魔導具店
「それじゃ、早速店を探してみるか」
ヴィルはそう言うと早速、アリーナが使う装備品を取り扱っていそうな店を探す。
この辺りは冒険者ギルドに近いから、そういった店は近くにあってもおかしくは無いのだが……。
「この辺りには無いのか?」
近くにあるのはドワーフによる鍛冶屋が殆どで魔法使いや神官の装備品を扱っていそうな店は見当たらない。
「すみません……。私が住んでいた頃と街並みが変わってて……お力になれません」
本来地元なアリーナだが、彼女はこのルミナスフォールが魔王軍に襲われた際にヴィルのパーティーに加わった経緯がある。
魔王に破壊されたルミナスフォールを離れていた彼女にはその後の街の復興経緯が分かるはずもない。
「仕方ない。その辺歩いてみるか」
ヴィルはアリーナに声を掛けるとクロ達も連れて街を歩いて見て回る事にするのだった。
「魔導具店って探すと中々無いモンなんだな」
しばらく街を見回ってみたが大きな通りに面した店はドワーフの鍛冶屋が軒を連ねており、魔術師や神官が立ち寄りそうな店が中々見つからなかった。
「仕方ない。裏通り見てみるか」
雪積もる街中で人通りの少ない裏通りともなると、雪掻きも万全では無い。
足元に気を付けながらヴィルが先頭を歩いて魔導具店を探していると
「ここ……か?」
何とかそれらしい雰囲気の店を見つけたヴィルが店の中へと入っていく。
ーカランカランー
ドアベルが鳴る扉を開けて中に入ってみると、そこには魔術師用の装飾品などが所狭しと並べられていた。
「おう、戦士職が何の用だ? 冷やかしならお断りだぞ」
店に入ったヴィル達に声を掛けてきたのは茶髪で口髭を生やした中年男性だった。
「冷やかしじゃない。神官が使う錫杖を探してるんだ」
ヴィルはそう言うと後ろのアリーナを紹介する様に彼女を前に立たせる。
「そう言う事なら早く言ってくれ。幾つか見繕ってきてやるから待ってな」
店主の中年男性はそう言うと店の奥へ引っ込んでしまった。
「うちにあるのはこれくらいだ。好きなだけ見ていってくれ」
ーゴトゴトゴトンー
店主が奥から持ってきた神官用のロッドや錫杖をカウンターに並べ置いた。
「結構種類があるモンなんだな」
神官の装備品に明るくないヴィルが感嘆の声を上げる。
神官の杖も、皆一様では無く、見るからに鈍器と言える様な物理攻撃に適したモノから式典に使う様な宝石まみれのキンキラキンなモノまで多種多様だった。
「あの……神聖魔法を味方に飛ばせる物はありませんか? 見える範囲で大丈夫ですので……」
アリーナは自分の戦い方を心得ているからか、装備品に求める性能も明確だった。
「そうだなぁ、それからこの辺りだなぁ」
店主が示した装備品の中からアリーナが手にしたのは以前使っていたモノに似た飾りっ気の無いシンプルな錫杖だった。




