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第2話 ―帝都の日常・その2(悠・魔道省施設にて)―

エロ注意。

意外と早く書き上げられたので、連続投稿です。

 ジフォールから帰還し、ようやく戻ってきた平穏。

 当面は魔界化の兆候もなく、しばらくは平和な日々を過ごせる――


「……煌星剣サジタリウス!」


 ――はずであった。 


 悠の自棄気味の叫びが響く。

 そこは、悠たちの寝泊りしている宿舎の存する区画から離れた、魔道省の施設内の一室である。

 魔道実験室の用途を持つ、広々とした紫がかった空間であるが、窓一つない内装とその部屋の役割に、悠は精神的な息苦しさを感じていた。

 どうしても、かつての地下の研究所暮らしを思い出してしまうのだ。


 その中央に立ち、悠は神殻武装テスタメントを呼び出していた。

 柔らかな相貌は曇っており、内心の憂鬱さを隠そうともしていない。


「……っ」


 閃光がほとばしり、悠の手には2mにも及ぶ大剣が握られている。

 女子より弱いと評判の悠の細腕は、その超大な刃を片手で保持していた。

 

 ふつと忌まわしい暴力的な衝動が沸き立つが、悠はそれを抑えて周囲を見渡した。

 張りつめた表情、こわばった声で呼びかける。


「これで、いいでしょうか」


 周囲には、何人もの魔道省のスタッフ、そしてルルとレミル、それにべアトリス・アルドシュタイン。

 スタッフ達は興味深そうに、ルルとレミルは心配そうに、ベアトリスはその美貌を険しくさせ、全員が食い入るように悠を見つめていた。

 そのうちの一人から、乾いた拍手の音が響く。


「ふむ、素晴らしい」


 金髪をオールバックにした、帝国の軍服を纏った男。

 能面めいたうすら寒い笑みがその顔に張り付いている。

 この場の責任者である、ラウロ・レッジオであった。


 彼は、悠の神殻武装テスタメントの出現を見届けると、無警戒にも見える足取りで歩み余ってくる。

 周囲から、どよめきが上がった。


「おい、ラウロ!」


 悠の暴走への対処のために呼ばれていたベアトリスが、剣を抜き放ったまま狼狽する。

 だがラウロは、足を止めることなく悠の目の前に立ち、無防備に見下ろした。

 その眼差しにかなりの苦手意識を持つ悠は、わずかに身を竦める。


「問題なかろう。そうだね、ユウ君?」


「……はい」


 制御は問題なくできている。

 煌星剣は、その刀身に極小の流星をまとわせながら、禍々しくも神々しい光輝を帯びていた。


 その神代の剣を、ラウロは冷たくも粘着質な熱を帯びた眼差しで、じっと見ていた。

 語る声も、わずかに興奮しているように聞こえる。


「目にするのは二度目だが……こうも間近で見られる機会があるとは。“夢幻ファンタズム”には感謝をしなければなるまい」


「……っ」


 しゃくな物言いであった。

 レミルが唇を噛み締めて、ルルに気遣われるのが見える。

 ベアトリスも、憮然とした顔をしていた。魔道省のスタッフの中にも、顔をしかめている者がいる。

 だがそんな周囲の反応を、ラウロは意に介した風もない。

 揺るがぬ我をもって、冷酷無比な研究者の眼差しを向けてきている。


「さて、ではデータの収集を開始するとしようか。まずは――」


 ラウロが矢継ぎ早に指示を飛ばし、エリートである魔道省のスタッフ達が淀みなく対応した。

 指示は悠にも飛ばされ、黙ってそれに従う。


 神殻武装テスタメントを研究させること。

 それと引き換えに、悠は資金をはじめとした多くの見返りを帝国から受けることになっていた。

 どうせ半強制なのだから出来るだけふっかけてしまえという玲子からのアドバイスである。彼女から入れておいて欲しいと言われた要望も含め、その大部分が通っていた。

 魔道科学の最先端を歩む帝国にとって、神殻武装テスタメントという存在はそれだけの価値があるようだ。


 そもそも、神殻武装テスタメントとは何か。

 遥か昔より確認されている魔道兵器であり、機械魔道という技術体系の原型ともいえる存在であるそうだ。その人の手によるものとは思えない神がかった外見から、いつしか神殻という呼び名が定着したらしい。

