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34 選択肢は突然に7

「しかし、あまりへりくだりすぎたり、距離が近すぎるのもよくありません。指揮系統があやふやになります。上に立つ人間は、立場にあった言動が求められます。全員分の洗い物はやり過ぎです、今後はご注意を……」


 私の左手を掴んでいた彼の右手が私の顎をそっと掴み、クイッと持ち上げた。

 彼の瞳に私の顔が映り込む。表情を強張らせながらも瞳を潤ませ頬を朱く染めている。自分にこんな顔が出来るのかと冷静に戸惑いながらも抵抗できない。


 王子様みたいな甘いマスクにモデル並みの高身長、鍛えられた体を持ったイケメンの顎クイ、これに抗える女子がこの世界にいると?


 彼の顔が近づいてくる。私の目がぐるぐると回り出す。


 だ、ダメよ……正気を保って、千鳥――。


 ここは現実でなない、私にとっての非現実の世界。そう、ここは乙女ゲームの世界、私は特殊部隊を舞台にしたイケメンを攻略する乙女ゲームの世界に入ってしまったの……。

 この人はただの攻略対象、攻略対象、攻略対象、こうりゃくたいしょう――、いつものようにやればいいだけ。


 状況に応じた選択肢を選べばいい。さすればルートが開かれる。


 あれ、なんだか落ち着いてきたかも?


 私の脳裏にゲームのような選択肢が現れた。


【このままキスを受け入れる】

【頬を叩いて拒絶する】

【手で彼の口を覆って塞ぐ】


 さあ、今こそ選択肢を選ぶのだ白城千鳥!!


 私はタイチョーの手を跳ね除けると彼の頬を思いっきりひっぱ叩いた。キッと睨みつけて毅然と言う。


「私は司令官です。具申は受けますが指示は受けません。私のやり方でやらせてもらいます」


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