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説話38 元悪役令嬢は冒険者となる

「はーい、ここに血を一滴垂らしてくださいね。それにしても大きな胸ですね。たゆんたゆんじゃないですか、お顔も綺麗ですし、羨ましい! キャハっ」


「ワタクシ、獣人さんというのは初めてお会いしたですけど、あなたも中々可愛らしいですわよ」


 受付嬢はラピッド族の女性獣人。彼女はイザベラに簡単な個人情報を登録したカードを渡してから、小さな針が付いた道具でイザベラの指先をチクっと刺して、一滴の血をカードのほうに垂らした。



「はーい、これでイザベラさんもDランクの冒険者ですね、おめでとうございます! くれくれも無茶しないでくださいね。い・の・ち、お大事に!」


「あらそうですの? お礼を申し上げますわ」


「冒険者ギルドの規則を言いましょうか、それとももう知っているんですか?」


 イザベラはチラッとスルトのほうに目を向ける。その視線にスルトが頷くとイザベラは受付嬢に説明を受けることをお願いすることにした。



「ワタクシ、冒険者になるのは初めてですのよ。宜しければ教えて下さらない?」


「きたー! 久々の説明にキュピル頑張っちゃうぞ。キャハっ」



 スルトは冒険者ギルドの規則をパペッポ村出張所ですでに聞いてたので、することがないスルトは冒険者ギルドの中を見物することにした。




 ギルドの中に簡易の酒場が付いていて、さすがにまだ日が高いからか、そこで酒を飲んでいる人は少ない。


 見物しているうちにスルトは大きな看板の前に来ていた。そこには色々と依頼が張り出されていて、その中でもスルトの気を引いたのは二つの依頼。その紙には金色の糸で縁取られている



「へえ、階層地下50層、サンダードラゴンの肝。なになに報酬は白金貨500枚、Sランク限定、期限は至急、達成者は直ちに領主様の所まで。ふーん、こんなのがあるんだ」



 サンダードラゴンは雷を放つ飛龍。


 大空を飛ぶことを好むドラゴンがダンジョン内に閉じ込められたら、さぞかしストレスが溜まっていることだろうと、スルトはそいつを同情してやりたくなった。でも、迷宮に囚われているということは、そのサンダードラゴンがなんらかの罪を犯しているということだ、それなら仕方ないともう一つの依頼に目を移した。



「階層地下不明層、ダンジョン踏破、証明できるダンジョンコアの提出。報酬は最低白金貨10000枚、Sランク以上、無期限、達成者は直ちにギルド長の所まで。ということはこのダンジョンはまだ未踏破ということだね」


「そういうことだ、小僧」



 スルトは声がするほうに顔を向ける。そこには歳を取った耳が長いお爺さんが立っている。なんらかの民族衣装を着ているそのお爺さんは、その特徴的な耳からして、さしずめ彼は森の人エルフ族とスルトは認識した。



「小僧、おぬしはなにもんだ」



 お爺さんはすごい警戒した目でスルトを見ているので、たぶんスルトが持つ桁違いの魔力をこのお爺さんに読まれていると考えた。森の人エルフは魔法に長け、不思議な目を持つとスルトは大昔に対峙したことを思い出した。


 それならスルトも別に隠し立てすることはない。



「きみがどう足掻いても到底及ぶことのできないものだよ」



 それがスルトのお爺さんに対する答えである。



お疲れさまでした。

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