 いつ造られたのか、誰が造ったのか、何の目的で造られたのかは一切不明となっている。

 アリエスの言葉を信じるならば、それは彼女やブラドのような12人の使い手が生み出されたのと同時、アリエス達を生み出した誰かの手によるものなのかもしれない。アリエス達の出自が本人たちですら分からないので、その辺りは断言ができなかった。

 はっきりしているのは、目的が人類に災いをなすことであるという一点。

 アリエスとの会話は、ラウロ達には語る気にはなれなかったが。 


「なるほど、“偽天”はこの原理を――」


 ラウロは満足そうに頷いている。

 ブラドから託されたこの武器を、この男を喜ばせるために使うのは不満であった。

 だが、帝国内での影響力を強めていくことは、ひいては仲間たちを守ることにも繋がるのだ。我慢である。


 悠が危惧していたユギル・エトーンの本体は、どうやらラウロが対処したらしい。死んだのか、捕らえられたのか、それは分からない。前者の可能性が高いのだと思う。


 果たして自分があの許し難い殺人鬼を目の前にしていたら、どのようにしたのだろうか。

 あの場に立っていたのがブラドの遺体ではなく、ユギル本体であった場合に、悠は同じく煌星剣を振るえていただろうか。

 あの夢幻城への戦いを経て、悠はそんな自問を抱くようになっていた。

 もし仲間を助けるために敵を殺さねばならない状況において、自分はそれができるのだろうかと――


「――さて、今日のところはこれで十分か。ユウ君、神殻武装それを収めてくれるかね」


「えっ、あ……はい」


 どうやら、考え事をしているうちにそれなりに時間が経過していたらしい。

 悠は言われるがままに、煌星剣に命令を与えた。

 すぐにその大剣は輝く粒子と化し、溶けるように消え去っていった。


 ちなみに、悠はずっと片手で2mを超える大剣を保持していた。

 それを可能としたのは魔道による身体強化のためであるが、帝国の魔道封じは今も悠たちに影響力を及ぼしている。

 悠は、神殻武装を介して魔道と繋がることで、限定的ではあるが、帝国の封印をすり抜けて魔道を行使することが可能になっていた。煌星剣を出す必要も無い。

 もっとも、例の暴走を思えば気軽に使う気にもなれないのだが。


「ご苦労。後は最後の確認だけか」


「……っ」


 それだけを言って、ラウロは悠の傍から離れていった。

 悠は、陰鬱な表情を浮かべてうつむく。


 最後の確認。

 それは、神殻武装を収めた後の、影響力の確認のことだ。

 夢幻城の脱出中に起きた暴走、それが今回も起きるかどうか。

 またもや、周囲は緊迫した空気に包まれた。


 悠は、黙って唇を噛み締めて立ち尽くす。

 来るかもしれない暴走に怯えながら、その身を震わせていた。


 有事の際には悠を抑える役目をもったベアトリスが、不本意そうな顔をしながらも剣を構えていた。

 私見であるが、彼女はユギルよりも強い。帝国随一、世界でも名の知れた剣の技量は、ブラドとも渡り合えるほどであろう。

 悠が暴走しても、彼女ならば対処してくれるはずであった。


 ルルとレミルは沈痛な表情で見守っている。

 そして――


「うっ、あ……!」


 悠が、身を抱き締めるようにして膝を折った。

 張りつめていた空気が、破裂寸前にまで緊迫していく。

 ベアトリスが、小さく舌打ちしながら一歩を踏み出した。


 が、しかし。


「く、うぅぅ、んっ……!」


 悠は、誰に襲いかかるでもなくうずくまっていた。

 意に反して神殻武装が出現するようなこともない。

 ただ息を荒げ、身をよじらせている。


 周囲は油断せずに事態を見守っていたが、まったく変わらない悠の様子に、やがて空気は弛緩していった。


「……ユウ様!」

「ユウ!」


