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第21話 ―防衛―

「侵入者は恐らく、“覇軍レギオン”のユギル・エトーンでしょう。そしてあの男が雇ったと思しき“鋼翼ギルド”の傭兵が、12人。現在は4手に別れて城内を探索しているようです」


 カミラの淡々とした説明は、その声色に反して剣呑極まりないものだ。

 朱音は、ごくりと唾を飲み込んだ。

 ティオの手の震えが、伝わってくる。


 “覇軍レギオン”と“鋼翼ギルド”。

 この世界で当面は暮らしていかないといけない以上、基礎知識としては全員がその名を教えられていた。

 それは、反帝国を掲げて生まれた世界最大規模の多国連合による軍事機関、そして、軍事経済の両面で世界中にその影響力を及ぼす武力派遣組織の名である。

 冬馬が、狼狽した声を上げた。


「じゃ、じゃあ……帝国と敵対してるプロの軍人や傭兵が、この城の中をうろついてるってことかよ!?」


「肯定です」


「やっぱ、人殺すのとか躊躇ないッスよね……?」


 百花ももかの引き攣った声にも、カミラは無表情で頷いた。


「それも肯定です。ユギル・エトーンは一月前の攻城戦の主攻を務め、“夢幻ファンタズム”の同胞を数多く殺害しました。“覇軍”でも特に冷酷で知られる男です。元々は連続猟奇殺人犯であったとか」


「う、ウチら出会ったら、殺されちゃうのかな……?」


「同じく肯定です」


 ひっ、と誰かが息を飲んだ。


「だだだ、大丈夫ッスよ! 熱血と根性ででで――」

「モモかみすぎ」


 緊迫した空気の中、省吾が口を開く。

 どっしりとした骨太な声色は、こういう時に皆の浮足立った気持ちを抑えてくれる。


「……目的は何だ? この城か? それともその子供ガキか?」


「両方でしょうが、“覇軍”としては神殻武装テスタメントの方が重要度が高いかと」


「ずばり、ここが目的地ってことか」


 唸る省吾、次なる問いを発したのはルルだ。


「この城内には、あの精神干渉のような他の防衛機構は無いのですか?」


「現在、夢幻城わたしの処理能力の大半をレミル様に振り分けています。次元潜航を解除しても余力は極めて乏しく、本来の防衛機構のほとんどが使用不能の状態です」


「ふむ……」


 ルルが口元に手を当てて、何やら考え込む。

 こういった鉄火場の経験が一番豊富なのはルルである。

 彼女の意見を尊重するべきだろうと、皆が彼女に注目していた。


「……私たちには、もう一人の連れがいるのですが、現在の所在は分かりますか?」


「現在、地下を歩き回っています。この城の構造を調査しながら中枢を探しているようですが、当分は辿り着く気配が無いので放置していますが」


「なるほど……それならば……」


 彼女の中で、一つの結論が出たようだった。

 ルルは、その場の皆を見渡して、声を張り上げる。


「皆様、今の私たちには、二通りの選択肢が用意されています。つまりは、」


 彼女の琥珀の眼差しが、眠ったように動かない悠へと向けられる。


「この場でユウ様を強引に目覚めさせ、この城を脱出するか」


 悠の、そして仲間の命を優先させるか、


「ユウ様方に手を出させないように、この場を死守するか、です」


 命懸けで戦ってでも、悠の想いを優先させるか、だ。


「あまり時間の猶予はありません。1分以内で決めてください。もし一人でも前者の意見を選ぶお方がいらっしゃれば、前者を総意として行動することをお勧めします。私は、皆様の最終的な結論に従わせていただきますので、どうぞ」


