104 浸透する打撃
漫画『拳児』では、
試合用の頑丈な防具を付けた相手を、
主人公の師匠が上から軽く押しただけで、
昏倒させてしまう場面がある。
あるいは、息の長~~いカンフー漫画、
『鉄拳チンミ』では、
通背拳と言う名前で、壁の向こうにもたれている相手を、
壁の反対側から打ち抜く。
(本来は、通背拳とは流派名であり技名ではない)
さて、そんなことが、我々『生徒』に出来るのか?
という命題というか、疑問にブチ当たる。
ちなみに、前回書いたが、
当時、師匠は不思議な崩し技をころころ掛けていたので、
その手の技も『出来ても不思議じゃない』と皆思っており、
誰も師匠にリクエストする人間はいなかった(笑)
そんな中、
師匠が、昔使っていた頑丈な防具やら、
ぶっといエアーミットやらを持ってきた事があった。
当然の事ながら、格好の玩具を与えられた生徒達がどうするかは、
想像に難くない。
生徒A「いくぞ~っ!」
生徒B「うっしゃあ!、来い!!」
ボコッ!、ボコボコッ!
生徒B「しゃっ、まだ平気じゃあ!!」
生徒C「今度俺!、俺!が打つ!」
生徒A「受けるの俺ね!」
生徒C「りゃあっ!」
バシン!、ゴッ!
景気良く遊びまくりである。
で、、まあ漫画のような浸透技は我々生徒では出来ない、
という結論に達し、
それはそれで置いといて、楽しいので、
殴り殴られとしていた。
話は替わり、
私の持病の一つに、
神経緊張性の下痢がある。
同じ症状でお悩みの方も多い病気で、
会社の出勤時刻になると下痢が襲うというあれであるが、
(登校拒否みたいなものでもある)
もともと緊張症の私はのべつまくなしにこの症状が起きてしまう。
店屋でものを買うときすら起こったりする。
練習会の終了後にも起きる事が多かった。
練習会終了後のアフターのだべりタイム、
30分、一時間、とかすると、
私 「すいません、ちょっとトイレに‥‥‥‥」
と言って車からトイレットペーパーを取り出し公園のトイレに駆け込む。
私 「失礼しました。」
師匠「用意が良いなあ、いつも車の中にトイレットペーパー入れてるの?」
私 「はい、最近はすぐ下痢になってしまって」
師匠「ふ~ん?」
何か考え込んでいる師匠。
私 「‥‥‥‥どうしたんです?」
師匠「なんか、ここ最近腹を下す生徒が多いんだわ」
師匠の話によると。
最近、アフターを辞退する者、途中で離脱する者、多数なので、
辞退した人間に後で理由を聞くと。
師匠「、なんか用事でもあるのか?」
生徒「いえ、なんだか最近おなかの具合が悪くて‥‥‥‥‥‥」
師匠「何だ、なにか悪いものでも食べたのか?」
生徒「いや~そんな覚えはないんですが」
という会話になるという。
それが、二週間、三週間と続いてさすがにおかしいと思い始めた、との事。
師匠「なんか変だな~、みんな調子を悪くするなんて」
私 「良いんじゃないですか?、基本、武術って自己責任ですし」
師匠「でもな~、練習会としてリスクがあるなら減らしておきたいし‥‥‥‥」
そんなとき、横にいたK先輩が口を開く。
K 「あの‥‥‥‥師匠」
師匠「なんだい?」
K 「中国武術の打撃って体内に浸透するって言いますよね」
師匠「うん、それがどうした?」
K 「このあいだ防具を持ってきてから、みんなバコバコ打撃いれてましたよね?」
師匠「‥‥‥‥‥‥おお!、それだわ」
師匠、ぽんと手を打って納得。
私 「マジですか?、特にダメージとかは感じなかったですけど?」
師匠「試しに、防具を撤収させてみればわかる」
その後、防具を師匠が撤収させるとともに、
全員の体の不調がぴったりと止んだ(笑)
師匠「はい、原因特定~(苦笑)」
K 「ですね~(苦笑)」
これで原因がはっきりした、
結局、打撃は浸透していたわけで、
生徒A「アホだ俺ら‥‥‥‥‥‥」
生徒B「中国武術やってる人間がその原因に気付かないってどうよ?」
生徒C「いや、防具の上から打撃入れたら下痢だなんて、何処の団体でも言ってないぞ」
生徒A「武術誌でも書かれてないな」
生徒B「何?、ひょっとしてうちらが『初』なわけ?」
生徒C「ここの会って、はっきり言って日本では一番の『後進団体』だよねえ」
生徒B「設立して数年経ってないのに‥‥‥‥」
(※今は20年以上経ってます)
生徒C「ちゃんと解ってれば、雑誌でも注意事項で話しが出るだろうし」
私 「いやね、『実践』という意味では、他のレベルが低い可能性がある」
生徒A「どういうこと?」
私 「昔、名門の形意拳3年やってるって人と会って、散手用の鞭手みせたら」
生徒A「見せたら?」
私 「その人、『多分私は貴方に勝てません』って言ってた」
生徒A「え?!」
私 「螳螂拳の教室でやってた技だから、その時は螳螂拳だと思って説明したけど、
よくよく師匠に訊いたら、鞭手って、洪懿祥系の形意拳の技だった」
生徒B「その時って、asadaは拳歴何年?」
私 「‥‥‥‥半年」
生徒A「おいー!!」
以上、一ヶ月近く下痢に悩まされた生徒による、
やり場のない怒りを抱えた無責任発言でありました。




