れていた瞳が、私を見る一瞬だけ、元のライだったときの純粋な瞳に戻った。すぐに怒りに染めてヒュドラめがけて飛びたって行ってしまったけど、それでも私はたしかにライの本当の心を見たのだ。


「……ねえ、フィリーア。私、わかったわ」


『おお、ようやく理解していただけましたか!』


「ええ、よ~く理解したわ。あなたが乙女の可愛い夢を奪っていく最低最悪の外道スキルで、それでいて大切な人を守れる唯一無二の素敵スキルだということがね!」


 絡みつく黄金の腕を振り払い、私は人差し指を突きつけた。

 

「ライはドラゴン。ええ、それは認めてあげましょう。けどね、ライは怪物になんてならないわ。今はちょっと暴走してるだけ。誰かがもう大丈夫だよって一発その頬に拳をぶちかませば、それで元に戻ってくるの」


『ありえません。ドラゴンはドラゴン、世界の破滅へと転がり落ちていくだけです。初代聖女フィリーア・ヴァレンタインもまた、救いようがないと封印を――』


「したのかもね。ええ、したのでしょう。けどライはそうならない。私がさせない。聖女がドラゴンを封じる力を持つ存在ならば、私はその力をライのドラゴンとしての側面を封じるために使いましょう」


『馬鹿な。ではあなたはライ・オルガスのあの姿を見てもなお――』


「そうよ。私はライを救うために聖女になる! ライを殺すんじゃなくて、守るために聖女の力を求めるわ!」


 それが私の――システィナ・レンゴバルトの決意だった。


『馬鹿な。馬鹿な馬鹿な馬鹿な! システィナ、あなたの目は節穴なのですか!? そんなの、そんなの許されるはずがありません! わたくしは初代聖女フィリーア・ヴァレンタインに、なんと詫びればいいのですかぁああああああッ!!』


 フィリーアが発狂したように叫ぶ。


 けれどどれだけ叫こうと無駄だ。


「ああなったライを見て、それでも考えが変わらなければ、ライを守るとたしかにあなたは約束したわ。他でもない、初代聖女フィリーア・ヴァレンタインにね。あなた、約束を破るつもり?」


『くっ! で、ですが!』


「さあ、約束を果たしなさい! 私たち二人でライを助けに行くのよ!」


『いやぁああああああ――ッ!!』


 契約は此処に。私はフィリーアの信仰を蹴飛ばして、強引に契約を結ばせる。フィリーアの黄金の輪郭が崩れ、光となって私の中に吸い込まれていった。


 それこそが聖女の力。ドラゴンをも封じることができる強大な力だった。


 かつてないほどの全能感を感じながら、私はまぶたを閉じた。


 もしかしたらあったかも知れない、未来の光景を思い描く。


 光に包まれた礼拝堂。私たちを祝福する家族の声。

 リグ先生やニルド、他にもたくさんの人々に見守られる中、私とライは将来を交わしあって夫婦になる。私はライの素敵なお嫁さんになるのだ。


 ああ、それは本当に泡沫の夢でしかなくて。

 唇に触れた熱さは、もう遠い彼方の出来事のようで。


 けれど――うん、仕方がない。


「だって、いつの間にか好きになってたんだもの」


 愛しているのなら――守らないと。


「ばいばい、私の幼い夢」


 そして初めまして、聖女としての私。


『ああ、契約は成りました。成ってしまいました。ドラゴンを助けるためだなんて、そんな理由で……』


 心底嫌そうな声で、けれど以前よりも近く感じる声でフィリーアが嘆く。


「諦めなさい。私を選んだあなた、もしくは初代聖女様が悪い」


『ええ。ええ。生まれて初めてそう思いました。そして改めて、これまでの聖女たちがどれだけ正しく世界を案じていたのかを理解しました。今はただただ、素直だった彼女たちの献身に感謝の心でいっぱいです』


「素晴らしい。私たちへの感謝の心はいつでも忘れないように」


 私の言葉にフィリーアが絶句しているのが分かる。いい気味だ。もっと悔しがるといい。


「安心なさい。ずっと封印してる方のドラゴンの封印は、私もちゃんと手伝ってあげるから」

 

『でなければ困ります。それだけを慰めにして、この苦難の乗り越えなければ』


 心なしか涙ぐんだ声でフィリーアはそう言うと、


『ですが覚えておいて下さい。わたくしの考えは変わりません。ライ・オルガスはいずれ必ず抹殺します。正しき使命は、強い想いは、時にすべてを凌駕して悪を砕くのです』


「心に刻んでおきましょう。ありがとう、フィリーア。とても素敵な情報だわ」


 フィリーアからの宣戦布告を、私は別の可能性として受け止めた。


 聖女になってしまった段階で、素敵なお嫁さんになるという夢は諦めた。けれど二人で夢見たあの夢へは、もしかしたら今の私でもたどり着けるかも知れない。


 ライがその夢を叶えてくれたら、私も……。


『では改めて契約を此処に。システィナ・レンゴバルト、我が五十八代目の主よ。あなたは世界を救ってくださいますか?』


「ええ、誓いましょう。私は私の大切な人たちが暮らすこの世界を守る。今から私が、第五十八代聖女フィリーアよ!」


 契約は交わされた。そうして私は聖女になった。


『ではシスティナ、契約を履行するために必要なので、その身体を借り受けますよ』


「ええ、私の身体で存分にライを救ってあげてね。フィリーア」


 その最初の仕事として、私は心から望んでフィリーアに身体を明け渡した。


「……かしこまりました」


 フィリーアは心底忌々しそうに顔を歪める。私は宙に浮かぶステータス画面からそれを見る。


 私の顔ではあっても、初めて目にしたフィリーアの剥きだしの表情は、とてもスキルとは思えない人間と同じそれだった。


 大嫌いな相手をそれでも助けなければならない――そんな素敵な泣き顔だった。


 

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