「……もし前者を選ばれるようなら、私は全力で阻止します。犠牲の一人や二人はお覚悟を」


 ルルの言葉に、カミラが戦闘体勢を取った。

 室内が、ぎちぎちと剣呑に呻いているような気配がある。

 部屋そのものから睨まれているような圧迫感を、その場の皆が感じていた。


 気まずく静まりかえる室内。

 その静寂を破ったのは、美虎と伊織であった。 


「オレは、戦いたい」

「自分も同じく」


 省吾も二人に追随する。 


「……俺もだ。逃げるのは性に合わねえな」


 そして美虎の取り巻きであり百花とざくろも。


「美虎姉さんがやるっていうんなら、付き合うッスよ!」

「姐さんだけじゃ、攻撃力不安でしょ?」


「……悪ぃな、モモ、クロ」


 悠のクラスメートである冬馬、澪も同意見であった。


「悠には助けてもらってばかりだからよ……力になれるんなら、やらせてくれ」

「それ言ったらウチはもっとだしねー……っしゃ、腹くくった。付き合う」


 残り2人。

 先に口を開いたのは、ティオであった。


「わ、わたしも……今度は、わたしがユウ様を助けてあげたいデス! ユウ様はその娘を助けて戻ってくるって、信じてマス!」


 そして、1人。

 皆の視線が、朱音に集まっていた。

 ティオが、朱音の手をぎゅっと掴む。くりっとした大きな瞳が、不安げに朱音を見上げていた。


 むっつりと状況を見守っていた朱音は深く、深く息を吐き出して、感情の震えを胸から追い出す。 

 目を閉じる悠の顔を見つめながら、


「……で、連中を撃退する策はあるんでしょうね、ルル」


 こうして、その場の総意は決したのだった。

 ルルは満足げに頷いて、自らの案を口にする。





 そして、しばしの後――





「……出てきたらどうだ」


 狼人ワーウルフのガウラス・ガレスは、心拍音と匂いにより、待ち伏せている何者かの存在を察知していた。 

 

 ユギルと傭兵たちは、あの大広間から4手に別れて目的のものを探していた。

 すなわち、“夢幻”の王の実娘である夢人サキュバスの少女。

 希少亜人種とはいえ、どうして“覇軍”がたった一人の少女に執心するのかは知らないし詮索するつもりもないが、それがガウラスが受けた今の依頼である。


 その途中の通路で、ガウラスは待ち伏せに気付いたのだ。

 男。鼓動の大きさ、強さからすれば、かなりの大柄である。

 通路の奥から現れたのは、予想通りの人物であった。


「大したもんだな、狼人ワーウルフの鼻と耳ってのはよ」


 若い男……まだ少年といえる年かもしれない。

 ガウラスほどではないが相当な長身と、鍛え込まれた体躯の持ち主だ。

 その足運びや体の動きには、確かな武の匂いを漂わせている。


 その身に纏うのは、帝国の新型の魔道戦闘服として知られているものである。

 相当に優秀な性能を誇ると、ガウラスは聞いていた。


 その顔立ちは、帝国人のものには見えない。

 つまりは、異世界である地球とやらから召喚された、平和に暮らしていただけの無辜の少年少女。

 臓腑からこみ上げる嫌悪感を隠そうともせず、ガウラスは吐き捨てるように言う。


「……ね。無益な殺生は好まん」


「そうもいかねえよ。意地と面子ってもんがあるんでな……それに、俺が殺される前提ってのは気に食わねえ」


 肩を竦めて言い放ち、少年はゆらりと構えを取った。

 半身をこちらに向け、左手を前に、右手を腹部を覆うように。

 合理的な、武術の構え。


 その構えだけで、ガウラスは少年の武が相当な域に達していることを看破していた。

 それどころか、己の武をもってしても決して侮れる相手ではないことも。

 驚嘆と感嘆を滲ませながら、口を開く。

 

「俺は“鋼翼ギルド”の序列第13位、狼人ワーウルフの戦士、ガウラス・ガレス。貴様の名を問おう」


 上に12人いる、というのは業腹な事実であるが、それでも世界最大の傭兵組織の序列13位である。多少は怖気付き、退くかもしれないという期待はあったが、それはこの男に対する侮辱であったらしい。

