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54 初陣5

 私がそう告げるとサムズアップで答えた烏丸さんは機長と交信を始める。


「機長、管制を通して警視庁に伝令を願いたい」


「了解」


 すっと烏丸さんは息を吸い込んだ。


「警視庁に通達、現場の警察官を校舎から退避させ、説得は校庭から行うよう指示、それから防爆仕様以外の装備の使用を禁止とする。以上、厚生労働省特殊テロ対応救難隊司令官」


 烏丸さんは私の代わりに司令官としての命令を出してくれた。ほっと息を付いた私に烏丸さんはウインクする。


 キュンと胸がときめくと同時に私は察した。

 まさか彼は私のために一芝居うってくれたのでは?


 この業界は上意下達が原則、上からの命令でないと組織は動かない。烏丸さんはそれを分かった上で他のクルーたちの手前、敢えて私に指示を仰いで下命を受けた演技をしたのではないのだろうか? 

 きっとそうだ、そうに違いない。気配りのできるソウヤがステキ過ぎて萌え死んでしまう。

 

「だけど、いくらご指名だからって仕切りたがり屋の警察がオレたちにお鉢を回してくるのも気味が悪いな」


 烏丸さんは眼下に広がる街を見下ろして独り言ちた。


「もっと上からの指示でしょう……。試験運用とはいえ発隊させたからには実績を残す必要がありますからね」


 彼に合わせて私はなんとなくそれっぽいことを言ってみる。

 せっかくソウヤがお膳立てしてくれたのだ。ちょっとは司令官っぽいことを言って役に立たないと。

 私の仕事はキャリアを演じることだ。もうやるしかない。とことん司令官を演じ切ってみせる。


「ああ、そうだな。オレたちSCARは今後もこういった事案に対応することになるだろう。どっちにしてもこれがデビュー戦だ。オレたちの存在と活躍が世間に知れ渡ることになる」


「はい……。あ、あの……ひとつだけ質問してもいいですか?」

「どうした?」

「もし私の作戦? ……が失敗した場合どうなりますか……」

「爆発して犯人もろとも人質も吹っ飛ぶだろうな」


 ――責任が重大すぎる件!!!

 




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