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八重洲の悪夢、それは東京駅八重洲地下街で起こったテロ組織【AIU】による爆破事件だ。
この事件によって自爆したテロリストもろとも内部進入していた警察官、消防官、多数の要救助者を合わせて死者九百六十八名、二次汚染を含めた負傷者八千五百二十名にも及ぶ未曽有の大惨事となった。
メディアでは集団自爆テロとして報道され、ネット上ではテロリストのリーダーが仲間に集団自殺を命じたのではないかと言う噂がまことしやかに囁かれた。
ネット住民たちによれば、テロリスト集団にとってカリスマ的な存在である指導者が、地下街を都市ガスで満たして爆発するように命令し、自分へと繋がる証拠と一緒に信者たちを処分したのではないかという。とんでもなく気が狂った話だ。
事件から五日後、テロリストからの犯行声明がインターネット動画投稿サイトにアップされた。
「――それで、今後発生し得るテロ災害を未然に防ぎ、被害を最小限に食い止めるために政府は関係機関から各分野のスペシャリストを集め、厚生労働省にCBRNEテロ専門部隊スペシャル・カウンターテロリズム・アンド・レスキューチーム、『SCAR』を発足させた」
語り終えた彼はやっと自分のコーヒーに口を付けた。
そしてその後、こう告げた。
「俺さ、あの事件で母親と妹を亡くしたんだ」
「……え?」
携帯電話が鳴り響いたのはそのときだった。私のではない。烏丸さんがスマホをポケットから取り出して耳に当てた。




