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17 お約束なんて大嫌い!2

 そして現在、四人でダイニングテーブルを囲んでいる。

 テーブルの上に並ぶのは見事な料理の数々だった。

 カサゴの煮付け、カブの味噌汁、ほうれん草の胡麻和え、見事な玉子焼き、炊きたてのご飯、どの一品も味もさることながら盛り付けもプロ顔負けだ。


「どう? 千鳥ちゃん?」

「美味しい、です……」


 ひとり暮らしを始めてからスーパーの半額お惣菜で過ごしてきた私には、こういう温かい手料理が骨身に染みる。もちろん職場で新作メニューを試食することもあるけど、あれはただの味見だ。

 誰かが作ってくれた料理は、やっぱり心がポカポカとした優しい気持ちになる。


「でしょ? この子ね、小さい頃からお料理が得意なのよ」

「そうなんですね……」


「余計なこと言うな」と赤城が釘を刺す。


「あら? 珍しく口答えなんかしちゃって、まったくこの子は昔から恥ずかしがり屋さんなんだから」

 

 そう言って女将さんは赤城善吉の肩をバシンと叩いた。


「ぐっ……」


 何とも言えない空気が流れる。沈黙を破ったのはやはり女将さんだった。


「ねぇ、この子なんてどう? 料理もできるし警察官で収入も安定しているし、好物件だと思うけど」


「は、はあ……」


 いや、もう完全に魂胆丸見えなんですけどー……。シースルーもいいとこですよ。やはり親同士が結託していか、マイマザーめ。どおりでここ最近は、結婚の話題が出なかったのか。


 そして、どうやら善吉はSCARに所属していることは両親に隠しているようだ。一応、まだ非公開の部隊だから守秘義務というヤツだ。


「もうやめてくれ、この人だって困っているだろ?」


 うんざりと善吉は〝この人〟呼ばわりで私にお鉢を回してきた。


 ぷっぷー、いえいえ、別に困ってませんよ。見ていて片腹痛いくらいです。

 

「あなたのために言っているんでしょ! ねぇ、お父さんからもなにか言ってよ!」

「ああ、そうだな」

 赤城父がぽつりと答える。


「ちっ」

 舌を打つ息子、この父子は母に頭が上がらないご様子。


 弱点が判明したのは僥倖だけど、料理が美味しいのが悔しい。私にだって栄養士としての自負があって料理の腕前には自信がある。憎たらしい相手だが料理に罪はない。

 私は黙々と箸を進める。


「そういえば千鳥ちゃんは栄養士さんなんだってね?」


 ギクーッ!?

 

 思わず私は箸を止めた。







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