 男は、相対したまま静かに名乗った。


「……武田省吾」


 よろしい。ならば当方も躊躇は無し。

 ガウラスもまた、構えを取る。

 狼人の小国に古くから伝わる、伝統的な武術の構えだ。

 ……すでに滅びた小国だが。

 そのために、自分はこんなところで、こんなことをしている。


(……姫様。貴方が知れば、お怒りになられるでしょうな)


 脳裏に浮かぶのは、一人の美しい少女の姿。

 もし生きていれば、今はもう少女とは言えない年齢か。

 そういえば、この省吾という男からは、どこか懐かしい匂いが――いや、まさか。

 雑念を振り払い、ガウラスは語りかける。


「ショウゴ・タケダよ。手向かうというのなら、手加減などという無礼はせん。死んでも恨むなとは言わんが、覚悟はしてもらおう」


「そりゃ結構、俺も気兼ねなくぶん殴れる。そう言う以上、あんたも覚悟はできてるんだろうな、ガウラスさんよ?」


「……はっ」


 奇しくも共に徒手空拳。

 敵手の気性も、嫌いではない。

 久しく感じていなかった、清々しい風がガウラスの胸中に吹く。


「……くぞ!」

「……上等!」


 そして交わされるのは、拳ではなかった。


 響くのは詠唱。

 全力を振り絞るゆえに、出し惜しみなどしない。

 二つの魔法ゼノスフィアが、具象する――






「あららららら、1対2ですかあ?」


 カーレル・ロウは、自らの担当するルートの途中の部屋で、情けない声を上げていた。

 目の前に、二人の少女がいる。


 凛とした美貌の、抜群のスタイルを誇る少女と、

 愛らしい容貌の、森人エルフの少女だ。


「ま、目の保養としては素晴らしいですが……さっきまで、マジでむさ苦しかったですからねえ。あ、ちなみに俺、カーレル・ロウっていいます、よろしく」


 へこへこと挨拶するカーレルに、森人の少女が条件反射のようにぺこりと頭を下げる。


「わ、わたしティオっていいますデス!」


「いいわよ律儀に返事しなくて……」


 気の強そうな少女が、むっつりとカーレルを睨みながら口を開く。


「さっさと帰りなさい。月並みだけど、ここから先は通さないわ」

 

 ティオが、それに続いた。


「カ、カーレルさん! わたしたちは、二人とも第三位階ゼノスフィアデス! いくら“鋼翼ギルド”の傭兵さんでも、勝ち目はありませン!」


 怯えと、そして躊躇いが見受けられる。

 それなりに戦闘経験はあるように見えるが……なるほど、人間相手ははじめてか。

 と、カーレルはこの二人についての分析を得た。


 そんな内心をおくびにも出さずに、頭をぽりぽり掻きながら暢気な声で語る。


「うーん……そうやってご飯食べられたら楽なんですけどねえ……世知辛いことに、それじゃあお兄さん飢えちゃう訳ですよ。そこで、お願いなんですが」


 小首を傾げる二人の少女に向けて、言葉を続ける。


「後生ですから、見逃して通してくれませんかねえ? 土下座でも三回回ってワンでもお安い御用ですよ? こう見えて、子供の頃から近所のおばちゃんに、『カーレル君は三回回ってワンが本当に上手ねえ、この犬め!』って褒められるぐらいの人気者だったんですよ、俺」


