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序話 ―死合―
書籍版の2巻とは内容がかなり変わってきます。
もし書籍1巻から入っていただけた方がいらっしゃいましたら、その前提でお願いいたします。
空が、脈動している。
そこは魔界へと“落ちた”廃都であった。
その廃都の広場で、悠は己が魔法である十本の剣“斯戒の十刃”と共に敵手と相対していた。
敵手は、魔族ではない。
それは鋼のような体躯を誇る、巨大な蟷螂だ。
粕谷京介の魂の具現、その魔法たる“機甲蟷螂”が、悠を紅い複眼によって睥睨する。
その剣呑な威容を誇る両の大鎌は相対する悠へと向けられ、その刃は悲鳴じみた金切りの叫びを響かせていた。
その姿は、まさに獲物を狙う捕食者の如く。
そしてその後方、蟷螂の主である粕谷京介が、凶相を浮かべて悠を睨んでいた。
大鎌が疾る。
人間の身体など容易く両断するであろう咆哮の大鎌は、何ら容赦も無く悠へと振り下ろされた。
相手は同じ人間であるという躊躇など微塵も感じられない、殺意の一撃である。
迫り来る大鎌を、十の刃が迎え撃つ――
――事の始まりは、これより数日前に遡る。




