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52 初陣3

 烏丸さんが手際よく私の身体にフルハーネスを装着していく。ベルトを引いてサイズを合わせた後、同じように自分のハーネスを身に着けた。


「互いのハーネスを連結させるから、もっと近くに寄ってくれ」


 正面に立つ彼が私を見つめている。自分の顔に熱を帯びていくのが分かる。


 このままではラチが開かないと思ったのか、彼は私の手首を掴んで強引に引き寄せた。さらに腰に手を回してグッと引き寄せられて互いの体が密着する。


「――ッ!?」


 顔が! 体が! 近いッ!!!


 烏丸さんは手早く自分のハーネスと私のハーネスを、続いてケーブルのフックに連結させると、くるくると指で円を描いて「上昇開始」の合図を送る。

 ほどなくしてホイストケーブルが上昇を始めた。足が地上から離れていく。


「ひっ!」

「大丈夫、力を抜いて。リラックスリラックス」


 烏丸は二ッと笑って見せた。その笑顔に肩の力が抜けていく。私は大人しく彼に体重を預けた。


 完全に脚が離れて浮き上がり、徐々に昇っていく。

 

 今の状況と言いますか、現在の私たちの体勢について解説しましょう。

 私の太ももが彼の体幹、下腹部を挟んでいる状態である。

 つまり私の股の間に彼がいるのだ。


 これじゃあ……、まるで大人の体位みたいじゃない……。


「本来は逆になるんだけど、俺が司令の体を足で挟むってのも抵抗あるから……」彼は少し気まずそうに視線をそらした。

 

 だからってこの体勢はいかんともし難い! 妙な妄想やもなしだ!

 

 私たちの体は風に揺られてゆっくりと回転を始めた。視線の高さがやしろを超え、視界いっぱいに山々を望むパノラマビューが広がっていく。

 青空に映える雪化粧と紅葉が相まった景色は正に絶景。身震いするほど壮観だ。

 

「きれい……」

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