20 祝・イケメンに囲まれました。
部屋に戻った私はスーツに着替えて家を出た。
善吉と一緒に出勤するのは、さすがにマズい。一刻も早く準備を済ませて家を出なくては! なんて焦っていた私がいそいそと準備をしている間に彼はとっとと家を出て行った。
通勤電車の中で「SCAR」についてスマホで検索してみる。
「SCAR」、「スカー」、「特殊テロ対応救難隊」、いずれのワードもネット検索では私が求める情報はヒットしなかった。
スカーは試験運用中であり、今はまだ非公表なのだからネットに情報がないのは、当たり前と言えば当たり前だ。
けれど、気になる記事を見つけた。
とあるテロ事件を契機に政府が新部隊を設立するという噂があるというものだ。おそらくその部隊がSCARなのだ。
そのテロ事件については私の記憶にもまだ新しいものだった。民間人を狙った大規模テロ事件、八重洲地下街で起こった八重洲の悪夢と呼ばれる事件である。
都庁に到着した私はエレベータで地下の謎階に向かう。
これって一緒にエレベータに乗った都民がいたらどうなるんだろ……。
そんなことを考えながら、セキュリティをクリアしてコンクリート打ちっ放しの部屋に出る。
昨日、イソギシ隊長から聞いた話ではこの何もない空間は、部隊の運用開始に合わせて隊員が増えたときに正式な執務室になるそうだ。現在何もないのは予算がそこまで回らなかったらしい。
で、何気に司令官室に直接行けるドアがこの部屋の左壁にあったのだ。昨日は気付かなかっただけで、よく見ると指紋認証するパネルがはめ込まれたドアがちゃんとあるけど、部屋と同化していて初見だと判別するのは難しい。
デザイナーズハウスかよ……。
司令官室のドアを開けると、私のふかふか威厳椅子に誰かが座っていた。
「よう、新しい司令官ってのはあんたか?」
その人は私に向かって軽い感じで片手を上げた。
関西特有のイントネーション、ちょっとチャラそうな彼の顔には見覚えがある。
資料にあった元海上保安官の興梠森鷹だ。




