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55/66

55 初陣6

 飛び立ってから僅か十分足らずで八王子市内の公園に着陸した。そこから中学校までは、待機していたパトカーに乗って移動する。立てこもり犯を刺激しないようサイレンも赤色灯も点けていない。


 住宅街を抜けて道路を封鎖する規制線を潜ると、緊急車両が中学校の敷地を囲むように長い列を成していた。

 パトカーを運転する警察官の情報では、グラウンドの先に見える校舎の四階、東角の音楽室に犯人と人質がいるとのことだ。窓はカーテンで覆われ、中の様子を確認することはできない。


 私と烏丸さんが正門前に設置された指揮所の前でパトカーを降りると、指揮所の一角では既にSCARのタイチョー、善吉、興梠さんが顔を揃えていた。化学防護アサルトスーツを着装し、空気呼吸器やボディアーマーなどの装備で身を固め、準備万端の状態だ。


 今回のように勤務時間外で招集された場合の装備は、四機関(警察、消防、自衛隊、海保)から貸し出される協定が結ばれていて、事件が発生した現場から最も近い署所、または駐屯地や基地から装備一式が運ばれてくると、ヘリの中で私は烏丸さんから教えてもらった。


 指揮本部の作戦卓の横に広げられた敷布の上には、警察や消防隊が用意した資器材の数々が並べられている。


 パトカーから降りた私を見た興梠さんが口笛を吹いた。


「なんや司令官、カラスとふたりして出勤なんてデートでもしとったんか?」


 ぷいっと顔を背けた私は、「状況はどうですか?」と彼を無視してタイチョーに尋ねる。


 Aランチ上田からは何もしなくていいとは言われているが、他機関の眼があるこの現場では、司令官として最低限の振る舞いをする必要がある。


 ――落ち着いて、あなたがやるべきことは演じるだけ。作戦実行はSCARのみんながやってくれる。


 なりきれ……、なりきれ……、なりきれ……。


 ここは乙女ゲーの世界、設定は現代、主人公は特殊部隊の女司令官、攻略対象はイケメンの隊員たち――。


 さあ、ゲームを始めましょう!




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