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武術覚書  作者: asada11112
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168 足底の纏絲勁と無足の法

168 足底の纏絲勁と無足の法



サブタイトルでわざわざ書いたからには、


中国武術の足底の纏絲勁の捻りと、

日本古流武術の『無足の法』は関連している。

というか、『カンフー版の無足の法』に足底の纏絲が絡んでくる。


カンフーでも、

『脚で地面を蹴るな』と言うのは大原則である。


ここで疑問が起きるだろう。

疑問:『震脚はなんなんだ?』

答え:『震脚は地面を蹴っていない』

(押し込んでいない)


表面数ミリを強力に地面の表面に『当て』て、自分の骨を振動させている。

(以前書いた、練到骨髄の基礎練功法でもある)


この辺り、日本柔術の『当て身』に近いと考える。

昔は当て身の効果を『電撃的効果』と日本の武術関連者は発言していた。


多分、ある程度事情は推測できる。


廃刀令が出た後の日本、

素手格闘技の黎明期、沖縄から日本にやって来た空手、


拳骨を限界まで鍛えてあげ、

瓦やコンクリートブロックを粉砕する『一撃必殺』の打撃には、

柔術の当て身は外見的にあまりにも脆弱に見える。


それに対しての答えを、


『柔術は当て身を一番に考えていない、

あくまでも投げや関節技の隙を作る為の方法論である』


と答えたのだろう。


現代ではその反対の現象が起きていたと思う。


キックボクシングや空手等の打撃格闘技が、

格闘技の多数となっており、

柔道やレスリング相手に、

掴む前に殴ってしまう打撃が有利と世間が思っていた世の中で、


投げ・寝技・関節技主体のブラジリアン柔術が、

ほぼ何でも有りのバリートゥードで優勝してしまってから、


『打撃格闘技は、武器や1対多数を想定しているからーー』

という答えをして来ている様に思う。


実際に武道を習い、

相手と技を掛け合う様になってから、

それらにそうそう簡単な答えが出ない事が何とはなく分かってくる様にはなる。


日本柔術の当て身は、


超高速で相手の表面に当て(押し込まない)、

高速で引き戻す方法論で、

威力を求めないとしているが、


その当て身のやり方をする諸賞流柔術(因みにこれは通称で、大概の古武術には少々ややこしい正式名称がある)では、

『裏打ち』と言って、

鎧の上からでも相手の人体内部を破壊する事が出来た。


中国武術では、当てる使い方の一部を少しバラすと、

高速で表面に当て、

押し込まず、

そして、拳を当てたまま、少しの間『貼り付く』

という方法論がある。

(これ単体では効果は出ないが情報として)



話を無足と纏絲勁に戻して、

『喧嘩芸骨法』の方で有名になった、

足をソの字ーハの字に捻りながら横に移動する通称『カニ歩き』と言う練功法がある。


師匠からカンフーの練功法として教えて貰い、

元々は松田隆智師範の教えていたカンフーの練功法を、

骨法が取り入れたと言う話を、

師匠から聞いて驚いた骨法世代の私であるが、


この練功法が『横に移動している』事に注意、


この方法論で移動している時は、

『脚で地面を蹴っていない』

とカンフーでは定義付けられる。


ただし私はこの練習中に、

何度も、

「それは地面を蹴っているから駄目だ」

と注意されたので、

自動的に地面を蹴らなくなる訳では無いと思う。


最初は師匠は、

『カンフーは重力を使わず、質量を使う』

と説明し、方法論として、


師匠「無常力状態で宇宙船が相手にぶつかる時の現象が勁と同じ状態」

と説明していた。


この時点で、日本古流武術の説明とかなり似通っていて、

私「無足と同じなのか」

とは思ったが、

そんなものをどうやって地球上で再現すれば良いのか、

皆目わからなかった。


無重力と聞いて我々生徒が、

当時流行っていた身体操作法の、

『膝を瞬間的に抜いて、自由落下時の無重力状態を作る』

というのをやって見ると、


師匠「お前らでは駄目!

あれは自由落下の為に『膝を抜く』のであって、

お前らでは膝を抜く前に一瞬ジャンプしてしまっている!、

それが殴られるんだって!

移動時の一瞬のジャンプの時の体幹から頭の上下動で判断して相手は殴ってくるんだ!、

それをなくす為の方法論をやろうとしてジャンプしてどうする!


よく考えろ!、

素人がチョットやってすぐ出来る様なモノなら、

すぐ皆んな同レベルになって先生は商売にならんだろ!、

あの理論ではお前らでは絶対に出来ないから捨てろ!」

と言われる。

まあ、当然生徒は出来ない。



少し師匠が説明の仕方を工夫する様になって、

師匠「空中を飛んでいる飛行機がぶつかってくる状態でも良い、これなら宇宙ではなくて地球上だから分かるだろ?」

という様になった。


‥‥‥‥‥‥やっぱり分からん。

鳥じゃないから飛べないし。



そして今の所、

最新の説明、精一杯師匠が妥協した方法論が以下の通り


師匠「地面をタイヤの回転で走る自動車だ!、これで解れよ!」

との事。


このレベルでようやっとカニ歩きが理解出来た。


カンフーの足底は、

パラリンピックのバスケ用の車椅子の様に、

かなり『ハの字に開いた』車輪であり、

足底の全面積の接地ではなく、

靴底の角だけで斜めに接地し、

地面を蹴らず、纏絲の回転力で転がる。

靴底のエッジをタイヤにしている。


この理屈が『基礎』である。

人間の関節構造から、

人体の運動は円運動になる。

だから上手く理屈を使えば、

捻りを使わずとも車輪回転の移動と同じ物理運動が可能。

外見上、歩いてるのと変わらない動きで、

地面を蹴らなくなるカンフー版の無足が出来る。


出来ているか、出来ていないかは、


師匠「取り敢えず殴り合ってみると分かる」

との事。


明らかに使う使わないで、

有利さが違うのか分かるという。


師匠「俺にとっては纏絲は威力ではなく、

殴り合う時に有利になる方法論、

まずそっちが先だろう?」


中国武術の套路、

例えば太極拳の『欄札衣』という技で、

右足を横に出す時に右踵から地面につけて、

それから右足底全体を地面につけて右に体重を移動していく動きがあるが、


『カンフー版の無足』として考えると、

あれは踵の形が『半球体』であり、

その形状を利用して、

身体を移動させるのに、

踵の球体で『タイヤの回転の理屈』を使っての地面を蹴らない移動で、

相手の監視網を抜けて間を詰める意味がある。


さて、

その上で重要なのは、

これを知ったからと言って、

『絶対にそれ用に套路を変えては駄目であり、

師匠が指導した套路のやり方を徹底して墨守しなければならない』

という事。


一つの套路動作の中には、

幾つもの『意味・術理』を圧縮して封じ込めてあるので、

そこだけ抽出すると、

他の術理が無くなってしまう。


『型は中道』

を絶対に守らなくてはならないという指導であった。


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― 新着の感想 ―
[一言] 中国武術で言う『平起平落』のことでしょうか。 いろんな太極拳の動画で、後ろ足を前に進める時に踵が先に上がってるのを見てぱっと見、口訣と違うなと試行錯誤してました。 自分がやってみた結果、行き…
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