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42 休日とデートとトレーニング2

「男尊女卑に救われたとでも?」


『あなたも先任者たちと同じ目に遭いたいのですか? やめておいた方がいい、あれは拷問です。とにかく、彼らを刺激しなようにしてください。あなたに何もしなくていいと言ったのであれば、何もする必要はありません。一年間、大人しくしていてください』


 そんな職場に私のようなか弱い乙女を送り込んだのはアンタだろう……、まさに鬼畜の所業だ。

 そんなに彼らが憎いなら司令官を変えずに隊員たちを辞めさせて新しいメンバーに入れ替えればいいのに、それができない理由があるの?


「いえ、私にも思うところはありますので私なりにやってみようかと思います」


『余計なことはしなくて結構です』


「それは契約にはありません。仕事を受けた以上は私のやり方でやらさせていただきます」


『ですが……』


「このままだと私は私の休日を迎えられませんので」


 私の座右の銘は、【適度な労働は至福の時間を過ごすためのスパイスである】だ。

 サウナを限界まで我慢した後の爽快感を味わうように、私は敢えてストレスを溜め込むことで休日にさらなるブーストを掛けている。

 今の職場は私にとって適度とは言い難い、明らかにオーバーワークだ。それでも投げ出したくない。


『私の休日?』


「いえ、なんでもありません。気にしないでください。それでは失礼します。なにかあればこちらから連絡します」


 私は電話を切った。ふと視線を上げると開けっ放しになっていたドアの前に善吉が立っていた。


「っ!?」 


 スッピン状態の私は咄嗟に顔を両手で隠す。昨日も見られているけど、シーリングライトの下で見られるのは恥ずかしい。


「あー……、盗み聞きするつもりはなかった。ドアが開いていたんだ。それから一通り周囲を警らしたが不審者はいなかったぞ」


「そう……ですか、あ、ありがとうございました……」


 顔を隠したまま私は頭を下げた。


「なあ、今の電話の相手って……」


「えっと……、厚労省の本物のキャリア官僚です。聞いていたならそういうことですので、私は私でやらせてもらいます……」


 善吉はふんと息を付き、「勝手にしろ、やれるもんならやってみろ」と微苦笑を浮かべて踵を返した。


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