 どうやら危険がないことが分かると、居ても立ってもいられなかった様子のルルとレミルが、うずくまる悠に駆け寄り、心配そうに覗き込んでくる。


「苦しいのですか!?」

「顔、真っ赤なのだ!」


「ルルさん、レミル……」


 レミルの言う通り、悠の顔はすっかり紅潮していた。

 その瞳は潤んでおり、荒げた吐息は熱っぽく、口の端からは涎が垂れている。

 うずくまった身体は、今ももじもじと身をよじらせていた。


 その様子に、ルルは全てを察したようであった。


「ユウ様、お身体が……疼かれているのですか?」


「……ん」


 悠は黙ってこくりと頷いた。


 一度の深刻な暴走を経て、身体にある程度は耐性が生まれたのかもしれない。あるいは、覚悟して身構えていたからという可能性もあるだろう。

 いずれにしても、以前のような激しい衝動は起こらなかったのは幸いである。


 だが、それを希釈きしゃくしたような熱が、悠の中に滲んでいた。

 それは、以前に第三位階にいたった後に悠を襲った、身体の甘い疼きによく似ていた。


「要するに、今のユウはえろいのだな!」


「言い方ってものがあるんじゃないかな!」


「細かいことにこだわるでない! 何にしても、大事なくて良かったのだ」


「ええ、まったくです」


 ルルとレミルは顔を見合わせて、明らかな安堵の表情を見せていた。

 悠は上擦った声で、抗議の言葉を投げる。


「笑いごとじゃないと思うんだけどぉっ……!」


 くすっ、とルルは笑みを漏らした。

 桜色の唇に指をあてながら、色っぽく、嫣然えんぜんと微笑む。 

 

「あら、私としては、また口実ができて嬉しいのですけど」


「おお……さすがはルルなのだ!」


 ぱたぱた尻尾を振るルルと、テンションが上がっていくレミル。

 悠は、肉食獣に追い詰められた草食動物のごとく、小さな悲鳴を漏らしていた。


「へんたいぃぃ……!」


「ユウ様がお相手だからということを、理解していただきたいものですね?」


 ルルは微笑ましげに声を弾ませながら、悠の鼻をつんと突いた。






 悠が、魔素中毒による発情のような状態に陥る。

 その状況も、想定されていたケースの一つであった。

 それゆえに、対応も極めてスムーズである。


「ではユウ様、お召しものを……」


「じ、自分で脱ぐからいいよっ!」


 そこは、先ほどまでの実験室に通じた一室であった。

 暮らすには不便であるが、寝る分には十分過ぎる程度の広さの空間。

 その中央は出っ張っており、柔らかそうなマットが敷かれていた。まるでベッドである。


「あら残念です。服を脱がされるユウ様の反応もなかなか楽しいのですが」


 するすると、ルルは手慣れた様子で服を脱いでいた。

 適度に引き締まりながらも柔らかさを失わない白い背が露わになる。

 もう見慣れてしまっているが、それでもドキリとしてしまう、綺麗な背中のラインである。


 悠は疼きで震える指でのろのろと服を脱ぎながら、半眼をルルに向けていた。


「ルルさんって……やっぱりこういうこと、好きなの?」


「おや、それでは私がとんだ色情狂ではないですか」


「だって、前もノリノリだったし、今もなんか活き活きしてるし……」


「だってユウ様の反応が、可愛らしくて面白いのですもの」


「えぇぇ……」


 ぱさりと、ルルの衣服が床に落ちる。

 薄いショーツに覆われた丸いお尻、その上の尻尾は上機嫌そうにぱたぱたと躍っていた。明らかに、これからの行為を楽しみにしている。

 だが振り向くルルの顔は、屈託のない笑顔であった。むしろ清楚さすら漂っている。

 涼やかな声も、可愛らしく弾んでいた。


「あのユウ様との一夜は、胸躍る幸せなひと時でございましたよ。私としてはまた味わえるものだと思っていたのですが……ユウ様、私とベッドを共にしても一向に手を付けてくださらないのですもの。女として自信が揺らぎそうになります」


