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世界を救う勇者なんですが役立たずを追放したら破滅するから全力で回避します。  作者: 大鳳
第一部 魔王討伐編

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傍若無人

「オーガ共、アリーナを引き剥がせよ」

 トマスはスキルによって支配下に置いているオーガに匹にアリーナを拘束する様に命じた。


ーグイッ!ー


「いやっ! 離して!」

 オーガによってトマスから引き剥がされたアリーナは羽交い締めにされている。そして


ービリビリッ!ー


「や、いやあっ!」

 法衣をあっさり引き裂かれ白いブラウスを顕にさせられた。

そんな彼女の胸元にトマスは手を伸ばすと


ーブチッ!ー


「あっ! 駄目っ!」

 アリーナがブラウスの内側に忍ばせていたペンダントを力任せに引き千切った。

「こんなつまんない物なんかに……」

「返して! 返して下さい!」

 トマスは引き千切ったアリーナのペンダントを一瞥すると興味なさそうに部屋の暗闇に向けて放り投げてしまった。

「離して! あれはお母様の……大切な物なの!」

 両腕を捕らえられオーガに羽交い締めにされたままのアリーナは身体を捩らせ何とか逃れようとする。

 しかし、オーガの丸太の様な腕に掴まれたアリーナの細腕はビクともしない。

「トマス、お前は一体……」

 アリーナからの治療が殆ど進まない内に彼女が捕らえられてしまった為、ヴィルは倒れたまま動けないでいた。

 そんな彼がなんとか頭を持ち上げてトマスを見据えながら、彼に目的を問い質そうとするが……

「トマスだぁ? そんなモブみたいな名前で俺を呼ぶんじゃねぇよ!」

 トマスは拘束されているアリーナを見て、下卑た笑いを浮かべながら

「俺の名前は桐崎悠馬。ユーマとでも呼んでもらおうか? ハハハッ!」

 自らをユーマと名乗ったトマスは、拘束されているアリーナのブラウスの上から彼女の胸を鷲掴みにした。


ーギュウゥッー


「い、痛っ! 止めて……!」

 理不尽な痛みにアリーナの顔が苦痛に歪み。

「止めろ……アリーナはまだ子供だろ! 何を考えて……ぐあっ!」

 ヴィルが抗議するが動けない彼はトマスのされるがままだった。


ードゴッ! ドガッ!ー


 頭も身体もトマスに良いように蹴り飛ばされるばかりだった。

「フン、常識人ぶりやがって……異世界の奴等なんて未開人、玩具でしかねーんだ! 大体、力を持った奴が正義なんだから今は俺こそが正義なんだよ!」

 トマスに蹴られ続けるヴィルには反撃の糸口すら見えない。何も出来ずに倒れ伏しているヴィルを一瞥したトマスは

「そろそろ、お前に自分の無力さを解らせてやるよ」

 トマスはそう言うとアリーナを捕まえていたオーガ達に何かしらの指示を出した。すると

「い、嫌っ! やめて……離して!」

 オーガは羽交い締めにしていたアリーナを抱え上げた。必死に抵抗するアリーナを他所に、オーガに丁度いい高さに彼女を持ち上げさせたトマスは

「お前の目の前でコイツを食ってやるんだよ! これがNTRってやつ? アハハッ!」

 勝ち誇ったトマスがアリーナに気を向けていたその時、床に倒れているヴィルの手元に


ーコロコロコロ……ー


(これは……?)

 アリーナに使ったエリクサーの小瓶がいつの間にかヴィルの手元まで転がってきていた。

 ヴィルはエリクサーの小瓶を掴むと、トマスを注視してエリクサーを飲むタイミングを覗う。

「止めて……、離してぇ……!」

 オーガに抱え上げられたアリーナは両足も掴まれ、無理やり足を開かされようとしている。


ーグググッ……ー


「くぅ……いやぁ……」

 彼女は縮こまる様に何とかして足を閉じようと懸命に抵抗していたが


ーガバッ!ー


「いやあっ!」

 オーガの怪力には敵わず、アリーナは両足を大きく広げられてしまった。

「く……そ、身体が……」

 ヴィルは目の前の光景に、手の中にあるエリクサーの小瓶を口元に運ぼうとしていた。

 しかし、身体は金縛りに遭ったかの様に少しずつしか動かない。

「這いつくばってよく見てろよ! 好きなヤツが目の前で犯されていくのをよぉ!」

 トマスは無造作にアリーナのスカートをめくり上げ、彼女の白いショーツに今にも手を伸ばそうとしている。

「いやっ! 止めてぇ! 見ないでぇっ!」

 アリーナの悲痛な声が聞こえてくる中、ヴィルの手はもどかしい程に動かない。自らの無力さを痛感したヴィルは

「トマスッ! お前は最低のクズだな! スキル一つでイキリやがって!」

 大声を上げてトマスを煽り、少しでも彼の気を引く作戦に出た。

「なんだと? 床を這いつくばってるヤツが言える台詞かよ!」

 トマスはアリーナに伸ばしていた手を止めると、ヴィルに向き直って怒鳴り返す。

「へッ、スキルに目覚めたくらいでイキリ倒すテイム太郎なんざこっちから願い下げだ!」

「なんだと! この俺が太郎だとぉっ! あんな奴等と一緒にすんじゃねぇ!」


ーダッ!ー


 ヴィルの煽りがトマスの何かしらの逆鱗に触れたのか、トマスは顔を真っ赤にしてヴィルの頭を蹴り飛ばそうと駆け出してきた。

「死ねぇ!」

 トマスはまるでサッカーボールでシュートするが如くの勢いで迫ってくる。だが……


ーゴロンッ!ー


「な、何だ?」

 何かに足を取られたトマスはヨロヨロと後ろによろめく。足裏に丸く硬い何かを感じたトマスが下を見ると


ーコロコロ……ー


「エリクサーの空き瓶? なんでこんな……」

 エリクサーの空き瓶が転がっているのが見えた。だが、彼がそれを理解するより前に


ーガシッ!ー


「アリーナに謝れ、クソ野郎」

 いつの間にか立ち上がっていたヴィルは、トマスの顔面を鷲掴みにすると大外刈りの様に彼の足を払う。そして


ードゴオッ!ー


「うぎゃあっ!」

 ヴィルは彼の頭を躊躇無く床に叩き付けた。

「アリーナ! 今助ける!」

 次にヴィルはアリーナを捕まえているオーガを相手にすべく、彼がその方向に視線を向けたその時だった。

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