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武術覚書  作者: asada11112
132/187

132 短編三つ。



沖縄空手では、

『裏当て』

という技法が存在するという。

曰わく、

『前から突かれたにもかかわらず背中に痛みを感じ、打たれた者は前方に倒れる』

というもの。


それに対して師匠の見解を聞かせて頂いた。


おそらく、北派武術の浸透勁とは別種の打ち方をしているとの事。


詳細は書けないが、

北派の突きが、質的に、

『ナイファンチ』の型の修練で得られる技に近いのに対して、


裏当ては、南派武術の『工字伏虎拳』の型の修練から得られる突きの質なのではないかという。


という訳で実験。

受けは壁際に立って、

突く方はゆっくり師匠の指導に沿って受けを打つ。


結果、

背中側のアバラにおかしな歪みを感じて

「ほげ」

という声が出る。


多分、師匠の指導がないと再現不可能。

しかし、理屈は非常に納得できるものがあり、

それに向けた練習は可能である。

(一応、我々が習っているのは基本、北派なので練習自体余りやらないと思われる。)


相変わらず、この会にいると色々な事を教えて貰い、退屈がない。


(退屈する暇も無い)




今回も師匠に迷惑をかけまくる。


歩法。

武術で移動する為のノウハウ。

とりあえず、今回わかったことは、


生徒が理解するためには、

「師匠がまず、生徒の勘違いしている部分に気づく」

のを先に必要とする。


生徒が師匠の言っていることを理解するより先に、

師匠が生徒の間違えているところを見つけださないと、

生徒が進めない、


という、

これまた師匠に申し訳ない状態。

とても申し訳ない現実。


出来ない生徒に、師匠が色々な説明を試み、

漸く生徒が理解できる説明が来て、

なんとか、生徒が出来るようになっていく。


必死で師匠の言うことを理解しようとして、

師匠の説明を聞くが、

なかなか出来ず、

最後の方で、やっとこ師匠が生徒のおかしな部分の、勘違いに気が付き、

それを指導して、

ようよう、生徒が、間違いに気が付く。


あえて言うが、

師匠の、人の動きを見る能力は尋常ではなく、

また、それを言葉に直す能力も尋常ではない。

おそらく、日本でも有数のレベルにあると思う。


そんな師匠の言ったことを理解できない生徒。

何度も何度も何度も、

師匠が言葉を変えて説明して。

数十分かかって、ようやく生徒が理解できる説明を見つけだす。


生徒の方から、師匠の言葉を理解するのが出来ないのが、

とても申し訳ない。


今回のポイントは、重心。

重心の陰陽。


太極拳に置いては、

基本、初心は片足の足底の一番端っこの一点に全重心を持っていく練習をする。


そしてまた、両足のどちらにも重心がかからない方法論もある。

(まさに、陰と陽と、『どちらでもない』という量子論の『宇宙の法則』である。)

馬歩という動かない状態でありながら『歩』という歩法を意味する(歩法が隠されている?)状態もある。


ちなみに、今現在私は八卦掌を練習していないが、

八卦歩・走圏では、どちらもあるらしい。


初心で習うときは、(習ったのは数年前だが)重心は片足の端っこの一点だったが。

今回は、どちらにも掛けない、を使っていた。


というか、今回の最大の『生徒の勘違い』が、

師匠が、今回のやり方に、どちらにも重心を掛けない方のやり方を欲していたのに対して、

生徒が、片方に寄ってしまう重心の使い方を用いていたためである。


重心をどちらにも掛けない歩法の武術での使用例などは、

だいぶん昔から習っていたのだが、


生徒は全然そちらに頭が繋がっていなかった。

師匠の方も、ちゃんと教えた技術だったので。

そのあたり生徒の勘違いに気づくまでに時間がかかったと思われる。


師匠は、

「難儀やなあ」(名古屋独自の言い回し)

とつぶやいていた。


誠に申し訳ない話であるが、

生徒側の(主に私だが)勘違いの部分がやっとこわかって、

師匠のせっかくの努力が無駄に終わる事無く、ほっとしていたりする。




今回は螳螂拳の練習会でのお話。


『暗腿』、という技がある。


簡単に説明すると、

『前からの膝カックン』

相手の踏み込んで来た足の脛を、

自分の脛で押して相手を転がす技術。


師匠の指導の元、

生徒同士で組んで掛け合ってみる。


なかなか師匠の様には、相手は簡単には転がってくれない。

そこで師匠からのサポートが入る。


師「まず上体を一旦倒して、胸をこうこうやって腰をこうして……よしやってみろ。」


ころん。


あっさり倒れる。

……………よくわからない。


同じ指導を他の生徒にしている様子を、

目を皿の様にして見る。


………………

わかった!!

興奮してその一大発見を叫ぶ私。


「そうか!、螳螂拳の姿勢が必要なんだ!」


師匠はこう言った。

師「……うん、今日は螳螂拳の練習会だからね。」


師匠の眼差しは、

とっても生温かかった。



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