「良くないんだよっ! 付き合ってもいないのにそういうことするのって、良くないんだよっ!」


「私はいつでも構いませんのに」


「僕が構うんだよぉ……前だって」


「ミコ様ですか?」


「……うん」


 4人目である。

 どうしてこうなったと、言わざるを得なかった。

 悠が目指す男性像は、もっとこう硬派な感じである。間違っても節操も無く複数人とただれた関係を持つような男ではない。

 みんな魅力的な女性であり、男としての嬉しさや喜びは感じてはいるが、それ以上に自らを苛む自己嫌悪が悠を苦しめるのだった。


 その全てが、事情がある故のこと。

 だから、次こそは二度とこういうことがあるまいと思っていたのだが……


神殻武装これ、使うたびにこうなっちゃうのかなあ」


「次はより耐性ができているかもしれませんが……可能性としては、否定はできませんね」


「はぁぁ……」


 気が重い。憂鬱であった。

 これがもっと、自らの欲望に忠実な開けっぴろげな性格の人物であれば、福音ですらあったのかもしれない。

 だが悠は、自分がどんどん理想から離れた卑しい人間になっていくような気分を味わっていた。

 脳裏に朱音の顔が浮かぶ。

 いつか彼女に嫌われてしまいそうな気がして、鉛のような陰鬱さが心にへばりついていた。


「大丈夫ですよユウ様、私がいつでもお相手しますから」


 ぴと、とルルが悠の背にくっついてくる。

 彼女の柔肌の暖かさが、直に伝わってきた。

 身体の中の疼きが跳ねるように大きくなり、悠は身を震わせる。


「ル、ルルさん……」


 確かにそうなれば、彼女に頼むしかないのだろう。

 ルルは悪戯っぽい表情で、悠の頬をちろりと舐めた。


「もし私がお相手できない場合でも、ティオがおります。あとは……アカネ様などもお願いすれば許してくれるのでは?」


「あ、朱音は駄目だよ! 他に好きな人いるんだよ!?」


「……そうでしたね」


 何やら意味ありげに笑うルル。

 そしてちらりと背後を一瞥し、苦笑を滲ませた。 


「ところで……そのまま私どもの行為を鑑賞なさる気でしょうか?」


「え?」


「ぎくぅっ!」


 物陰から、幼い声が聞こえてきた。

 何事かと振り返ると、物陰からおずおずと出てくる人影がある。


 小さな少女である。

 銀髪の映える褐色の肌、吸い込まれそうな金色の瞳。

 来ているメイド風の衣装は、彼女の縁者の形見を繕い直したものだ。


「レ、レミル! いつの間に!?」


「ば、バレてしまったのだ……」


狼人ワーウルフの鼻と耳、誤魔化せると思わないでくださいまし」


 レミル・ルシオルが、罰の悪そうな笑顔を浮かべていた。

 つんつんと両手の人差し指を突き合せながら、上目遣いで見つめてくる。


「その、知識はカミラから教えてもらってるけど、本物を見たことないから……一度、見てみたかったのだ」


「み、見たいって……」


 夢人サキュバスである彼女は、興味津々といった様子である。

 金色の瞳は、期待で爛々と輝いていた。


 ルルは苦笑しながら、悠を見つめてくる。

 ほんのり上気した頬に手を当てながら、困り笑顔で口を開いた。


「私はあまりそういう趣味はございませんが……ユウ様が構わないのでしたら」


「駄目だよっ! どんな変態だよっ!」


「えー! けち! 減るもんじゃないしいいではないか!」


「減るよ! 僕の正気度が! ていうかレミルだって駄目だと思ってたから隠れてたんでしょ!?」


「だって、我は夢人サキュバスなのだぞ! 父様やカミラ達を心配させないためにも、早く一人前になりたいのだ!」


