侍女と盗人と醤油とソース
ど、どうもお久しぶりです!
1年以上放置してしまい、すみませんでしたーーーー!!
しかも短めです!重ね重ねごめんなさい!!
久しぶり過ぎて話し方とか文章が大分怪しいです・・・お許し下さい・・・
今回は、アンナの『ティムとラブラブ大作戦!』決行のお話です。
≪登場人物紹介簡易番≫
●ローズマリー・・・本作主人公。男の子なんだけどご主人様の命令で侍女やってます。
●アンナ・・・ローズマリーの侍女仲間。ティムを落とす!と息巻いております。
●ティム・・・ローズマリーを見守る会の会長。ローズマリー命。
●デューイ・・・東の塔の衛兵。ザ・巻き込まれ男。
●ガゼル・・・クウェスト商会の門番。ローズマリーの男バージョン、セオ君しか知りません。
●ナナ・・・街の飲食店で働く元気娘。セオとガゼルのデート現場を目撃したことがある。
ではではどうぞ!
「それで、ティムさんはこの後」
「予定があります。それよりローズマリーさん、ここの料理はお口に合いますか?」
「あ、」
「超美味しいです!流石ティムさん!美味しいお店をご存じなんですね!やっぱり出来る男は」
「ローズマリーさん、こちらのディカプの串焼きも食べて下さい。この店の名物で」
「いただきますぅ!や~ん、ティムさんって本当に気も遣えて、す・て・」
「ローズマリーさんは、外食って良くされるんですか?もしよければ、今度一緒にランチでも」
「はい、よろこんで!!」
(凄い……まるで口を挟む隙がない)
話しかけられているはずのローズマリーは、この店についてから一度も会話に参加出来ていなかった。なぜなら、今日ティムを落とすと息巻いているアンナが、ローズマリーに振られる話を根こそぎ奪っていくからである。しかしローズマリーに異常な愛を向けるティムは、ローズマリーにしか話を振らず、それに負けじとアンナが話を奪っていく……という工程が繰り広げられること早1時間……
この激闘を制するのはどちらなのか、という良く分からない部分に注目してしまっているローズマリーだった。まぁ、アンナのお蔭でローズマリーは食事に集中出来ているし、別にティムと話したいわけでもなんでもないので、むしろ願ったり叶ったりである。
ローズマリーと同じく、この1時間まったく声を出すこともなく、黙々と胃に食物を収めている男が一人。幸薄き男、デューイ・マグワイヤーである。
彼は、待ち合わせ場所にオレンジ頭の侍女が来た段階でこの状態になることは分かっていた。アンナはいつもあからさまにティムにアタックしていたから。あ、嵌められたな、と悟った彼は、早々に会話に入ることを放棄し、タダ飯にありつくことだけを考えていた。呼んだ段階で支払いは全部ティムが持つという話になっている。
ちなみに席順は、ローズマリーの左隣にデューイ、正面にティム、斜め向いにアンナ、となっている。ティムはローズマリーの隣が良かったようだが、そうはさせじとアンナが無理庫裏、それことティムの膝の上に座り込む勢いで隣の席を奪取。ローズマリーも拘りなどなかったので、空いていたデューイの隣に腰を下ろしてしまった。その時の恨みがましいティムの視線は、監禁されたことのあるデューイには効かなかった。むしろ
(ザマーミロ)
くらいの心持であった。
傍観者を決め込み大人しく肉を食べていたローズマリーだったが「ごめんよごめんよ~」という底抜けに明るい声と燃えるような赤髪を視界の端に捉え、慌てて俯き身を縮こまらせた。
「おまたせしましたー!当店の看板娘、ナナちゃん特製コラーゲンたっっっぷり閉じ込めちゃいました!びっくり仰天美味ジェラートでぇす!!!女性陣、このジェラートを頼むなんて、お目が高い!」
トントン、と流れるようなサーブ技能を披露するのは、赤髪おさげのナナ――ティムが“安くて美味い店”とローズマリー達を案内したのは、セオがガゼルに連れてきてもらった店だったのだ。
辿りついた時は冷や汗がダラダラと背中を伝い、確実に顔色が悪かっただろうが、他にお勧めの店を知っているわけではなかったし、なんと言ってこの危機を回避していいか分からなかったのだ。
(ど、どどどどどうしようっ!!?もしローズマリーのことを「セオ君」と呼ばれでもしたらどうしたらいいんだ!!?『双子の弟です』とか?いやいや、職場の人にそんな個人情報流れたら面倒臭いことになっちゃうし、そもそもアンナ辺りにすぐにバレそうだし……かと言って『趣味で男装してたんです』なんて、ローズマリーのキャラ的に許せない!折角ここまで清楚なお嬢さん貫いてきたのに!っていうか、あれだけ男です!って言っておいてナナさんが信じてくれるとも思えない!ああああぁぁぁ、どうしよう…………)
と悩んだ結果、知らぬ存ぜぬで切り抜けることにしたローズマリーだった。
