56 初陣7
スイッチを切り替えた私にタイチョーが敬礼で答えた。
「膠着しています。外からの呼び掛けには反応しますが、『武装を解除したSCARの隊員をよこせ』と繰り返しています」
「ガスが尽きるのを待ってから突入すればええんちゃうか?」
興梠さんの意見に烏丸さんが反論する。
「いや、被疑者が剤をどれくらい用意しているか不明だ。優先すべきは生徒の早期救出、オレは司令の作戦が一番良いと思う」
「異論はない」とフルハーネスを着装しながら善吉は言った。
「みなさん、作戦については烏丸隊員からメールでお伝えした通りです。なにか質問はありますか?」
私が隊員たちを見まわしていくと興梠さんがひょいと手を挙げた。
「メール本文については了解や。けど、件名の『ロリコン殲滅作戦』ってなんやねん……もっとセンスええ作戦名はなかったんか」
「なんのことですか?」
怪訝そうに眉根を寄せた私は、問うような視線を烏丸さんに投げかける。
「覚えやすい作戦呼称があった方がいいと思ってさ」と烏丸さんは肩をすくめてみせる。
「まったく……、勝手な行動は慎んでください」
私は大仰に息をついてみせた。もちろん演技だ。
お、今のはかなり司令官っぽかったかも、なんて自画自賛してみたりする。ついでに、どんな作戦名だろうとソウヤが名付ければ無罪である。
ましてや、ロリコン殲滅作戦なんてセンス抜群で最高じゃないの。
「この役割分担の理由は?」今度はタイチョーからの質問だ。
「本人の希望です。必然的に残りのメンバーを工作班に振り分けました」
「カラス、善吉、お前ら抜け駆けしよったな」
興梠さんになじられた善吉は、「こいつとバディーなんて不本意だ」と心底不服そうに息をついた。
「はあ? オレだって嫌だね、お前となんか」
「ほんならお前らどっちか俺と変わるか?」
「「それはもっと嫌だ」」
見事に声を揃えた二人は、思わず顔を見合わせ同時にメンチを切る。
「それでは『ロリコン殲滅作戦』を開始します」
角突き合う二人は無視して私は神妙な面持ちで命令を下す。
「それは採用ですか……」
タイチョーから冷静なツッコミが聞こえてきた。