「一人前ってそっち!? そっちの意味!? 科学者とかじゃないの!? とにかく、駄目なものは駄目っ! レミルには早いっ! ルルさんお願い!」


「畏まりました……レミル様、失礼を」


「うわーん! ルルならむしろ見られて悦ぶと思ったのにー! 見損なったぞルル!」


「私、レミル様の中でどんなキャラクターになっていたのでしょうか……」


 ルルは裸身をシーツで隠したまま、じたばた暴れるレミルの首根っこを掴んで部屋の外へと引っ張り出していった。

 レミルの罵詈雑言は、ばたん、という無機質な音によって閉ざされる。

 

「……まあ、部屋の中の様子はモニターされているのですけどね。約束通り、男性のスタッフには出払ってもらっておりますが」


「お、思い出させないで……!」


 実験はまだ続いていた。

 この部屋の様子、行われる行為は魔道省の女性スタッフによってモニターされているのだ。

 別にカメラか何かで見られている訳ではなく、通常の魔素中毒による発情との相違点を観測するために魔道的な反応の計測を行っているだけではあるが、それでもひどく落ち着かない気持ちではあった。


「というかルルさん……レミルに気付いてるなら、もっと早く言ってくれてもいいのに……」


「申し訳ありません。私たちを覗くレミル様の反応も面白かったもので。つい興が乗って、もう少し続きまでお見せしてしまおうかな、とも思ったのですが」


 テンション高めに楽しそうに語るルル。

 悠は頬をひくつかせながら、引きつった呻きを漏らした。

 

「ルルさん、やっぱそっちの趣味あるんじゃ……」


「ふふっ、どうでしょうね?」


 ドアを施錠したルルが、はらりとシーツを床に落とす。

 惚れ惚れするほどに均整に取れた白い裸身に、薄桃色の髪がさらりと流れた。


「さて、これで邪魔もなくなりました」


「……うん」


 ルルは、しなりとした足取りで歩んでくる。

 しだれかかるように身を寄せて、くぅん、と子犬のような鳴き声を漏らした。尻尾がゆらゆらと、穏やかに揺れている。

 熱っぽい吐息を漏らす艶やかな唇が、甘い声を紡いだ。


「……私の胸の高鳴り、お分かりになりますか?」


 悠を抱き締めるルル。

 愛おしげに悠の背を撫でながら、ぎゅっと自らの胸を押し付けてくる。

 密着した肌の間で、二つの激しい鼓動が溶け合っていた。

 耳元で、ルルが囁く。


「ユウ様だから、こうなるのですよ?」


「そ、その言い方卑怯だよぉ……!」


 ちろりと、心の敏感な部分をくすぐるような声色である。 

 媚びるような声と肌に撫でられて、悠は昂ぶる感情に身をぶるりと震わせた。

 次はどんなこと言われるのかと、身構える。

 ……分かっていても、きっと反応してしまうのだけど。


「本当に、心が躍って……自分でも驚いています」


 だが続く言葉は、何の飾り気も無かった。

 珍しく、ルルは気恥ずかしげに、ためらいがちに言う。

 はにかむように揺れる声が、悠の鼓膜をおずおずと撫でていく。


「……恋、かもしれませんね」


 悠を見つめる琥珀の瞳が、うっとりと潤んでいた。


「えっ――」


 聞き返そうとする悠の唇を、ルルの唇が柔らかに塞ぐ。

 そこから先は、それどころではなかった。

悠と朱音の料理話は次話で終了です。

次話もできるだけ早く投稿したします。目標としては、遅くとも木曜には。

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