「それいじめられてませんカ!?」


 律儀に突っ込むティオ。

 ああ、優しい娘ですねえ、とほっこりしながらも目の前の二人への分析を進めていた。

 ……どことなく、少女の面影にとある人物がデジャブする。


 そういえば名も似ている。“彼女”も森人エルフだったか。この帝国領内で命を落としたと聞いている。墓があるなら立ち寄るのもいいだろうと思っていると、


「悪いけど、交渉事なんて面倒なこと、やる気はないわ――触れ合いたい、繋がりたいと切に願う――」


 少女が詠唱を開始し、ティオもこれに追随した。

 そして、二つのゼノスフィアが具象化する。


「――<絢爛虹糸レイディアント・ブリス>!」

「――<精霊庭園エレメント・クアドリラテラル>!」


「……!?」


 カーレルは、驚愕した。そのへらへらと軽薄な表情に亀裂が入る。

 具象した魔法ゼノスフィア――ティオの詠唱と具象体を見た故の反応であった。

 細められた目から、鋭い眼差しがのぞいたのは一瞬のこと。

 即座に取り繕い、内心の動揺を隠し通した。


 指先から伸びる虹色の糸を操りながら、美貌の少女が宣言する。


「悪いけど手加減なんてしないわよ。退くかどうか、さっさと決めなさい!」


 ティオもまた、四つの具象体と共に、きりっと精一杯の敵意を表現している。

 どうにも可愛らしさが抜けないのは、生来の温厚さゆえのことだろうか。

 

「うーん……マジな話で二人がかりってズルくないですかねえ……ハズレ引いちゃったかなあ、やれやれ……面倒なことです」


 この言葉の意味を、二人の少女は即座に悟ったようだ。

 虹糸の少女の表情に、深い険と――そして、戸惑いが混じっていく。


「……やるってこと?」 


「ま、こう見てもプロなんで。上司に報告できる程度のお仕事はやらなきゃならん訳ですよ」


 ゆらりと、カーレルは手を掲げる。

 二人の少女は、露骨に警戒して身構えた。

 ティオは素人に毛が生えた程度だが、もう一人の方はなかなか体術に精通しているようだ。


「……殺しはしないけど、骨ぐらいは覚悟しなさいよ」


「そりゃどうも、情けが身に沁みますねえ」


 そのまま、無言で相対すること10秒ほど。

 思い出したように、カーレルは言葉を発した。


「ところで、思うんですがね」


「……何よ」


 胡乱げな眼差しを向ける美貌の少女へと視線を向け、


「そこの嬢さんの詠唱……なんかこう、ラブレターの音読を聞かされてるみたいでドキドキしますね? それお仲間にいっつも聞かれてるんですよね? いやあ、甘酸っぱいなあ!」


 ぴしり、と少女が硬直した。

 真顔の美貌は、ひび割れそうに震えている。

 その亀裂から、ドス黒く真っ赤な感情が溢れていた。

 ティオが顔を青ざめさせる。


「や、やめてあげてくだサイ! それアカネのトラウマなんデス! アカネ、落ち着いて――」


「ぶっ殺す……!」


「――無理ですよネ! 分かってましタ!」


 虹糸の少女が、悪鬼の形相で襲いかかってきた。






 放たれた矢が、男の膝を撃ち抜く。


「くそがっ! どこからだっ!?」

「分かないわよ……そもそも暗過ぎて何も見えないのよ!」

「畜生っ、膝が……!」


 10人からなる第二位階ゼノグラシアの傭兵部隊は、阿鼻叫喚の中に叩き落されていた。

 序列こそ持たないが、全員が相応に死線をくぐり抜け、並大抵のことでは揺るがないタフさを備えたプロの傭兵である。


 ……が、今の彼らは素人同然に狼狽えていた。


「がぁっ! ぐっ、肩を……」

「この暗闇でっ、魔道も使わずにっ……どうしてここまで正確な狙撃が出来るんだよっ!」

「今射たれた奴! 方向を教えろ! とにかくばら撒く!」


 堅実に連携を取り、城内を進んでいた時のことである。

 広々とした部屋に部隊が入った瞬間に、辺り一帯の照明が落ちたのだ。

 真っ暗闇に包まれた彼らが動揺したのは一瞬のこと。


 即座に冷静に状況を判断し、隊長格の男が適切に判断を下そうとした、その瞬間。

 その男が、矢に射抜かれた。

 極めて正確に、鋭いやじりが膝を撃ち抜いたのだ。


 そこからは、地獄絵図である。

 部隊のメンバーは次々と戦闘不能に追い込まれ、すでに半数近くが身動きの取れない状態に陥っていた。

 照明を作り出そうとしても、優先的に狙われる始末だ。

 未だ一人も死んでいない、致命傷を負ってもいないという事実が余計に恐ろしい。


「化け物かよ……!」


 もし狙ってのことであるならば、恐るべき狙撃精度である。

 ましてや、この暗闇。

 魔道の補助を用いてのことならばまだ理解もできようが、その気配は一切感じられなかった。

 信じがたいことに、この狙撃手スナイパーは己の身の技量と能力のみで、この魔技を成している。


 では敵手は一体、どうやってこちらの身体の部位の位置まで判別しているのか?

