152 マインド・意念−②、武術的意味での自然、宇宙の法則
152 マインド・意念−②、武術的意味での自然、宇宙の法則
武術における闘いにおいて、よく言われるのが、
『欲を出したほうが負ける』
『勝とうとした方が負ける』
『自然の流れに乗って動いた方が勝つ』
である。
我々一般人は、
『で、その具体的な方法は?』
『達人の言う事は訳がわからん』
と言いたいのだが、
実はこれは具体論だったのである。
例えば、
『猿拳』
(北派猴拳や白猿通背拳など)
実際に師匠が猿の動きをやって見せる。
其処に私は人間の動きで攻撃を掛けていくと、
一瞬で負けてしまう。
師匠が猿の動きをやめて、
人間の動きのテクニックで私の相手をすると、
『数手ぐらい』私とやり取りが続いてから私が負ける。
師匠「人間の動きより猿の動きの方が自然に近い、
だから猿を真似た動きをすると、
自然に沿った方が勝つ事になり、
人間はそれに負けざるおえない」
因みに虎や熊や馬や鳥の真似でもこの現象は発生する。
ただ人間は元から不自然な存在なので、
なかなかに動物の真似がし難い。
人間に最も近い霊長類の肉体を持った自然の生き物が猿であり、
『猿拳』が最も入りやすいとの事である。
さてさて、
武器の話に戻さなくてはならない。
武器は自然か否か?、
答えは『自然』だそうである。
例えば刃物、
刃物で物をスッパリと斬る為には、
刃物が『良く切れると言う物理法則』を体現していないと駄目。
即ち、刃物にはモノが切れると言う、
『自然の法則』がある。
人間が作った不自然の塊だと一般人が思う『飛行機』は、
自然の法則を体現しているが故に空を飛ぶ事が出来る、
つまりは飛行機は『自然』
(この辺り、095参照)
で、その武器を、
『不自然な人間』が身体を動かした結果的として、
武器に人間の動きが伝わり相手を攻撃するのは不自然。
自分の身体を捨てて、
武器をダイレクトに動かす脳のコマンドを発すれば、
『前者よりも』自然になって、
その結果勝てると言う話。
ここから核心であるが、
人が傍若無人に武器を扱って、
無理矢理に武器を動かす人間と、
武器を大事にして、武器を尊敬する対象として扱っている人間とでは、
『後者の方が武器がより協力的に動いてくれる』
イコール、自然に動いてくれるので、勝つ事ができる。
その為には、
『武器を、敬意を持って大事に扱う』必要がある。
ようやく、居合術のM I師範の話に戻るが、
一般人的な眼から見て、
M I師範の刀に対する愛情というか、
敬意の払い方と言うか、
刀を大事にする扱い方こだわり方は、
(あくまで素人からの目線で有るが)
異常に見えるほどで有る。
刀をぞんざいに扱っている人に対しての態度があまりにも厳しい為、
色々と誤解もされるらしいが、
当人によれば、
「日本刀以外だったら柔軟に対応できるんです」
との事、
で、このレベルで大事に刀を扱う人間が剣術をやると、
中国武術で言う所の、
『刀が勁を纏った』状態になるので有る。
まあ日本刀に関しては、
ちゃんと自分で働いて購入した人は、
あまり粗雑な扱いをしないと思う。
なにせ、武用刀として現代刀匠が打った刀を新規購入した場合、
研ぎや拵え(鞘や柄など)も全て含んで、
ギリギリまで刀匠が好意で価格を抑えてくれて、
それでも一振り最低75万円ぐらいらしい。
多少の利益を出そうとすると、
100〜200万円の価格となるそうな。
さてこの『武器を大切に扱うと武器は勁を纏う』と言う現象を、
一般人でもある程度すぐに体感する事が出来る。
これは相手が必要なので武術の練習会などで試してみると良い。
以下その方法。
①相手に短棒を両手で持っていて貰う。
鉄棒でもする感じで持って構えて貰う。
②一度、掛け手はその棒を普通に持って思いっきり引っ張ってみる。
相手も棒を取られない様に対抗して引っ張る。
当然に特に大きな変化はない。
③今度は掛け手は、
引っ張る前に相手の掲げている棒に優しく手を当てて、
棒に対して大きな声でこう話しかける。
『棒さん、棒さん、僕のものになって下さい』
この時は誠実に、棒に敬意を込めて言う事。
④そして棒を時価500万円ぐらいする純金の棒と思って、
曲げたりしたら罰金1万円ぐらい取られると思って、
慎重に引っ張る、以上。
⑤因みに私が試した時は、
棒を持っている相手は、
まるで合気にでも掛かったように私の方につんのめってきた。
※なお、私はスポーツセンターで、他のスポーツ団体が多数練習している中でこれをやらされたが、
中々に恥ずかしかった。
これが武術での、
心の使い方の基礎である。
続く。




