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65 始動9

『……ば、爆発上限?』


 男は左眉だけを吊り上げた。

 わざわざ説明する必要はないが、まだ男の注意を引く必要がある。ソウヤもそれを理解している。


『可燃性ガスには爆発範囲ってのがあってだな。薄すぎても濃すぎても爆発しないんだ。ちなみにプロパンガスの爆発範囲はだいた二パーメントから十パーセント。常にボンベからガスが流出する閉鎖された空間で濃度を薄くすることは難しいだろ? だから濃くすることにしたんだよ。オレの仲間が空調の配管を通してガスをガンガンこの部屋に送り込んでいる。つまり、今のお前は残念ながら百円ライターを握りしめた……、ただのロリコン野郎ってことだ』


 真実を告げられた男は愕然とした表情でソウヤを見つめた。


『ち、畜生ォォォォッォオッ!』


 叫び声を上げた男はライターを投げ捨てる。隠し持っていたサバイバルナイフを取り出し、奇声を上げながらソウヤに向かって突進してきた。


「今です!!」


 私が善吉に指示を飛ばすそのタイミングを見計らっていたように、彼は窓ガラスが蹴破って室内に突入した。

 勢いを殺さずそのまま男に体当たりする。男は吹き飛ばされてピアノに衝突した弾みで転倒した。善吉は追撃の手を緩めない。男の背中を膝で抑えつけ、腕を捩じり上げる。


『イーグルよりスワン、制圧完了』


「りょ、了解……。直ちに少女を保護して、現場からた、退避してくだしゃい」


『了解』


 肝心なところで噛んでしまった。それでも上出来だ。今のはかなり司令官ぽかった。



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