121 人体の表と裏の概念
太極拳の練習会
師匠より、
『人体の表裏』という概念の説明を受けた。
人体の前側を表面、後ろ側を裏面とする武術概念である。
字面だけを見ると
「ふ~ん。」
で済んでしまう。
実際、
師匠から今までに何度となく聴いて来た単語である。
しかし、
それが、武術の実際の場面で、
どのように作用するのかという技術論になって驚いた。
私の後輩の生徒がこれを使って、
私の攻撃を避けた時の動きが、
師匠そっくりになってしまったのである。
当然、横から師匠が細かく指示を出して、
後輩の生徒の動きを誘導している訳だが、
『喰らった時の感覚』
が、正しく師匠のものと一致するのである。
不思議な感覚。
違和感……ではない。
単語がないが敢えて呼ぶなら『正和感』。
マイナス方向への違和感。
それこそが正しく、
我々生徒とは著しく『似て非なる』動きであるという感覚。
『正しく違っている。』という感覚。
生徒が普通に師匠を真似した時に感じるのが、
正真正銘の
『違和感』
師匠が正しく動いた時の我々生徒とは違って感じるのが、
『正和感』?
やっとで喉の詰まりが取れた感じである。
人為不自然から、無為自然を見たときの感覚。
それが、
師匠の動きを見たとき、或いは師匠の技を掛けられた時に感じる
『不思議な感覚』
の正体であろう。