勿論、バレなきゃバレないに越したことはないので、こうしてナナが近くに来た時には俯いて顔を隠しているわけだが…………どうにも上からの視線を感じてしまう。
気の所為だ、と自分に言い聞かせていたローズマリーだったが、顔に影が掛ってきたことによって、ついに誤魔化しきれなくなってしまう。
「おい、なんなんだ?」
恐らくローズマリーの顔を見ようと覗きこんできているナナに、ティムが不審そうに声をかける。
「んー、いやねぇ、な~んか、お嬢さんのこと見たことあるような気がするんですよぉ。ねぇお嬢さん、私とどっかで会ったこと、ないですかぁ?」
「あります」とは勿論言えない。
「……いえ、私は記憶にありません」
とか細い声で答えた。その声を聞いて、『ローズマリーを見守る会』の会長は愛しの君が不安がっている、と判断したようだ。
「おい、女。彼女が困っているだろう?変な言いがかりつけてないで、さっさと行け」
格好つけ半分凄味半分でティムが低い声を出すと、彼の隣から「ティムさん素敵ぃ!」という黄色い歓声が上がった。どさくさに紛れて腕に絡みついてくるアンナを丸っと無視して、ティムはどや顔で「もう大丈夫ですよ」とローズマリーにアピールする。
「む~。気の所為かなぁ」と一人首を傾げながら去っていくナナを確認してから、ローズマリーは顔を上げてティムに優しい微笑みを向けた。常であればアンナの前でそんなことはしないのだが(後々恐ろしい報復が待っていることが予想できる)今回は助かったのだから、きちんとお礼を言わねばと思ったのだ。
「ありがとうございます、ティムさん」
次の瞬間、ティムの鼻から血が噴き出した。
その後ティムの鼻血はなかなか止まらず、出血多量で貧血に陥った為帰城することになった。勿論ティムは最後まで納得しなかったが、デューイに手刃を喰らい強制退場させられた(ちなみに支払いは、気を失ったティムの懐を漁り何食わぬ顔でデューイが済ませた)。
デューイに背負われたティムを気遣う振りして、体に触りまっくっているアンナの後ろをローズマリーはゆっくりと歩いて行く。
キン、と冷えた冬の空はどこまでも澄み渡り、輝く星々を惜しげもなく晒している。
その空を見て、ローズマリーが思いだすのは、唯一人。
(――マリアンヌ様)
漆黒のドレスを纏い、今も夜会という戦場で戦っているだろう主人を思うと、こんな所で油を売っているのが申し訳なくなってくる。
(早く帰って、マリアンヌ様を迎える準備をしよう)
ローズマリーは歩く速度を上げ、自分の帰るべき場所へと急ぐのだった。
●おまけ●
「――ん?」
その日も、ガゼルはいつものように門の前で睨みを効かせていた。
今日は王の誕生日ということもあって、陽もどっぷり沈んだ時刻になっても街は賑わい続け、人通りも普段の倍ほどになっている。
そんな混雑している通りの中に、ガゼルは見知った姿を捉えたのだが……
(…………スカート、だったよな?)
オカシイ。自分の思った通りの人間なら、まず絶対に意地でも着ないであろう女物を身に付けていた。
(見間違いか?)
そうも思うが、自分の夜目には自信のあるガゼルだ。しかも目の前の通りという至近距離で見間違えるだろうか、と悩んでいると
「どうした?何か見つけたか?」
相方の門番に声を掛けられた。
「いや……」
「なんだよ。何があるか分からないから、些細なことでも報告し合う決まりだろ?」
「それが……値切り屋が通ったように見えたんだが」
「あー、城務めの坊主か。別に変な事じゃないだろ。お使いかなんかじゃないのか?うちにも顔出すの、ほとんど夜だしよ」
「いや、それはいいんだけどよ、その……スカート、履いてるように見えてな……」
聞いた途端、相方が微妙な顔をする。
「……確かに綺麗な顔してる坊主だが、そんな趣味持ってるようには見えないぞ。むしろ全力で拒否りそうな感じするぜ」
「……そうだよな」
「おう。ま、お前がスカートとズボン見間違えるとも思えないから、きっと人違いだろうよ」
あんなに綺麗な顔がそうそういるだろうか、と思いつつも「きっとそうだな」と返事をしておく。特に業務に支障はないと判断した相方はそれ以上話しかけては来なかったが、ガゼルはその日中、ずっとモヤモヤしたままだった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
誰得なガゼルさんのお話でした。
待っていて下さった皆さま、本当にありがとうございます!!
こんな、カメっていうかナメクジみたいな著者ですが、見捨てずにいて下されば大変嬉しいです。
頑張って書いていきたいと思います!
次回は再びマリアンヌのターン。誕生日パーティはまだまだ続く・・・




