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41 休日とデートとトレーニング

 閉店間際の誰もいない銭湯の浴槽に私は浸かっている。


 怖かった……。

 あれは気のせいなどではない。私は誰かにストーキングされていた。善吉があの場所にいなかったらと思うとゾッとする。


 でも、なぜ? 今までこんな経験はなかった……。

 今までと違うことがあるといえば転職したことだ。思えば私の身の回りで変なことが起こり始めたのもその頃からだ。アパートも不審火だって大家さんは言っていた。

 まさか私がSCARの司令官だから狙われた? 相手はテロリスト?? そんな馬鹿な……、だって私が司令官だと知る人間はごく一部のはず。


「ふぅ……」


 私は首をもたげた。湯気が天井に昇っていく。


 考えても仕方ない、今はゆっくり休もう――。



 スマホが鳴ったのは、居候させてもらっている自分の部屋に戻ったときだった。

 発信者は人事課の上田だ。互いの携帯番号はメールでやり取りする際に交換していたが、こんな時間に電話を掛けてくるなんて常識を疑う。

 しかし、無視する訳にもいかず私は電話に出た。


『勤務二日目、お疲れ様でした。新しい職場には慣れましたか?』


 開口一番に彼はそう言った。


「言いたいことはたくさんあります……」

『そうでしょう』

「そうでしょうって……」

『彼らと上手くやっていけそうですか?』

「さあ、どうでしょう……。ただ、事前に聞いていた話と違って彼らは色々と教えてくれますよ」

 

 ほお、と彼は感嘆するように息を付いた。


『それは僥倖です。やはりあなたを送り込んだのは正解でした。彼らはあなたをどう扱うか決めあぐねているようです』


「どういうことですか?」


『今までは二日目で潰されていましたから』


「潰されていた?」


『あなたの先任者は精神的にも肉体的にも追い込まれていました。隊員たちは自分たちと同等の知識と体力を司令官にも求めたのです。しかしながら、あなたが女性だという理由でスルーされているようです』


 カチンときた。まるで私が苦労していないみたいな言い草だ。彼らと向かい合おうと心に決めたのに、水を差されたみたいで気分が悪い。





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