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世界を救う勇者なんですが役立たずを追放したら破滅するから全力で回避します。  作者: 大鳳
第一部 魔王討伐編

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近隣の村へ

 朝食を終えたヴィル達はそれぞれが道具屋で買い出しを行い、必要な物を揃えた上で魔王城へ出発したのだった。

 最初の目的地は以前に魔王軍のルナフィオラ達に襲われたハスヴィルの村だ。

 一日もあれば辿り着けるその村は、ヴィルにとっては中継地点以上の意味は無い。

 また、トマスの走り込みの成果を見るには手頃な目標とも言えた。前回、ハスヴィルの村に向かった時、トマスはあっさり音を上げていた。

 今回は先頭がエルフィルはいつも通りたが、その後がヴィル、ミノさん、トマス、ミリジア、アリーナという並び順にした。

 本当ならトマスは後方が良いのだが、アリーナと隣接させては彼女を困らせる事になってしまうかもしれない。

 いずれにしろ前進する以上は危険なのは前と言う事になる。

それでもヴィルはなるべくパーティー全体の安全に気を配りながら旅を続けるのだった。

 前を歩くエルフィルに異常はなく、まるで散歩するかの気楽さでのんびり歩いている。

 街を出て数時間になるが、荷物量が増えているにも関わらずトマスは普通に歩いている。この調子なら今日の日没までにはハスヴィル村に到着出来そうだ。

 最後尾を歩いているアリーナも何も問題ない。そうこうしている内にヴィル達一行はハスヴィル村近くの森に差し掛かった。

 前回はアリーナがドライアードに襲われるトラブルもあったが、今回のヴィル達は粗相などしていない。

 今回はすんなりと森を抜けられるかと思ったのだが……

「ワンッ!」

「キキッ!」

「クェッ!」

 トマスの魔物三匹からいつものトイレ催促が発せられた。

「トマス、そいつらトイレだ。適当なそこら辺で……」

 そこまで言いかけてヴィルは言葉を止める。この辺りは森の精霊ドライアードの管理下にある。

 そんな場所でクロ達に適当にトイレなんかさせたら……

「あ、アリーナ。すまないが魔法で処理を頼む。出来るだけ街道沿いでな」

 万が一のトラブルの可能性を危惧したヴィルはアリーナに浄化の魔法による処理をお願いするのだった。

「よし、ひとまずここで休憩にしよう」

 せっかくの歩みを止める機会にヴィルはパーティーメンバー達に休憩を告げる。

 ハスヴィル村まではもう目と鼻の先なので休憩も食事したり水汲みに行ったりする程のしっかりしたものではなく、あくまで一休み程度の簡単なモノだった。

「なにかあってら大声で知らせてくれ」

 ヴィルは皆にそう伝えると自身はクロ達の面倒を見る為にパーティーから離れるアリーナの後を追うのだった。



「無垢なる天の息吹をこの地に。穢れを払い……」

 既に浄化の魔法の詠唱に入っていたアリーナだったが、近付いてくる誰かの気配に文言を中断する。

「あ、悪ぃ。俺に構わず続けてくれ」

「ヴィルさん……!」

 近付いてきていたのはヴィルだった。行軍中にヴィルがこうして離れた仲間の様子を見に来るなどこれまではまず無かった。

 ヴィルの姿に安堵した顔を見せたアリーナは再び魔法の詠唱に入ると


ーパアアァァー


 浄化の魔法を発動させ、クロ達の世話をあっという間に終わらせてしまった。

「相変わらず凄いよな、神様の奇跡ってのはさ」

 綺麗に浄化されてしまったクロ達の排泄物を見ながらヴィルがアリーナ達の元に近付いていくと

「女神様の教えでは不浄なモノは病をもたらすとも言われています。自然の中では大地に帰すのが自然とされていますが……森の中は駄目なんですよね?」

 アリーナが神の教えを交えつつ、ヴィルの意向を汲んだ言葉で答える。

 転生者であるヴィルは排泄物が有害な菌などの温床となる事は分かっている。

 一方、文明的に遅れている異世界では菌などの知識はほとんど存在しない。

 しかし、神の教えとして清潔が尊く安全に果たす役割が日常生活においていかに重要かを大々的に布教している異世界と実際の中世とでは人々の意識に違いがある。

 それだけに、ペット等の扱いには異世界と言えど慎重な扱いが求められ、飼い主には高い防疫意識が求められている。

 自然、神の教えを説く側のアリーナも原理は知らなくとも衛生観念は高いのだ。

「ああ、森の中で粗相させちまったらドライアードさんに怒られちまうかもしれないからな」

 頭を掻きながらクロ達の様子を見ているヴィルに対し

「フフッ、そうですね。私もまた襲われたくありませんし」

 微笑みながらアリーナも自嘲気味に答える。少しの静寂が場を通り過ぎた後

「あの、ヴィルさん? もし魔王を倒せたら……その後は、どうされるんですか?」

 アリーナが、ヴィルにそんな事を尋ねてきた。大抵の物語は魔王を倒してエンディングな為かヴィルもそこまで深くは考えていなかった。

「いや、あんまり考えてなかったが……でも、ミリジアの話だと王女様が婚約で困ってるとかの話があったろ? そっちの解決な話になっていくんじゃないか?」

「それでしたら……あの、私もご一緒させて頂いてよろしいですか?」

 ヴィルの返答に何かを決心した様にアリーナは同行を申し出てきた。

「それはありがたいんだが……後の事は魔王倒してからにしよう。未来の事を話すとゴブリンが笑うって言うしな」

「……そうですね。でも約束ですよ? 私を置いて行かないで下さいね」

 そんな和やかな雰囲気を過ごす二人の元に


ージャリ……ー


「あらぁ〜、おじゃましちゃったかしらぁ〜?」

 わざとらしい口振りのエルフィルが二人の様子を身にやってきた。

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