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29 選択肢は突然に2

 私は自作の地図を見ながら基地内の食堂に急ぎ足で向かった。

 

 この時間はSCARのメンバーたちが食堂で昼食を取っているはずだ。麻婆丼を勝手に食べた犯人はメンバーの中のいる。だって基地には関係者しか入れない。外部の人間が入ってくることはまずない。


 一番怪しいのは、私が出勤する前に司令官室にいた興梠森鷹だ。しかしそのとき、まだ麻婆丼は私の鞄の中にあった。

 

 おそらく彼は私が基地を探索中に再び司令官室に忍び込んで麻婆丼を食べたのだ。

 

 許すまじ!!


 勢いよく食堂のドアを放つと、なにやら香ばしい独特の匂いが漂ってきた。私のお腹がきゅるりと可愛く鳴く。

 メンバーは全員揃っている。ひとつのテーブルを囲む彼らの視線がドアを開けた私に集まった。烏丸さんと目が合った瞬間、思わず目を逸らしてしまう。


 ダメだ。やっぱり直視できない……。

 

 目を逸らしたことを誤魔化すように私は、興梠さんの前へと歩いていった。


「なんや怖い顔して?」

「……私のお昼ごはん、勝手に食べましたね?」


「はあ? なにいっとんねん、マーボーなんかくってへんわ」


 しっかりくってんじゃねーか!


 胸ぐらを掴みそうになった私は、なんとか堪えて溜め息を吐いた。


「どうしてくれるんですか……。これでは夜まで持ちません」


 恨めしげに興梠さんを睨むと彼は肩をすくめる。


「心配ない。ここでは基本自炊で、昼メシを交代で作っててな、司令官の分もちゃんとあるから早く座れ。今日は俺のスペシャルメニューや」


 各人が座るテーブルに人数分のお椀が並んでいる。湯気立つお椀の中身はうどんのようだ。


「うどん? たこ焼きじゃないんだ……」


 私のセリフに興梠さんが眉根を寄せる。


「あのなぁ、関西人やからって三食たこ焼きくーとる訳ないやろ、朝だけや」

「そうなんですね」

「っておい、ボケとんのやツッコまんかい! ここは『毎日くっとんのかい!』やろ!」

「……ええ」


 めんどくさいなぁと思いつつも私は空いている席に付く。

 すぐに私の分を用意してくれた興梠さんが私の前にお椀を置いた。熱々のツユの中に油かすと刻まれた小葱が浮いている。


「タヌキうどんですか?」

「アホ、かすうどんや」


 けっきょく関西料理じゃん……。

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