 自分たちの声ではないことは、すでに確認済みであった。

 そもそも声だけでここまで正確な部位の把握ができるものか。


「待てよ……暗闇、狙撃……まさか」

「知っているならさっさと言ってください!」

「今思い出したんだよ! ……狼人ワーウルフだ! ガウラスの旦那と同じ、狼人ワーウルフ……ぎぁっ!?」


 暗闇に潜む、狼人ワーウルフ狙撃手スナイパー――ルルの放った矢が、語りかけていた男の二の腕を貫いていた。

 本当は肩を狙ったのだか、ある名前を聞いたことで、わずかに動揺したためである。

 脳裏に浮かぶのは、一人の知己の顔。

 屈強なる狼人の戦士。


(……ガウラス。来ているのですか?)


 ルルは胸中で呟きながら、しかし冷酷なまでの精度で次なる矢を放っていた。






「ほう……? これは、目標が近いと思って良いのか?」


「……さあな」


「どの道、ここからは通さん」


 夢幻城の玉座の間に、ユギル・エトーンは立っていた。

 そして彼に相対する形で、二人の少女が立っている。


 長身の、頬に傷を持つ少女と、

 黒髪をポニーテールにした、小柄な少女である。

 二人とも、躊躇いの混じった緊張に表情を強張らせていた。恐らくは、人間相手との戦いの経験が浅いか、あるいは皆無なのだろう。


 更にその後ろには、4人の少年少女が同様の表情を向けてきていた。

 前の2人に比べ、魔道の練度は著しく劣っているように見える。第二位階ゼノグラシアかそれ以下か。


 そして、


「やはりお前ですか、ユギル・エトーン」


 褐色の美女――の姿をした、人造知性。

 カミラが、ユギルを玉座の傍らから見下ろしていた。


 ユギルは、虚ろな表情で彼女を見上げながらうすら寒い声を響かせる。


「当然だろう。お前たちを逃がしたのは我が不始末。あの魔道兵器を持ち帰らねば、デュオルグラム卿に顔向けできん」


 “覇天”の名を口にした時、禿頭の巨漢の声に熱がこもった。

 そして、その眼差しにも。

 ほの暗く燃える視線が、カミラを舐めつける。


「どうやら、思った以上に弱体化しているようだな? 妨害があの生温い精神干渉だけとは思わなかったぞ。これは楽に終われそうだ」


「てめえ……この状況でそんな大口を叩けるのかよ」


 1対7。

 ユギルは、7つの敵意をその巨躯に受けながら、平然としていた。

 むしろ、その底冷えのする生気のない眼差しを受けた少年少女たちの方が、引き攣った声を漏らす有様である。

 場の空気は、早くもこの禿頭の巨漢に飲まれつつあった。 


 “ザ・コフィン”の名で知られる“覇軍レギオン”の精鋭は、その丸太のような青白い両腕を広げ、


「強がるな小娘。私の能力ちからは、その人形から聞いているのだろう?」


 己が魔法ゼノスフィアの詠唱を開始した。






「ふむ……どうした、心が折れたかい?」


「まだっ……まだぁぁぁぁっ!」 


 その最中も、悠とブラドの戦いは続いている。

 5つの戦いが、夢と現実の城内で繰り広げられていた――

次話は、ルルVS傭兵部隊、省吾VSガウラス。1個1個の戦闘はあまり長くはならない予定です。

更新は今週土曜の20時です。

書籍版のキャラデザも、今週中にはぼちぼち発表できそう。

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