22 祝・イケメンに囲まれました。3
朝一番に着任の挨拶をした会議室でミーティングが行われた。
進行は隊長が全部やってくれた。私はただいるだけで最初と最後にチョロっと挨拶をするだけで終了する。THE置き物である。
彼らの態度は昨日となんら変わらない。赤城善吉は私が偽キャリアンであることを告げていないようだ。もっとも彼らが口裏を合わせている可能性は高い。善吉が言っていたように、神輿を担ぐなら何も知らない小娘を頭に据えていた方が都合が良いのだから。
小娘? 自分でツッコミは止めるんだ、私がダメージを負う。
それから朝ミーティングで興梠森鷹の他に初顔合わせとなるメンバーがもう一人いた。
医師資格を持つ陣野継巳である。他のメンバーより長めのヘアスタイルをした彼は写真よりもさらに女性的な見た目をしている。ミーティングの後に「よろしくね」と、ほわっとした微笑みと共に声を掛けられた。
ちょっとミステリアスな雰囲気はあるけど、この職場で唯一の癒し系かもしれない。
王子様系、クール&ワイルド系、俺様系、爽やか系、そしてミステリアス系。
ああ、田舎のお父様、お母様、千鳥は今だかつてないほどイケメンたちに囲まれております。
そして隊長の号令で解散した後、私は会議室にポツンと取り残される。本日の予定は午前中に事務処理、午後は訓練とのことだ。ざっくりとした説明だったけど、どうやら個人で担当する些末な業務があるようだ。
私に与えられた仕事はない。このまま司令官室で定時まで閉じこもることもできる。
スマホでゲームをやるもよし、推しのライブ映像を観るもよし、Web小説を漁るも良し、やりたい放題の素晴らしい職場環境である。
しかし、ここが恋愛アドベンチャーゲームの世界ならば主人公である私はイベントを求めて動き回るところだ。そうしなければ物語は進まない。
……うむ。
どうせなら、この非日常的な環境を乙女ゲーの世界と見做して楽しんでみてはどうだろうか?
そう思い込めば、いけ好かない俺様の善吉だって不思議と可愛く思えてくる。
と、言うことで私は部屋を出て基地内をうろつくことに決めた。




