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世界を救う勇者なんですが役立たずを追放したら破滅するから全力で回避します。  作者: 大鳳
第一部 魔王討伐編

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大部屋

 街に戻ったヴィル達は黒マントの男を衛兵に引き渡したその足で、宿屋に宿を取る事にした。ヴィルからの相部屋の提案には

「うわ、パーティーメンバー相手にヤリモクとか……引くわー」

 エルフィルからは軽蔑の眼差しとともに罵倒が飛ばされたり

「キモ……」

 ミリジアからは心を一閃する様な冷ややかな視線が向けられたりなどしたが

「明日からは野営なんだしテントは共同だ。今からでも少しは慣れた方が良いだろ? 魔王城までは長いんだからさ」

 あくまで魔王城に向かう為の予行練習という体で、ヴィルは相部屋での一夜をエルフィルとミリジアの二人に何とか承服させるのだった。だが、その代償として

 「ベッドスペースは私達で使わせてもらうからね?」

 エルフィルから、六人部屋にあるベッドスペースを女性陣で使うと宣告されてしまった。おまけに

「念の為に、魔法障壁張らせてもらうわ。夜這いなんか掛けられたらたまったもんじゃないし」

 ミリジアからは、魔法による障壁を張る事まで断られてしまった。昔のヴィルの素行が悪かったからとは言え、この勇者あまりにも信用が無さすぎる。

「頼まれても夜這いなんてするかよ。命が幾つあっても足りな……」


ーバリバリバリバリ!ー


「んがあああぁっ!」

 ヴィルが最後まで言い終えるより先にミリジアからの魔法の一撃が加えられた。

 あまりの電撃の強さににヴィルは宿屋の床の上をのたうち回る羽目になってしまった。

「私達のスペースに近寄ったらこうだからね? 気をつけなさいよね〜」

 ミリジアはそう言うとエルフィルとアリーナを連れてベッドスペースのパーテーションの向こうへと行ってしまった。

「いててて……」


ープスプスプス……ー


 起き上がったヴィルの身体のあちこちからは煙が上がっている。

(まぁ、これならアリーナの安全は大丈夫だろう……)

 やや不本意ではあるがこれでアリーナの安全が高まるのならそれは有りだと納得するしか無かった。

 その後、残された男性陣とクロ達三匹の魔物は其々が適当な場所での雑魚寝に移るのだった。



 その後、雑魚寝をしていたヴィルだが、

「ヴィル、起きてるか?」

 トマスが話し掛けてきた。どちらかと言えばヴィルを避けている傾向がある彼が話し掛けてくるのは珍しい。

「どうした? 何かあったか?」

 かと言って、ヴィル自身も彼の何が新スキル取得のトリガーになるのかさっぱりな為か触らぬ神に祟りなしと必要以上に関わったりするつもりもなかった。

「アリーナさぁ、何か言ってなかったか? 僕が勇気を出して告白したのにまだ返事が無いなんてあんまりじゃないか」

 トマスの関心事は冒険者ギルドで告白したアリーナの反応についてだった。

 しかし、正直ヴィルの目にもトマスには脈が無い様な感じではあった。年齢的に彼女が誰かを好きになっておかしくないとは思うが、その相手はトマスでは無い様に思える。

「明日から、魔王城に向かうんだ。無理に答えを求めるなよ。アリーナに変に気負われても困るしな」

「なんだよ! ヴィルは僕の告白がアリーナの負担になるって言いたいのかよ!」

 ヴィルはやんわりと先送りにしようとしたのだが、トマスには何故か謎の自信があり彼女に断られるとは微塵も考えていない様だ。

「そうは言ってねぇ。でもアリーナにだって考える時間は要るだろう。あっちの事情も考えてやったらどうだ?」

「今さら何を考えるんだよ! アリーナは僕に優しくしてくれたんだ、何度も何度も! そんなの僕に気があるって事じゃないか! それなら答えは一つだろ!」

 トマスの根拠はアリーナの優しさに頼ったものでしか無かった。そんなものが好意の指標にならないのは十代半ばのトマスにはまだ分からないらしい。

 ヴィルのパーティーの女性陣はエルフィルもミリジアも当たりが厳しく、そんな中唯一優しいアリーナにトマスが惚れてしまうのも分からなくは無い。

「だが、向こうにも準備や都合がある。ボールは投げたんだから大人しく待ってろ」

 ヴィルはあくまで深く立ち入らずにトマスを刺激しないようにやんわりと待つ様に伝えている。

 ヴィルとトマスがそんな話をしている時、パーテーションの向こうのベッドで横になっている女性陣は

「アリーナ、あなたどうなのよ? 向こうはあんな事話してるけど」

 エルフィルが隣のアリーナに興味津々で尋ねていた。

「あ、あの……私はそういう事を考えた事は無かったので……」

 顔を赤くしたまま布団を頭から被る勢いでアリーナは恥ずかしがっている。

「人間ってそういうの早いわよね。生まれたと思ったらすぐに好いた惚れただもの」

 長命なエルフの尺度では人間はそんなふうに見えている様だ。そんなエルフィルにはミリジアから

「人間はエルフみたいに長生き出来ないから、ボヤボヤしてる時間は無いの。あなたみたいに油断してたらあっという間に行き遅れよ」

「誰が行き遅れよ! 黒メガネ!」


ーボフッ!ー


「いったぁ〜! やったわね行き遅れ!」

 枕を投げつけられたミリジアは顔面で枕を受け止めると、反撃として枕をエルフィルに勢いよく二連射した。


ーボフッボフッ!ー


「んぎゃっ!」

 アリーナを挟んだ近距離だけあって二連枕はエルフィルの顔面に全弾ヒットしていた。

 頭に血を上らせたエルフィルは投げつけられた枕だけでは足りないとしてアリーナからも枕を奪い取り

「エルフの狙撃を侮らない事ね!」


ーブンブンブン!ー


 ありったけの枕で三連射を仕掛ける。

「甘いわよ!」


ーバシッバシッバシッー


 臨戦態勢に入っていたミリジアは魔法防壁で枕を完全防御していた。

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