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説話46 元魔将軍は魔改造する

『おれは帰れるんだな? 山に!』


 サンダードラゴンさんは大喜びのあまりに飛び上がって、ダンジョンの天井に頭をしたたかにぶつけてしまった。


 タンコブはボクの魔法で治してあげたから今は大丈夫んのようだね。



「そうだけど、このダンジョンから飛び出すのはお勧めしないよ? 人間の国だから戦いになるかもしれないね。

 暗黒神って手抜きだからさ、送り込めても送り返せないのよね」


『そんなものは蹴散らせてくれるわ!

 人間など束になってかかってきても物の数ではないわ』


「それでまた捕まっちゃう?

 悪いけどここは人間の国、用もないのに魔王領のドラゴンがここにいるほうが罪になるんだよ?」


『くぅぅぅ……』


「そこできみに提案、ボクの影に入らないか?

 外に出ればどこか人がいないところで開放するからさ、その中にお友達になれるものもいっぱいいるから」


『乗ったああっ!』


 そう。ボクの影は限りなく広がる異空間、そこにはボクを慕う魔物が一杯。


 自分で言うのもなんだけどさあ、大物もいるよ? ウロボロスとかね。



「あっ、そうだ。一つお願いがあるんだけど、依頼を受けているからきみの肝をわけてくれないか?」


『え? それはおれに死ねってこと?』


 おや? 歓喜に満ち溢れていたサンダードラゴンさんがいきなり辛そうな顔で泣き出したよ。


 ――違うよ、殺さないよ。



「大丈夫だよ、そんなことはしないよ。ボクを誰だと思っているんだ」


『え? あんた誰?』


 きょとんとした目でボクを見つめるサンダードラゴンさん。


 あっちゃー、ごめんね? 初歩的なミスをしたね、それならちゃんと名乗ってあげるね。



「元魔王軍序列三位の魔将軍、通り名は地獄の水先案内人であるボクはアーウェ・スルトだよ」


『一思いでやっちゃってくれい! もう死んだってしょうがないよ!』


 あれれ? サンダードラゴンさんが腹を突き出して顔は天を仰いだよ。その両目は閉じられてるけど、涙がポロポロと落ちているね。



 まっいいか、サッサとやっちゃおうと。


 貫手で一気にサンダードラゴンさんのお腹を突き刺す。


 ドラゴンの肝は大きいから、そのまま異空間に取り込んで、同時に極大回復の魔法をかける。手を引っ込めたときには手術というものは完了した。



「ねえ、終わったよ」


『あれ? いま、腹のほうがチクっとしただけど』


「うん。だから終わったよ」


『……』


 サンダードラゴンさんの目が点になってるけど、終わっちゃったものはしょうがない。そうだ、暗黒神から頼まれたこのサンダードラゴンさんへの償いもついでにしちゃえ。



 手をサンダードラゴンさんに当て、魔力走査でサンダードラゴンさんの身体の構造を把握してから、一気に魔力を流し込む。


 よし、両翼の強化は完了したので今度は手足だね。


 次々と身体強化を施していく中、サンダードラゴンさんの骨格や体格が変化してきた。




 目の前にいるのは光輝く黄金色のアークドラゴン。


 サンダードラゴンの少なくても二段階は上の竜族だね。


 たぶんだけど、ダンジョンの魔力を浴び続けている間に、元サンダードラゴンさんのアークドラゴンさんは大量の魔力を蓄積したと思うんだ。それがボクの魔力と融合して、最大限までこのドラゴンさんの強化に繋がったと思うね。



『あ、あのう……これは……』


「よかったね、今日からきみはアークドラゴンさんだよ。おめでとう!」


 硬直したまま動かなくなったアークドラゴンさんにボクはお祝いに拍手してあげた。



お疲れさまでした。

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