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世界を救う勇者なんですが役立たずを追放したら破滅するから全力で回避します。  作者: 大鳳
第一部 魔王討伐編

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ラスボス戦の禁忌

「魔王さまぁ〜! ご無事ですかぁ〜!」


ードドドドドドドド!ー


 ヴィル達の背後、扉の向こうから大勢の足音と共に聞き覚えのある女の子の声が聞こえてきた。

「小賢しい勇者共め! この四魔将が一人、智謀ルナフィオラが不在の隙を突いて魔王様を討とうなどと……鬼の居ぬ間に洗濯とは片腹痛い!」

 サイクロプスやオーガを背後に従えたルナフィオラがヴィル達の後を追う形で魔王の部屋に雪崩れ込んできた。

 そんなルナフィオラはうまく挟み撃ちに出来たとしてやったりな笑みを浮かべて自信満々にヴィル達を見据えている。

「チッ……」

 存在を忘れかけていた魔王軍の残り少ない幹部の登場にヴィルは舌打ちする。

 まさか、幹部が魔王戦の前に立ちはだからず、ラスボス戦中にバックアタックを仕掛けてくるとは思ってもみなかった。

「魔王様ぁ! やりましたよ〜! これで賢しい勇者達は一網打尽で〜す♪」

 自らの策を嬉々として魔王に報告するルナフィオラだったが

「馬鹿者が! これでは我が孤軍ではないか! お前の本来の役目は事前に勇者パーティーの頭数を減らす事だ! それを素通りさせるとは何事か!」

 確かに挟み撃ちと言えば聞こえは良いが、現状魔王様は誰からの支援も期待出来ないぼっちな立ち位置である。

 彼等の話を聞く限り、今の状況はルナフィオラの独断であり、魔王ケイオスブラッドと意思疎通はしていないらしい。

「皆、今がチャンスだ! ミノさんとアリーナは後ろの奴等を足止めだ! アリーナ、光の壁であいつらを止められるな?」

 魔王とルナフィオラが不毛なやり取りをしている間にヴィルは作戦を立て、アリーナとミノさんに確認する。

「は、はい……! でもどれだけ保たせられるか……」

 アリーナは自身の魔法の光の壁の耐久力に不安を覚えている様だ。だが返事を聞いたヴィルは

「時間が稼げれば良い。俺がその間に魔王に斬り込む。ミリジアとエルフィルは遠距離から援護してくれ。トマスは身を守って適宜道具を皆に配れ!」

 全員に行動指針を指し示したヴィルは長剣を構えると

「いくぞ!」


ーダッ!ー


 勢い良く魔王に向けて駆け出した。

 そして、パーティーメンバー達もヴィルの指示通りの行動に移っていく。

 勇者パーティーが行動を開始したのに気が付いた魔王ケイオスブラッドも反対側のルナフィオラ達もそれぞれ行動を開始する。

「いきなり向かってくるとは……面白い!」

 魔王ケイオスブラッドは向かってくるヴィルに対して大剣を正面に構え、腰を落とす。明らかにヴィルの初撃を受けて立つ構えた。

「お前達、数では上だ! 押し潰せ!」

 一方、反対側のルナフィオラは麾下のオーガやサイクロプス達に突撃を命じる。

 しかし、部屋のいりぐたはあまり広く無いため、そこまで一度に物量を投入する事は出来なかった。

 精々が総数五体程度であり、他は部屋の外の階段で団子状態になっていた。

「あいつらは 近寄らせない 任せろ」

 近付いてくるオーガ達の前にミノさんが両刃の大斧を構えて立ちはだかる。さらに

「我等に加護と万難を排する防壁をお与え下さい……ホーリーウォール!」


ーパアアァァ!ー


 アリーナによる光の壁がミノさんとオーガ達の間を隔てる様に展開された。


ードガッ! ドガァッ!ー


「グオオッ!」

「ウガアァッ!」

 突然現れた光の壁に激突したオーガとサイクロプスはそこて突進を阻まれてしまった。

 床から天井、左右の壁まで展開された光の壁はルナフィオラ達を一時的に無力化する事に成功していた。一方魔王に向かっていたヴィルは

「シャルゲシュベルト!」


ーブォン! ブォン!ー


 掛けながら袈裟斬りからの右薙で二発の真空波を繰り出した。

 ほぼ同時に右後方からはエルフィルが

「風の精霊シルフよ。我が矢に宿りて敵を切り裂け!」

 番えた矢に風属性を纏わせたエルフィルの放った矢が三本同時に魔王へと向かっていく。さらに

「万象の魔力よ、我が手に集いて敵を撃て……マジックミサイル!」


ーシュババババババッ!ー


 ヴィルの後方からはミリジアが唱えた魔力の誘導弾が、それぞれ変則軌道を取りながら緑色の尾を引いて魔王へと向かっていく。

 三人がかりの遠距離攻撃を見据えた魔王が、それらを一瞥すると彼は一笑に付し

「小賢しいわ!」


ーブウウウウン!ー


 腰溜めからの大剣の横薙ぎにより、ヴィル達の攻撃は全て弾かれてしまったのだった。

「はああぁぁっ!」


ーズドォッ!ー


 自身の渾身の攻撃が通じなかったにも関わらず、ヴィルは間髪入れずに魔王の無防備な左側目掛けて突進からの突きを放つ。

「甘いわ!」


ーギイイィィン!ー


 魔王はヴィルの突きすらも片手であしらう様に右腕の籠手で簡単にヴィルの長剣の切っ先を反らしていた。

 だが、魔王の大剣は右側に振り払ったばかり。ヴィルがここが好機と長剣を自身に引き寄せ魔王に斬り掛かろうとしたその時だった。


ードズゥッ!ー


「がっ!」

 魔王が大剣を手放し、ヴィルの鳩尾にボディブローを叩き込んでいた。

 プレートアーマーを着込んでいるとは言え、拳打の衝撃までは無効化出来ない。


ードガッ! バキッ!ー


「ぐっ! ごはあっ!」

 動きの止まったヴィルの身体に魔王ケイオスブラッドの殴る蹴るの暴力が浴びせられる。


ーズザアァァァッ!ー


「ぐっ、かはっ!」

 魔王にしこたま殴られたヴィルは殴り飛ばされた勢いでアリーナ達の所まで床を転がされていった。

「っ! ヴィルさん! 大丈夫ですか!」

 殴られた事による傷と拳打による衝撃で血を吐いているヴィルにアリーナが駆け寄ろうとする。だが

「俺は大丈夫だ! お前は光の壁の維持を続けろ!」

 ヴィルは片手を上げてアリーナを制止すると、腰にある道具入れからハイポーションを取り出して一気に飲み干す。

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