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説話22 元魔将軍はポーション作りをとちる

「待て、道具屋。そんな荷物をまとめてどこに行くんだ」


「……修行の旅に出る……」


 ウェリアルさんは大きなリュックを背負った道具屋さんの肩を掴んで離さない。ボクは言うと、横で小さくなり、ナタリーさんから頭を撫でてもらって慰められているところです。



「バカな、この村にお前がいなければポーションの作り手がいないじゃないか!」


「じゃあ、お前がおれに教えてくれ、このハイポーションの山はなんだ? どうやったらおれが眠ってる間に数百本のハイポーションができるんだ? どうしたら薬草だけでハイポーションが出来上がってしまうんだあああああっ!」


 道具屋さんの魂による絶叫が道具屋の作業場を響き渡っていく。




 わかってるんです。雑念が入ったために概念固定が僅かだけど狂ってしまった。そのためにポーションじゃなくてハイポーションを大量に生産しちゃいました。



 でも悪いのはボクじゃない、マスハラが悪いんだ。あいつがモフモフなんて言わなければボクもそこでそれを想起することはなかったんだ。そうだ、マスハラが悪いんだ! そう言えばあいつは同等の相手と戦いたいって言ってたなあ……



 ここに来い、マスハラあっ! ボクが相手になってやるよ。今度は後ろからじゃなくて正々堂々と正面からやってあげるよ! 元とは言え、魔王軍序列三位、地獄の水先案内人であるボクの本当の恐ろしさを思い知らせてあげるから、最強初代召喚勇者たちを真っ向勝負で退けたその力を遺憾なく示して、今すぐバトルってやつをやってあげるから帰ってこーい!



 ただの八つ当たりだけどね、しゅーん……マスハラ、賢者ナリタとの恋は成就したかい? 頑張れよ。




「ハイポーションなら領主様も喜んで買い占めてくれるはずだ。それよりスルト、お前さんはこの村に住むつもりはないんだな?」


「はい、ありません。色んなところを回りたいんです」


「わかった……おい、ナタリー、そのぐらいで勘弁してやれ。あいつの逃げ癖は叩いても治らんから」


「ふぅふぅ……はい、あなた」


 ボクがウェリアルさんと話している間に、ナタリーさんは愛の説教と言う名のもとで、店に売られる棍棒で道具屋さんを折檻してた。なんでも道具屋さんはナタリーさんの従姉弟で、子供の頃から面倒を見ていたとウェリアルさんが教えてくれた。


 それならとボクも介入することはできない。なんだってこれはきっと勇者たちが言ってた教育ってやつですからね、うん。



「いいか? スルトは薬草からハイポーションを作れることはこの場いるものの秘密だ、絶対に外へ漏らすなよ。これはハッキリ言って異能だ。こんなことを知られてみろ、スルトは王国に捕まるぞ。ここにあるハイポーションは領主様にさばいてもらう、領主様ならなにも言わんだろうから」


「はい、あなた」


「わかった」


 うーん、よくわからないけどどうやら薬草からハイポーションを作り出せないらしい。そんなことはないけどなあ、薬草はあくまで効能をもたらすもので、魔力こそが回復薬を作り出す決め手なんだ。


 あっ! ボクの魔力は人間と比べてはいけないんだ。そもそも所有する魔力量が決定的に違うんだね、勉強になったよ、うん。



「スルトもこんなことをほかのところでするなよ、今日はなかったことにするからな」


「はーい、わかりました」



 どうであれ、こういうふうに他人から気を使ってもらえることは嬉しいこと。ウェリアルさんに感謝だね。



お疲れさまでした。

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